2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26247013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鈴木 貴 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40114516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 雅人 東京理科大学, 理学部, 教授 (00291394)
森田 善久 龍谷大学, 理工学部, 教授 (10192783)
大塚 浩史 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20342470)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | 点渦系平均場方程式 / 緩和時間平均場方程式 / Trudinger-Moser不等式 / 循環的階層 / 走化性方程式 / 非局所項 / 質量保存反応拡散系 / 渦糸系 |
Outline of Annual Research Achievements |
近平衡力学系解明の基礎となる楕円型理論について, 統計力学と非線形数学の両面から研究を開始した. 統計力学の立場からは点渦系の平均場方程式を基準として, 平行に近い渦糸系の平均場方程式を導出して, その双対変分構造を明らかにした. 一方非線形数学の立場からは, 強度が連続的に分布する場合の点渦平均場方程式において基本となるTrudinger-Moser不等式が成り立つ臨界逆温度を定めた. また1点強度の場合に顕著に表れる, 爆発機構の量子化と循環的階層の研究を深め, 多点爆発する解の線形化モース指数と, 対応するハミルトニアンの臨界点のモース指数が一致することを確立した. 点渦系では動力学理論も展開し, 準平衡から平衡に至る緩和時間モデルとして2008年にChavanisによって提唱されたBrownian vortex平均場方程式を走化性方程式系との対応で研究し, 解の時間大域存在や爆発条件, 動的な循環的階層原理が成り立つことを明らかにした. 走化性方程式の研究では, 脳内化学物質の移動, サンゴ礁の生態系など生命科学への応用を目指し, いくつかのモデルで解が時間大域的に存在する条件を与えた. また細胞内分子動態に由来する, 非局所項を持つ化学反応方程式を研究し, 漸近的に空間均質化が起こることを証明し, そのレートを与えた. 化学反応一般についてより粗視化したモデルを解析し, 質量保存のもとで時間発展の基準となる自由エネルギーと, 定常状態を記述する非局所項を持つ楕円型固有値問題の変分汎関数との間に, 半双対変分構造が存在することを突き止めた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
楕円型理論では, 研究上有力な方法として分析していた文献にギャップが見つかり, その部分を迂回する議論を構築する必要が生じた. 幸いモース指数の対応と連続強度を持つ点渦平均場方程式の基本構造であるTrudinger-Moser不等式の臨界逆温度の決定というふたつの顕著な成果があり, 今後の研究の基盤を確立することができた. モース指数の対応は, これまで領域変動による解集合の大域分岐や漸近的非退化性など様々なエビデンスによって推定されていたが, 数学的証明は全く別の技術的な道具を用いてなされた. これはこれまでの点渦平均場(ボルツマン・ポアソン)方程式の研究で繰り返されてきたことである. Trudinger-Moser不等式の臨界値も, 証明されて初めて納得できるブレークスルーであり, 将来の研究の基礎となるものである. また化学反応系, 細胞動態, 生態系など応用研究も順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
近平衡力学系数学解析では, 熱力学の法則による変分構造の解明が基礎となっている. このようなモデルは理論科学において基本的であるので, さらに対象を広げて, 微分幾何学, 天体物理学, 環境学, 化学工学, 生態学のモデルを解析する. また楕円型理論からさらに進めて, 爆発機構の量子化と循環的階層の原理の確立を, 動的なレベルや高次元にまで広げる. 数学的対象としては領域の変動や2重層ポテンシャルのスペクトル構造を新たに加え, 工学の諸問題における大域解析学の構造を探り, 自由境界としての細胞変形をモデリングして, 数学解析を加えることで数値シミュレーションの基礎を確立する. これまで熱力学の法則は, 状態量の大域的な変動としてとらえてきたが, Clausius-Duhemの不等式など, 各点で成り立つものがあり, この構造を生かして時間大域的な弱解の存在を論じてみたい.
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Research Products
(56 results)