2015 Fiscal Year Annual Research Report
開放系大気CO2増加および温暖化実験を利用した気候変動適応イネ遺伝子型の探索
Project/Area Number |
26252004
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
酒井 英光 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, 大気環境研究領域, 主任研究員 (00354051)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 気候変化 / イネ / FACE / 遺伝子型 / 温暖化 / 大気CO2増加 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.高群落温度が高CO2に対する収量応答に及ぼす影響 高CO2は,無加温区においては初期発育停止籾を減少させることで,登熟歩合および収量を増加させた.一方,加温区では高CO2による増収効果が消失したが,これには不受精の増加が大きく作用していた.不受精率は,加温処理によって有意に増加し,高CO2と加温の同時処理でさらに増加した.不受精率と温度との関係を解析したところ,CO2条件に関わらず,出穂始めから1 週間の9:00~15:00 における積算穂温との間で最も強い正の相関が得られたことから,不受精率に対する高CO2と加温の影響は,主として 開花時の穂温を介して現れるものと推察された.粗玄米の整粒率は,高CO2により有意に減少し,加温との同時処理でさらに減少する傾向にあった.以上のことから,大気CO2 増加と開花期以降の加温の組み合わせは,群落温度および穂温の上昇を激化させ,不受精の誘発を通じて高CO2による増収効果を打ち消すこと,整粒率の低下により深刻な玄米外観品質の悪化が引き起こすことが確認された. 2.イネコアコレクションにおける高CO2応答の遺伝的変異 世界イネコアコレクション69品種のうち、最終の収穫日までに出穂した57 品種において、到穂日数は,FACE 区で平均1.2 日短縮した.高CO2 濃度条件に最も強く反応した品種はIndicaタイプのLocal Basmatiで,到穂日数が4.4 日短縮した.機能型Hd1 を持つ13 品種は,FACE 区で到穂日数が平均0.8 日短縮したのに対し,機能欠失型のHd1 を持つ35 品種では,平均1.3 日の出穂期前進が観察された.これらの結果は,高CO2 濃度による到穂日数の短縮が,感温性の強い品種でより強く表れることを示唆し、高CO2 処理による群落温度の上昇が出穂期の前進をもたらした可能性を支持するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
T-FACEによる開放系温暖化実験により、高群落温度と高CO2の同時処理がイネの受精率、等熟歩合および収量に及ぼす影響が定量的に確認された。また、高CO2応答の遺伝的変異については、CO2濃度の上昇による到穂日数の早期化がHd1の機能に関与していることが示唆された。これらのことから、本研究は計画通り順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続きFACE試験区内においてT-FACE装置を用い、温度と高CO2の相互作用がイネに及ぼす影響を調査する。特に、受精および子実の生長への影響が大きかったことから、そのメカニズムについて重点的に調査を行う。また、高CO2応答の遺伝的変異については、これまでの2年間の実験を通して高いCO2応答性がみられた品種及びあまり応答しない品種がみられたことから、これらの品種を群落栽培し、サンプリング調査や光合成測定等を行い、CO2応答性の遺伝的変異のメカニズムを解明する。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] Response of soil, leaf endosphere and phyllosphere bacterial communities to elevated CO2 and soil temperature in a rice paddy2015
Author(s)
Gaidi Ren, Chunwu Zhu, M. Saiful Alam, Takeshi Tokida, Hidemitsu Sakai, Hirofumi Nakamura, Yasuhiro Usui, Jianguo Zhu, Toshihiro Hasegawa, Zhongjun Jia
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Journal Title
Plant and Soil
Volume: 392
Pages: 27-44
DOI
Peer Reviewed
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