2016 Fiscal Year Annual Research Report
経済・金融多変量データのベイズモデリングと政策・行動の確率的評価
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26245028
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 裕浩 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (60251188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒瀬 雄大 関西学院大学, 理工学部, 助手 (20713910)
高橋 慎 大阪大学, 経済学研究科, 講師 (20723852)
渡部 敏明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90254135)
國濱 剛 名古屋大学, 経済学研究科, 講師 (40779716)
入江 薫 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (20789169)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 確率的ボラティリティ変動モデル / 実現ボラティリティ / ベイズ推定 / 高頻度データ |
Outline of Annual Research Achievements |
大森は、多変量確率的ボラティリティ変動モデルにおいて、行列指数を用いたモデル、共通の相関係数が動学的に変動するモデル、実現共分散行列の情報を加えたコレスキー分解に基づくモデルなどを提案し、マルコフ連鎖モンテカルロ(MCMC)法による推定方法を開発した。 入江は、ボラティリティを含む多変量状態空間モデルの逐次的分析と、それに伴う意思決定の問題に関する研究を行った。多数の株式の収益率に関するポートフォリオ最適化問題を考察し、ポートフォリオにはスパース性が導入され、提案手法が200以上の銘柄から少数の株式を選択できることを確認した。 國濱は、時間的従属性が存在し、観測尺度が異なるような多変量データを分析するためのノンパラメトリックベイズモデルを考案し、関連するパラメータ推定のためのMCMCアルゴリズムを提案した。新たな手法は既存の手法に比べ、より柔軟に相関の時間的変化を表すことができることが示された。 黒瀬は、金融資産収益率の日次データを対象に、動学的相関構造を仮定した多変量確率的ボラティリティモデルとその効率的なベイズ統計的推定法を構築した。また、上記モデルと高頻度取引データから得られる実現測度との同時モデリングを、実現測度が日次資産収益率データに対して従属的であることを考慮して行った。 高橋は、日経225先物ミニ市場における注文不均衡と価格変化の関係を単純な注文板モデルに基づいて分析し、またS&P500E-mini先物について、注文不均衡と取引価格変化率の関係をより詳細に分析した。 渡部は、(1)時変多変量自己回帰モデルをMCMCを用いてベイズ推定することにより、近年、日本の輸出量は為替レートに対する感応度が低下している一方で、世界景気に対する感応度が上昇していることを明らかにした。(2)様々な平滑推移GARCHモデルを19カ国の株価指数にMCMCを用いてベイズ推定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者・分担者によるこれまでの査読付き論文は、過去3年間の累積でEconometrics and Statistics, Statistics and its Interface, Monetary and Economic Studies, Journal of Applied Statistics, Computational Economics, Econometric reviews(2論文), Japanese Economic Review (3論文), Computational Statistics and Data Analysis(3論文), Empirical Economics, Journal of the Japanese and International Economies, Journal of Financial Econometrics, International Journal of Forecasting, 経済研究(4論文), 日本統計学会誌のほか, 研究書「Current Trends in Bayesian Methodology with Applications」に掲載を進めている。学会発表も2014年度~2016年度の統計関連学会連合大会, 2014年度・2016年度国際ベイズ分析学会世界大会(国際学会), 2014年度~2016年度の計算・計量ファイナンス学会(国際学会)、2016年度国際ベイズ分析学会アジア大会(国際学会)、2016年関西計量経済研究会や2016年ベイズ研究集会の主催も含めて、国内外で積極的に行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)多変量金融データのための、因子モデルと実現尺度を用いた確率的ボラティリティ変動モデルの構築・推定方法の提案、(2) ローリング推定のための効率的な逐次モンテカルロ法の開発、(3) 融収益率分布の裾の厚さと非対称性を捉えることのできるより一般的な分布を用いたRealized Stochastic Volatility (RSV)モデルを提案、(4) ボラティリティモデルの逐次計算に関する研究、(5) 多変量RSVモデルとその応用、逐次モンテカルロによる精度の高い予測法の構成、(6) 異なる尺度を持つ多変量データ分析のためのノンパラメトリックベイズモデルの研究、(7) 時変VARモデルおよびDSGEモデルを改良することにより新たなマクロ計量モデルを構 築、MCMCを用いたベイズ推定法を開発し経済予測や経済政策の効果の分析に応用を行う。引き続き、国内外における学会発表を積極的に行い、国際的学術雑誌への掲載を目指す。
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