2014 Fiscal Year Annual Research Report
風浪中を航行する船の針路安定性とそれに及ぼす主機出力の影響に関する研究
Project/Area Number |
26249135
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安川 宏紀 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40363022)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 進 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10207102)
佐野 将昭 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40582763)
平田 法隆 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80181163)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 操縦運動 / 波浪動揺 / 最低主機出力 / 水槽試験 / MMGモデル / 波漂流力 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.主機出力の変化を考慮した風浪中における船の操縦運動の実用計算法の開発 操縦運動は低周波数での運動であり,波浪動揺は比較的高周波数での運動である。この性質を利用して,低周波数での運動方程式と,高周波数での船の運動方程式を導き,両者を連成させながら問題を取り扱った。波のない平水中においては既存のMMG型操縦運動モデルに,直進航行時の波浪中においては広く用いられるストリップ法(New Strip Method)に一致するような計算モデルを構築した。さらには,外乱下におけるプロペラトルクと主機のモデルを導入して,操縦運動に及ぼすエンジン出力やプロペラ回転数の変動の影響を考慮した。
2.計算プログラムの開発と水槽試験の実施,計算法の検証と改良 上記計算モデルを数値的に解き,実際に運動を求めることができるシミュレーション計算プログラムを開発した。低周波数域における運動方程式(4元),高周波数域における運動方程式(6元)ならびに実際に運動を求めるための微分方程式(6元)の計16元連立の運動方程式を解く必要があり,具体的に解く方法としてNewmarkのβ法を用いた。次に,理論計算法の検証データを得るため水槽試験を実施した。水槽試験に用いる模型船の計画,製作を行い,この模型船を用いて,広島大学船型試験水槽にて,平水中における操縦流体力特性(舵力特性,船体減衰力特性等)に関する基礎データを計測した。また,水産工学研究所角水槽において,短波長不規則波における旋回運動や zig-zag運動といった船の操縦運動ならびに波浪動揺を計測した。開発された理論計算プログラムを用いて,波浪中の操縦運動を計算し,水槽試験結果と比較した。理論計算結果は,水槽試験結果と実用上の精度で一致し,本理論計算法の妥当性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した通りに研究が進捗しており,研究成果も期待した通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
1.風浪中における船の針路安定性の理論の開発:初年度に開発した計算法の低周波数における運動方程式をベースに,一定風速ならびに不規則波中を航行する船の針路安定性の理論を開発する。一定風速下を航行する船の針路安定性の理論は,既に提示されており,この方法を波の影響を含むものへと拡張する。まず,風浪下を航行する船の釣り合い状態を求め,その状態において,運動方程式を線形化し,針路安定性に関する基礎式を誘導する。
2.基礎となる波漂流力の計測,計算法の検証と改良:上で述べた針路安定性の理論計算法ならびに初年度に開発した風浪下での操縦運動の非線形シミュレーション計算法において,波漂流力は重要な役割を演ずることが予想される。そこで,既存の方法による波漂流力の推定精度を確認すべく,検証データを取得するため,波方向を種々変化させた規則波中での水槽試験を実施する。その上で,風浪中における船の操縦運動の非線形シミュレーション計算法の計算プログラムを用いて,種々の条件における操縦運動や波浪動揺の計算を行う。得られた計算結果は,水槽試験結果と比較を行い,理論計算法の検証を行う。必要があれば,基礎となる計算法や漂流力の取り扱いの見直し,もしくは修正係数等の導入による実用的な見地からの計算法の改良を行う。
3.船の航行安全性と最低主機出力に関する検討:本研究で開発される2つのツールである「風浪中における船の操縦運動の非線形シミュレーション計算法」と「風浪中における船の針路安定性の理論」を用いて,種々の外乱条件や主機出力を変化させ,そのときの船舶の操縦運動や波浪動揺を計算する。外乱下での当て舵や船体斜航角,さらには安定した航行が可能となるオートパイロットのゲインなどを指標として,安全な航行が可能となる外乱条件と主機出力の関係を具体的に例示し,最低主機出力と推進性能との関連について議論する。
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