2014 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギークラスターイオンを用いた新しい顕微質量分析法
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26246025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木村 健二 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50127073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中嶋 薫 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80293885)
鳴海 一雅 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (90354927)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | フラーレンイオン / 2次イオン質量分析 / 分子イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
日本原子力機構高崎量子応用研究所において、5MeVのC60イオンビームによる、アミノ酸薄膜試料からの前方放出2次イオンの測定を行い、無傷のアミノ酸分子イオン収量とアミノ酸分子が分解して生じた分解片イオンの収量を測定した。その結果、通常の2次イオン質量分析法で行われる後方放出2次イオンの分析に比べて、無傷のアミノ酸分子イオン収量が1桁ほど増加し、分解片イオンの収量が大きく減少することを確認した。この原因を探るために試料の厚さを様々に変化させて、同様の測定を行った。試料中ではC60イオンは入射時に分解して、個々の炭素イオンとして試料中を進み、出射面では空間的に広がっている。この炭素イオンの空間分布の広がりをパラメーターとして、無傷のアミノ酸分子イオンと分解片イオンの収量比を調べると、空間分布の広がりが増加すると収量比も増加することがわかった。このことから、出射面におけるエネルギー付与密度が適度な値のときに、アミノ酸分子の分解が抑えられて、無傷のアミノ酸分子イオン収量が増加することがわかった。 これらの研究と並行して、C60イオンの照射により試料表面から放出された2次イオンを、飛行時間型の質量分析器により分析するとともに、同時に放出された2次電子を、低エネルギー電子顕微鏡で観察して個々のイオンの照射位置を特定することにより、2次イオンのイメージングを行うための装置の設計を行った。設計を基にして、超高真空散乱槽を製作し加速器と接続できるようにビームラインの設計と製作も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
C60イオンの薄膜試料透過に伴う前方への無傷のアミノ酸イオン放出が後方放出よりも増加する原因が、試料中で乖離したC60イオンから生じる炭素イオンの空間分布と関係することを突き止めた。また、このC60イオンの前方放出2次イオンを利用した分子イメージング装置の設計が完了し、装置の一部を製作した。また、これらハード部分の設計製作に加えて、2次電子顕微鏡における2次電子の2次元位置検出方法の検討を行うとともに、2次電子信号に加えて試料を透過した1次イオン信号、試料から前方に放出された2次イオン信号を同時に処理するための計測システムの設計を行った。以上のことから、平成26年度の研究実施計画の内容を概ね達成したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、アミノ酸よりも分子量の大きなペプチドの薄膜試料についても、数MeVのC60イオンビーム照射による試料前方への放出2次イオンの測定を行い、ペプチド分子においてもこの手法が有効に作用するかどうかを明らかにする。 これと並行して、すでに設計が終わった2次電子顕微鏡の作製を行い、2次イオン質量分析装置を結合することにより、生体分子イメージング装置を完成させる。このために、昨年度作製した超高真空散乱槽に接続可能となるように、市販の光電子顕微鏡を改造して実際に接続を行う。この2次電子顕微鏡像を入射イオン1個の放出する2次電子ごとに撮影して、2次イオンの測定と同期させる装置を開発する。 完成した装置を京都大学の量子理工学教育研究センターの加速器に接続して、装置の調整を行う。さらに日本原子力機構高崎量子応用研究所においてタンデム加速器に接続して、5MeVのC60イオンを用いて、生体分子イメージングを試みる。
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