2016 Fiscal Year Annual Research Report
骨形成の統合的メカニカルシグナル制御ネットワークの新分子機構
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26253085
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野田 政樹 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (50231725)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江面 陽一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (50333456)
伊豆 弥生 千葉科学大学, 危機管理学部, 講師 (90431949)
早田 匡芳 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (40420252)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 骨芽細胞 / 骨形成 / Bardet-Biedl Syndrome 3 / メカニカルストレス / 繊毛 |
Outline of Annual Research Achievements |
メカニカルストレスによる骨形成のシグナルネットワークの解明のため 細胞の機械的刺激の受容装置である繊毛の基本分子のBardet-Biedl Syndrome 3 の機能の 解析を行った。この分子は メカニカルストレスを細胞が感知する際に 細胞一つに一本のみ存在する繊毛を構成する分子群の一つであるとともに その欠失が ヒトにおいて骨の異常形成を示すことからメカニカルストレスの骨形成の制御のネットワーク機能にかかわることが推察される。今回はBardet-Biedl Syndrome 3 分子を欠失する動物を用いてその頭蓋骨の形態への影響を解析した。Bardet-Biedl Syndrome 3 を欠失するとマウスの胎児において顔面正中部の発達異常を呈することならびに上顎の歯の異常を起こすことが明らかとなった。また頭蓋底においては骨の縫合の融合がBardet-Biedl Syndrome 3 の欠失マウスで生ずる。頭蓋底はBardet-Biedl Syndrome 3の欠失により 側方に伸長しつつ長軸方向には短縮した。 胎生期のマウスでは頭蓋底の軟骨部分は Bardet-Biedl Syndrome 3の欠失により減少した。Bardet-Biedl Syndrome 3 を発現する細胞は頭蓋底と脳の一定の部分に特異的に観察された。細胞を用いた検討では 軟骨細胞様細胞のATDC細胞においてBardet-Biedl Syndrome 3 をノックダウンすると細胞の遊走性が低下した。これらの観察は Bardet-Biedl Syndrome 3 が 骨の形態形成の上で メカニカルストレスに関わる繊毛において機能し特に頭蓋のような外力の関わる器官において重要な意義を持つことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メカニカルストレスによる骨形成のシグナルネットワークの解明のため 細胞の機械的刺激の受容装置である繊毛の基本分子のBardet-Biedl Syndrome 3の機能の解析を行った。この分子は メカニカルストレスを細胞が感知する際に細胞一つに一本のみ存在する繊毛を構成する分子群の一つであるとともに、その欠失がヒトにおいて骨の異常形成を示すことからメカニカルストレスの骨形成の制御のネットワーク機能にかかわることが推察される。今回はBardet-Biedl Syndrome 3分子を欠失する動物を用いてその頭蓋骨の形態への影響を解析した。Bardet-Biedl Syndrome 3を欠失するとマウスの胎児において顔面正中部の発達異常を呈することならびに上顎の歯の異常を起こすことが明らかとなった。また頭蓋底においては骨の縫合の融合異常がBardet-Biedl Syndrome 3の欠失マウスで生ずる。頭蓋底はBardet-Biedl Syndrome 3の欠失により側方に伸長しつつ長軸方向には短縮した。 胎生期のマウスでは頭蓋底の軟骨部分はBardet-Biedl Syndrome 3の欠失により減少した。Bardet-Biedl Syndrome 3を発現する細胞は頭蓋底と脳の一定の部分に特異的に観察された。細胞を用いた検討では軟骨細胞様細胞のATDC細胞においてBardet-Biedl Syndrome 3をノックダウンすると細胞の遊走性が低下した。これらの観察は Bardet-Biedl Syndrome 3が骨の形態形成の上でメカニカルストレスに関わる繊毛において機能し特に頭蓋のような外力からの臓器の保護に関わる器官において形態形成や細胞機能に意義を持つことが明らかとなった。 751
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Strategy for Future Research Activity |
寝たきりなど運動の低下による骨量低下を含め、本邦ではおよそ1200万人に影響を及ぼしている骨粗鬆症は、非常に多くの患者の存在する疾患でありながら、その病態における骨形成の異常を起こす機構はなお十分には明らかではなく、代謝の基礎にあるメカニカルストレスによる骨量制御とこれに必須である骨芽細胞の制御シグナルネットワークについては なお解明されていない点が多い。今回の骨芽細胞の制御に関わる新しい分子としてのBardet-Biedl Syndrome 3がメカニカルストレスに関連する細胞に一つ存在する繊毛に存在する分子として頭蓋骨の形態形成ならびに細胞遊走に関与することが初めて明らかとなったことは今後の研究の上で この分子の重要性を示すものである。これまでBardet-Biedl Syndrome 3はシリオパチーの患者において骨の形態異常を含む表現型を示すことが報告されている。現在、骨粗鬆症は全身の虚弱性として筋肉の低下やロコモテイブシンドロームとの関連が示唆されている。メカニカルストレスに関連する骨形成の主体である骨芽細胞におけるBardet-Biedl Syndrome 3の働きの一部は明らかとなったがBardet-Biedl Syndrome 3とともに働く他の多くのBardet-Biedl Syndrome分子群などとの関連がなお十分には明らかとされていない。細胞レベルでのBardet-Biedl Syndrome 3の機能の解析の結果に基づきさらにメカニカルストレスとBardet-Biedl Syndrome 3や細胞遊走制御の分子による骨形成の新たなメカニズムを骨形成の統合的メカニカルシグナル制御ネットワークの新分子機構を解明する予定である。
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Research Products
(6 results)