2014 Fiscal Year Annual Research Report
次世代高効率石炭火力発電の低炭素・長寿命を可能にする溶射材料および溶射技術の開発
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26249098
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
黒川 一哉 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, その他 (00161779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
沖中 憲之 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20250483)
松浦 清隆 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60142692)
張 麗華 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (60719714)
坂口 紀史 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344489)
高澤 幸治 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20331952)
浅見 廣樹 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (00547961)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 燃焼合成 / 機械的性質 / 焼結 / 高温腐食 / サイアロン / 伝熱管 / 石炭火力発電 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、次世代高効率石炭火力発電用ボイラ伝熱管に対応可能な耐摩耗性・耐高温腐食性・長寿命に優れたコーティング技術の開発を目指している。特に、石炭燃焼雰囲気下での硫化・塩化反応の抑制および耐摩耗性を飛躍的に改善できるコーティング材料の開発を進め、最終的にはそこで得られた知見に基づき750℃超級高効率石炭燃焼発電プラントに資するボイラ伝熱管へのサイアロン‐金属系複合材料の創製およびその溶射技術開発を提案する。本研究の遂行によって高効率化、低品位石炭の利用(硫化・塩化反応および灰分による摩耗減肉の抑制)、ボイラ伝熱管の長寿命化、さらにはNOXとCO2の大幅な排出を削減が可能となる。本年度は、特に①サイアロン燃焼合成技術の確立と溶射粉末に適した複合材料の開発と評価と②サイアロン‐金属複合材料の耐高温腐食性・耐摩耗性評価に関する研究を主として行った。これらの研究で得られた主な成果は以下の通りである。 1.燃焼合成法により、極めて簡便に各種組成のサイアロンを合成できることを確認した。 2.サイアロン焼結体の破壊靱性値向上の観点から、最適焼結温度(1350℃)と有効な点火元素(Y)を見いだした。 3.アルファ型からベータ型への相変態にはCaやYなど微量元素が関与していることをHAADF-STEM象の解析から明らかにできた。 4.サイアロン自体の耐高温腐食性はシリカ皮膜形成により耐食性上有害な硫化物や塩化物の生成を完全に抑制し、極めて優れた耐高温腐食性を示した。しかし、金属と複合化した場合、そのサイアロン/金属界面での浸食が起こり劣化することが見いだされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体において遂行しようとしている課題は次の通りである。課題1;サイアロン燃焼合成技術の確立と溶射粉末に適した複合材料の開発と評価、課題2:サイアロン‐金属複合材料の耐高温腐食性・耐摩耗性評価、課題3:サイアロン‐金属複合材料の溶射作製技術の確立と基材との適合性評価、課題4:ラボおよび実機試験評価 本年度では、特に課題1と2、すなわちこれまで明らかにはなってはいないサイアロンの基本的特性に関する基礎的知見を得ることを目標として実験を進めてきた。その結果、サイアロン粉末の合成に関しては、燃焼合成法により簡便にかつ大量に合成できることがわかった。その粉末を用いて、焼結特性、相変態、機械的性質、高温腐食などに関して金属などの添加あるいは複合化元素の影響について基礎的に調べてきた。それらの結果は「研究実績の概要」で記述した通りであり、初年度は特に、良く本質が知られていないサイアロン自体の性質を明らかにするための蓄積期と捉えているため、概ね所期の目標通り研究が進展しているといえる。しかし、その一方で予想以上に金属など添加・複合化元素がサイアロンの諸特性に及ぼす影響も大きく、添加元素と相変態、破壊靱性の関係など新たに明らかにすることが必要な課題も見いだされてきた。それらを解明するためには、原子サイズレベルで金属の配置などを明らかにする必要があると考えている。27年度においては目標課題に加えてこのような新たな基礎的課題の解明も行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も基本的には計画通り研究を遂行する予定である。しかし、「現在までの達成度」において記載したように予期せぬ重要課題が見いだされることもあり、この点についても充分に考慮し総合的に実り多い成果を得るつもりである。特に28年度以降の実用に向けた研究を進める上でポイントとなる点は次の通りである。①サイアロン最適溶射方法、②サイアロン溶射皮膜の耐食・耐摩耗皮膜としての問題点(緻密性、硬さ、耐食性、耐摩耗性、他)、③実ボイラ伝熱面への施工と実用性、④溶射皮膜の下地金属との接合性および機械的・物理化学的適合性。27年度では上記のことを念頭に26年度に引き続き基礎研究(溶射を見据えた材料開発)を着実に進展させる。それとともに、課題3(サイアロンおよびその複合材料の溶射膜作製技術の確立と金属との適合性評価)に関する研究にも着手する。その具体的内容は次の通りである。1)サイアロン最適溶射方法の見極め、すなわちAPS法を最有力候補として溶射膜形成能の確認、特に粉末粒径および混合金属による溶射条件の変化、膜生成速度、膜構造などを明らかにする。2)サイアロン溶射皮膜の耐食・耐摩耗皮膜としての評価と問題点を抽出する。特に、緻密性、硬さ、耐食性、耐摩耗性、下地金属との適合性などの評価を行う。
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Research Products
(6 results)