2015 Fiscal Year Annual Research Report
次世代高効率石炭火力発電の低炭素・長寿命を可能にする溶射材料および溶射技術の開発
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26249098
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Research Institution | Tomakomai National College of Technology |
Principal Investigator |
黒川 一哉 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, その他 (00161779)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅見 廣樹 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (00547961)
沖中 憲之 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20250483)
高澤 幸治 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (20331952)
松浦 清隆 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60142692)
張 麗華 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), その他 (60719714)
坂口 紀史 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70344489)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 溶射皮膜 / サイアロン / 石炭火力伝熱管 / 燃焼合成 / 焼結 / 耐高温腐食 / 耐摩耗 / 溶射技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、特にサイアロン基材料の物性、基盤金属材料との接合性および溶射皮膜技術の開発などに関する研究を主として進め、次年度に向けての溶射技術の開発に対する基礎研究を遂行した。その研究内容と成果の概要は以下の通りである。 (1)金属固溶がサイアロンの構造に及ぼす影響:ドーパント(Ca)の固溶侵入位置と空間分布についてHAADF-STEM法を用いて原子レベルで調べた。その結果、αサイアロン中に固溶したCa間には短範囲な斥力相互作用が働いていることが示唆された。この結果に基づいて、サイアロンの機械的性質改善に有効な金属ドーパントを今後明らかにしてゆく。 (2)サイアロンと耐熱合金の接合性に及ぼすインサート金属の影響:サイアロンとINCONEL X-750とSUS 304の接合性改善のため、両者の間にCuおよびAgフィラーを用い、それらの接合性に及ぼす影響について調べた。その結果、フィラーとしての性能はAgの方が優れ、Agフィラーを用いることによりICONEL X-750に対しては350 MPa、SUS 304に対しては270 MPaの接合曲げ強さを達成することができた。 (3)金属添加サイアロンの溶射皮膜:Crを添加したサイアロン基粉末材料を衝撃焼結被覆法を用いて溶射皮膜を形成する方法について検討した。その結果、緻密な溶射皮膜の形成が可能であることを見いだしたが、Cr酸化物の生成も認められ、今後その生成が溶射皮膜の特性に及ぼす影響について明らかにする必要がある。 (4)溶射に適した粉末の開発:溶射時により緻密で均質な膜形成に寄与するサイアロン基材料の粉末開発も進め、サイアロン粉末表面にNi膜を施すことに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究全体において遂行しようとしている課題は以下の通りである。課題1:サイアロン燃焼合成技術の確立と溶射粉末に適した複合材料の開発と評価、課題2:サイアロン-金属複合材料の耐高温腐食性・耐摩耗性評価、課題3:サイアロン-金属複合材料の溶射膜作製技術の確立と基材との適合性評価、課題4:溶射膜を有した材料のラボおよび実機試験評価 本年度は、昨年度に引き続き課題1および2に関する研究をさらに進展させることに加え、特に課題3に対する研究を進めた。これらは本格的な溶射膜技術の開発のための基礎研究(サイアロン基材料の物性、基盤金属材料との接合性および溶射皮膜技術の開発など)と位置付けられる。今年度までに得られた成果は「研究実績の概要」で記述した通りであり、次年度以降の本格的なサイアロン基材料の溶射技術の開発につながる内容となっている。このような観点に基づいて、本研究は概ね順調に進展していると評価している。 その一方で、サイアロンの物性や微細構造、さらには各種特性の改善方法など基礎的に解決すべき重要な課題も多く残っていることを感じている。平成28年度以降も単に溶射技術の開発だけでは無く、学術的な面からの研究も平行して進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も基本的には当初の計画に従って研究を遂行する予定である。しかし、これまでに行っってきた研究を通してサイアロンに関する基礎的知見の必要性も感じており、サイアロンの原子レベルでの構造、機械的特性に及ぼす添加金属の影響、金属材料との物理化学的適合性など学術的・工学的にも興味深い研究課題が見いだされてきた。今後、これらの基礎的研究を進めると同時に、実機試験を目指したサイアロン基材料の溶射技術の確立に向けた実学的研究も進める。 実機試験とその評価に関する研究を遂行する上でポイントとする点は以下の通りである。①サイアロン溶射皮膜の基盤材料との接合性・界面反応、②サイアロン最適溶射方法の見極め、③溶射用粉末の合成法などである。昨年度までに得られた基礎研究成果を基に、最適な溶射技術手法の確立を目指す。 特に28年度以降は、溶射、実機試験などに精通した現場技術者・研究者の助言を得て、各最適な要素技術を総合的に把握することに努める。
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Research Products
(11 results)