2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26250026
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤田 恭之 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (50580974)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 細胞競合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、正常上皮細胞が変異細胞を排除する現象に関与する分子群を、定量的質量分析法SILACを中心とした生化学的スクリーニングとマイクロアレイ解析を用いて網羅的に同定することを大きな目的としている。平成26年度は、SILACを用いて正常上皮細胞と変異細胞の境界で特異的にその発現や活性が制御されているタンパク質の同定を行った。特に、リン酸化が亢進しているタンパク質とconditioned medium中に発現が亢進している液性因子の探索を行った。その結果、正常上皮細胞と変異細胞の混合培養条件特異的にcondiitoned mediumにおいてADAM-DEC1が増加していることが分かった。また、qPCRによる解析によって、変異細胞に隣接する正常上皮細胞においてADAM-DEC1の発現が上昇していることも明らかになった。さらに、正常上皮細胞からADAM-DEC1をshRNAによりノックダウンしたところ、Ras変異細胞の上皮細胞層からの逸脱が有意に低下することが分かった。以前の研究で我々は正常上皮細胞は免疫系を介さない抗腫瘍能があることを見出し、EDACと名付けた。今回得られたデータは、ADAM-DEC1がEDACの重要な制御因子であることを示している。 また、リン酸化SILACにおいても、混合培養条件下で特異的にリン酸化が亢進している分子を複数見つけることに成功している。さらに、混合培養後にFACSにて、変異細胞に隣接した正常細胞を単離しマイクロアレイ解析を行ったところ、変異細胞との相互作用特異的に発現が上昇する分子を複数同定することができた。現在これらの分子について詳細な解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したように、変異細胞との境界において正常上皮細胞で発現や活性が亢進している分子を同定することに成功した。これらの分子は、発がんの超初期段階において、正常上皮細胞が有する抗腫瘍能に関与している可能性を有しており、「正常上皮細胞によるがん細胞の排除を促進する」という全く新規の作用メカニズムを標的としたがん治療薬の開発につながりうる知見である。平成26年度はこのように、研究計画通りに研究は順調に進展してきた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、変異細胞との境界において正常上皮細胞で発現や活性が亢進している分子のスクリーニングを続けるとともに、正常上皮細胞の「抗腫瘍能」を制御する分子群の作用機序の解明に取り組んでいく。 さらに、我々が独自に確立した細胞競合マウスモデルを用いて、正常細胞が保持する抗腫瘍分子機構のin vivo解析を行っていく。
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