2014 Fiscal Year Annual Research Report
国内および東アジアからの淡水魚の移入による影響実態と在来遺伝子資源の保全及び復元
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26250044
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
向井 貴彦 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (80377697)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 勝敏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (00324955)
馬渕 浩司 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (50401295)
鬼倉 徳雄 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50403936)
福田 信二 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70437771)
清水 孝昭 愛媛県農林水産研究所, 水産研究センター, 研究員 (90503996)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遺伝的撹乱 / 系統地理 / リアルタイムPCR / 分布モデル / 次世代シーケンサー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,最初に日本産淡水魚類の分布撹乱および遺伝的撹乱についての既知情報の整理をおこなった.日本列島を淡水魚類相の異なる27地域(Watanabe, 2012)に区分し,既知の文献に基づいてそれぞれの地域内に同種の他地域個体群(もしくは交雑可能な近縁種)の侵入が起きているかどうかまとめた結果,118の分類群のうち,22の分類群で遺伝的撹乱が生じている(もしくは潜在的に生じうる)地域があった.さらに,5分類群(ニッポンバラタナゴ,スイゲンゼニタナゴ,コウライモロコ,ハリヨ,トウカイヨシノボリ)は,その在来分布地域全てで交雑可能な近縁種もしくは他地域個体群の侵入があった.既知情報が不足している分類群については,系統地理的な解析を開始した. 遺伝的撹乱が生じている地域における詳細な状況のモニタリングのために,リアルタイムPCRによる効率的な外来遺伝子の検出手法の検討も行った.初年度においては,ドジョウとオイカワにおける専用プライマーとプローブの設計をおこない,ドジョウについてはリアルタイムPCRによる複数の地域系統の判別が可能であることを確認した.また,遺伝的撹乱が進行している地域における在来個体群の保護地域の選定手法の検討のため,在来魚の生息環境の改変による分布の変化についてのモデル化をおこなった. さらに,遺伝的に撹乱された種から,交配等によって在来系統を復元する手法を開発するための基礎として,コイをモデルにしてゲノム全体での在来遺伝子と外来遺伝子の判別をおこなうマーカーの取得を進めている.本年度は,昨年Nature Geneticsに発表されたコイのシーケンスを基礎として,琵琶湖産のほぼ日本在来系統と考えられるコイ4個体について次世代シーケンサを用いてゲノムのリシーケンスを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題においては,(1)日本産淡水魚における遺伝的撹乱の全容解明と,(2)保全地域選定手法の開発,(3)遺伝的に撹乱された個体群を復元するための基礎となるゲノム解析手法の検討,の3つが達成目標である. (1)については,既知情報を整理したうえで,系統地理情報の不足している種についての解析を開始した.(2)については,リアルタイムPCRによる効率的な外来遺伝子の検出手法を検討している.その上で,モデル地域における外来遺伝子の詳細な分布情報を用いて,遺伝的撹乱の進行しやすい環境を明らかにする分布モデルも開発する必要がある.外来遺伝子の分布に関する詳細データを得ることに時間がかかるため,在来魚の分布モデルを先行して開発することで,全体的な進捗が遅れないように工夫した.(3)については,次世代シーケンサーによるコイのゲノム解析が順調に進展している. 以上のことから,初年度の現状としては,おおむね順調であると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
二年目以降は,当初の計画通りに行う予定である.遺伝子解析による系統地理情報が不足している種については,現在データの取得を進めており,最終年度までに複数の論文で公表する.日本産淡水魚の遺伝的撹乱の現状についての全体像は,「遺伝子撹乱レッドリスト(仮称)」として公表し,国や自治体の環境政策や国民への啓発に利用できるようにする. リアルタイムPCRの応用や,分布モデルの精緻化,コイのゲノム解析についても,初年度は順当に進捗したことから,今後も着実に進めるようにする.
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Research Products
(12 results)