2014 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌個別化医療を支える胃癌病理学.胃癌の多様性を解明する.
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26253021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深山 正久 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70281293)
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Project Period (FY) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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Keywords | 胃癌 / 病理学 / 個別化医療 / 分子型 / 多様性 / 間質間葉系細胞 / 幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
胃癌の発生にはピロリ菌の慢性感染,慢性胃炎が重要な役割を果たしているが,発生する胃癌は一様ではなく,組織像は多様多彩である.従来,胃癌を組織像から腸型,びまん型の二種類に大別して論じてきたが,胃癌の個別化医療という観点からは不十分である.2014年に発表された癌ゲノムアトラス(TCGA)ネットワークによる胃癌分子型分類(Nature 513:202, 2014)では,EBウイルス関連胃癌,マイクロサテライト不安定性胃癌(MSI-H),ゲノム安定性胃癌(びまん型),染色体不安定性胃癌(腸型)の4型が挙げられている.胃癌における個別化医療をさらに推進するためには,びまん型,腸型を新たな観点でさらに再分類するとともに,サブタイプごとに,進展に伴う癌細胞の多様性の獲得機構について解明し,胃癌病理学を再構築する必要がある. 本研究では二つの軸で形態学的多様性を解明する.第一に,癌進展に伴う遺伝子変異蓄積過程を明確にする.同時に,サブタイプに特徴的な間質間葉系細胞の存在を探る.さらに,両者の相互作用を検証することでサブタイプごとに多様性を解き明かし,胃癌個別化医療を支える病理学の構築を目指す. H26年度には,びまん型胃癌の約1/4の症例にRHOA変異が認められることを報告し(Kakiuchi et al. Nat Genet 46:583, 2014),引き続き,RHOA変異胃癌の病理形態学的特徴(Ushiku T etal. Gastric Cancer in press),さらに癌病変中での変異の均一性を明らかにし,サブグループとして分類する妥当性を証明した. 今後も引き続き,サブグループごとに,進行に伴う多様性の検証,間質細胞の胃癌多様性への寄与,上皮幹細胞,癌幹細胞動態の面で解析を進めていく. 連携研究者は牛久哲男准教授,国田朱子助教,阿部浩幸助教である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
A.進行に伴う多様性の検証 本年度,とくにびまん型胃癌におけるRHOA変異胃癌(Kakiuchi et al. Nature Genet 46:583, 2014)を中心に検討を行った.びまん型胃癌の中でも特徴的遺伝子異常をもつ胃癌であることから, RHOA野生型びまん性胃癌と比較したRHOA変異胃癌の臨床病理学的特徴について検討した.その結果,RHOA変異胃癌の特徴として①深部浸潤巣に比して粘膜内病変の比較的大きな3型病変が多く,②高頻度に管状腺癌成分が並存していることが多く,また③粘膜辺縁では浸透性浸潤を示しやすいこと等が明らかとなった.さらに,多数症例について,RHOA変異の中でもホットスポット変異を検索した.ホルマリン固定パラフィン切片から腫瘍病変を特異的にdissectionし,DNA抽出を行い,digital PCR法により解析した.その結果,RHOAホットスポット変異はびまん型胃癌のみに検出され,腸型胃癌には一切検出されなかった.RHOA変異早期胃癌4例、進行胃癌4例の粘膜内病変と深部浸潤部等,複数個所を解析した結果,いずれの部位にも変異が認められた. RHOA変異は腫瘍発生に重要な役割を有し,RHOA変異胃癌としてサブグループ化するのが妥当である. B.間質細胞の胃癌多様性への寄与 胃癌細胞から放出されるエクソソームによる微小環境制御を検討するため,とくにウイルス由来の産物を追跡できるEBウイルス関連胃癌をモデルとして,エクソソーム単離,分析など基礎的検討を行った.結果は良好であり,単離エクソソームによる骨髄由来間葉系幹細胞の変化に関して検討する準備が終了した. C.上皮幹細胞,癌幹細胞動態:ベクトン・ディッキンソン社製BD LSRFortessa X-20 フローサイトメーターを教室に導入し,解析の準備を進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も引き続きEBウイルス関連胃癌,マイクロサテライト不安定(MSI-H)胃癌,スキルス胃癌,HER2遺伝子増幅胃癌など,各サブグループ別に以下の検討を進める. A.進行に伴う多様性の検証:1)進展部位ごとの遺伝子異常蓄積過程:個々の癌の進展による遺伝子異常蓄積過程をサブタイプごとに,粘膜内,粘膜下層,筋層以深で系統的に追跡する.遺伝子変異については,ホルマリン固定・パラフィン材料から採取した微量の材料からマルチプレックス増幅技術を用いて解析を行う.2)先行病変,先行異型上皮:胃癌周囲粘膜について解析を行うが,今年度はEBウイルス関連胃癌,MSI-H胃癌で高頻度に報告されたARID1A,PIK3CA変異に着目し,遺伝子変異のtarget sequencingを行い,周囲粘膜での遺伝子変異蓄積の有無,頻度を明らかにする. B.間質細胞の胃癌多様性への寄与:1) 特徴的間質間葉系細胞の同定を目指す実験的アプローチ:癌間質へ新たに動員される骨髄由来間葉系幹細胞が,間質の特徴を最も反映していると推定されることから,骨髄由来間葉系幹細胞を各種胃癌細胞株と共培養し,癌間質の間葉系細胞に特徴的な分子を抽出する.細胞間情報を担う小胞として最近注目されているエクソソームに着目し,胃癌細胞由来エクソソームを添加した後の発現プロファイルも検討する.候補遺伝子産物について,免疫組織化学およびISHにより,各サブタイプの組織切片で癌間質細胞での特徴的発現を検討する.2)癌間質細胞CAFに発現する特徴的分子の発現:これまで胃癌においてはSDF1,THBS4,ぺリオスチンが特徴的であるとされている.また,乳癌ではCD10,肺癌ではポドプラニンなども検討されている. C.上皮幹細胞,癌幹細胞動態:side population,各種表面マーカーを用いてサブタイプごとの動態を検討する.
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] Recurrent gain-of-function mutations of RHOA in diffuse-type gastric carcinoma.2014
Author(s)
Kakiuchi M, Nishizawa T, Ueda H, Gotoh K, Tanaka A, Hayashi A, Yamamoto S, Tatsuno K, Katoh H, Watanabe Y, Ichimura T, Ushiku T, Funahashi S, Tateishi K, Wada I, Shimizu N, Nomura S, Koike K, Seto Y, Fukayama M, Aburatani H, Ishikawa S.
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Journal Title
Nat Genet
Volume: 46
Pages: 583-587
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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