2014 Fiscal Year Annual Research Report
融合遺伝子発現による骨軟部肉腫の統合的モデル化と治療応用
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26250029
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Research Institution | Japanese Foundation for Cancer Research |
Principal Investigator |
中村 卓郎 公益財団法人がん研究会, がん研究所, 副所長 (00180373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 誠一 公益財団法人がん研究会, その他部局等, 研究員 (10334814)
黒田 雅彦 東京医科大学, 医学部, 教授 (80251304)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発がん / 融合遺伝子 / 骨軟部肉腫 / 動物モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
1.融合遺伝子導入モデルの確立:胞巣状軟部肉腫と類円形細胞肉腫について詳細な検討を行った。胞巣状軟部肉腫モデルは、ヒト肉腫の形態像を良く反映し、高度な血管新生能と転移能を示した。ASPL-TFE3の発現によりGpnmb, Ctsk, Angptl2, Mdk等の発現が増加し、肉腫細胞による血管周皮/内皮の誘導がこれらの分子を介して行われている可能性が考えられた。CIC-DUX4を発現する類円形細胞肉腫は、早い発症速度や短紡錘形の形態像など、Ewing肉腫とは異なる性質を有していた。PEA3ファミリー等のCIC-DUX4標的遺伝子や、Cyclin D1を初めとする細胞回転促進因子の発現が亢進し、活発な増殖能を反映していた。新たな系としてEWS-NR4A3による粘液状軟骨肉腫とNAB2-STAT6による孤立性線維性腫瘍モデルを作製した。 2.滑膜肉腫発生母地の探索:マウス胎児の体幹・四肢・脊椎からそれぞれ間葉系細胞を分離し、SYT-SSX1を導入して腫瘍発生頻度と潜伏期間を検討中である。最も高頻度で早く腫瘍が発生した部位の細胞を、表面マーカーを用いてさらに純化し、起源を明らかにする。 3.滑膜肉腫の発症と悪性化の分子基盤:滑膜肉腫モデルにおいて、miR-214がSYT-SSX1と協調して滑膜肉腫の発症を促進した。miR-214の標的遺伝子候補としてEzh1, Fbxo3, Nomo1, Pten, Timp2等を同定した。 4. 新規分子標的治療薬の検討:Ewing肉腫モデルにおいて、EWS-FLI1の融合部特異的アンチセンスRNAとキトサン化合物とをカップルさせて投与した。ルシフェラーゼを発現するEwing肉腫細胞を皮下移植または尾静脈注射でマウスに生着させた後、皮下腫瘤または肺転移巣の大きさを指標として治療効果を検討した。増殖抑制効果は顕著でなく、DDSの改善を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
融合遺伝子導入モデルの確立においては、新規モデルの追加はまだ結果はみていないものの、これまでに作製した胞巣状軟部肉腫と類円形細胞肉腫モデルの解析が進展した。特に、胞巣状軟部肉腫における血管新生及び転移機構に新たな展開を見た。滑膜肉腫について、発生母地の探索は著しい進展を見ていないが、悪性化の分子基盤としてマイクロRNAであるmiR-214とSYT-SSX1の協調作用がin vivoで証明された。さらに、網羅的な遺伝子発現解析から、滑膜肉腫におけるmiR-214の標的遺伝子候補が同定され、この協調作用の解明への途が開かれた。新規分子標的治療薬に関する検討は、未だポジティブな結果を得ていなく、ドラッグデリバリーシステムの改善が必要と考えられた。項目毎に予想以上の進展をみたもの、予定より遅れているもののばらつきがあるが、全体平均としては、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1.融合遺伝子導入モデルの確立と展開 平成26年度までにEwing肉腫、滑膜肉腫、胞巣状軟部肉腫、類円形細胞肉腫の4種類のモデルを確立した。これらについて、ヒト臨床例との比較検討をさらに進めるとともに、融合遺伝子をflox化し、Rosa26-Cre-ERマウスの 胎児間葉系細胞に導入したモデルも作製し、肉腫におけるコンディショナルノックアウトの系を確立する。 2.肉腫の発症と悪性化の分子基盤の解析 Ewing肉腫モデルについて、ヒトのゲノム解析で変異の報告のあるSTAG2やTP53を中心とした、遺伝子変異解析を行う。遺伝子異常の頻度の高いものや、予想される機能を考慮した上で、変異遺伝子を融合遺伝子と共にマウス胎児細胞に導入し、腫瘍発生に対する促進作用や修飾作用を検討する。前年度に滑膜肉腫において得られたSYT-SSX1の協調遺伝子miR-214の標的遺伝子候補について解析を進め、miR-214の意義を明らかにする。さらに、マウス腫瘍の系、特に標的遺伝子が少数しかわかっていない胞巣状軟部肉腫においてChIP-Seq解析を行い融合遺伝子の網羅的結合部位を解析して、重要な標的遺伝子を同定する。 3.新規分子標的治療薬の探索 平成26年度の研究を続け、核酸医薬の効果を評価する。特に、ドラッグデリバリーの効率化を検討する。一方で、低分子化合物についても、がん支援活動の化学療法基盤支援班や理化学研究所から提供される低分子化合物ライブラリーと、Ewing肉腫の標的プロモーターレポーターを用いたハイスループットのアッセイ系を用いて、探索を行い、核酸医薬と同様に動物モデルを用いたin vivoでの評価を行う。
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Research Products
(12 results)
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[Journal Article] Meis1 regulates epidermal stem cells and is required for skin tumorigenesis.2014
Author(s)
Okumura K, Saito M, Isogai E, Aoto Y, Hachiya T, Sakakibara Y, Katsuragi Y, Hirose S, Kominami R, Goitsuka R, Nakamura T, Wakabayashi Y.
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Journal Title
PLoS One
Volume: 9
Pages: e102111
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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