2014 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアにおける放射性核種の地下水の挙動解析と拡散予測シミュレーションモデルの構築
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26257402
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
加藤 憲二 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70169499)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇都宮 聡 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40452792)
高橋 嘉夫 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10304396)
難波 謙二 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70242162)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射性核種移行 / 地下水 / シミュレーションモデル / 微生物 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、地下水中に放出された放射性核種がどのような拡散挙動をとるのかに関して、放射性物質に汚染され40年にわたりその観測が続けられているロシア・マヤーク地方を対象に、水中に多量に存在するナノ粒子や微生物粒子が果たす役割を考慮したシミュレーションモデルを構築することを目的としている。26年度は、9月に研究代表者(加藤)と、GETFLOWS(GEneral purpose Terrestrial fluid-FLOW Simulator)モデルの開発者で連携研究者の登坂教授がモスクワに赴き、ロシア側の研究協力者でアカデミシャンであるKamylkovモスクワ大学教授とNazina ロシア科学アカデミー主席科学者に加えて、ロシアにおける放射線核種の環境中への拡散に関する指導的研究者であるMyasedov教授に本研究の趣旨とGETFLOWSモデルが福島でどのように使われ始めているかを説明し、本研究で対象とするロシア・マヤーク地方の地質学、水文科学に関するデータ収集への協力を要請した。 シミュレーションに組み込む地下水中の微生物とナノ粒子の放射性核種の挙動に与える影響に関する研究では、①放射性核種の溶存化を左右する酸化還元ポテンシャルに影響する脱窒活性について、脱窒活性の予測に直接つながる脱窒機能遺伝子nirSを標的とした検出法(Gene-FISH法)の開発に取り組んだ。②カラチャイ湖近くの地下水中に優占する細菌の一つであるP. fluorescensを用いて、活性下条件における希土類元素のナノ粒子形成の可能性を調べ、条件によって溶液中の希土類を元素のナノ粒子化することを明らかにした。③希土類をアクチノイド(放射性物質)のアナログとした研究では、広域X線吸収微細構造(EXAFS)法により微生物粒子のリン酸基が吸着部位として重要であることが示され、これをもとにしたアクチノイドの回収手法の開発へと研究が広がっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度ロシア・マヤーク地方における汚染地下水の新たな試料は入手することはできなかったが、サンプリング方法などについて、ロシアの研究チームと具体的に議論することができた。また、シミュレーションモデルに必要なデータの入手依頼をロシア研究者に行うことができた。さらにマヤーク地方で進行する放射性物質で汚染された地下水の移行予測をGETFLOWSモデルでおこなうための既得データの整理を進めた。 シミュレーションモデルに組み込む微生物やナノ粒子が放射性核種の移動や拡散にどのように影響を与えるかについて、機能遺伝子を用いたシングルセルレベルでの脱窒細菌の検出方法の検討、現場に優占する培養細菌P. fluorescensを用いた希土類元素のナノ粒子形成の実験、広域X線吸収微細構造(EXAFS)法を用いた希土類元素の分配パターンによる微生物の影響を明らかにする実験、これをもとにしたアクチノイドの回収手法の開発、そしてこれまでに入手した地下水コロイドを対象にしたダブルCs補正透過型電子顕微鏡による微生物とナノ粒子との実態の観察など、着実に実験研究を進めており、概ね目標に達している。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年6月にSt. Petersburg, Russia において開催されるModern problems of genetics, radioecology, and evolutionに研究代表者(加藤)が参加し、これまでの研究成果の中間発表を行うことともに、本研究に関連する研究発表が行われる本会議において、密度の高い情報交換を行う予定である。またこの出張時にモスクワでは、ロシア側共同研究者であるNazina ロシア科学アカデミー主席科学者とシミュレーションモデルに組み込む地下水中の微生物群集に関する今までの成果を論文化する作業に着手し、Kamylkov教授とはロシア・マヤーク地方の地質学、水文科学に関するデータ収集に関する打ち合わせ、および本年度サンプリング・ストラテージの確立を行う。 また、微生物とナノ粒子の放射性核種の挙動に与える影響に関する研究では、希土類元素(REE)をアクチノイド類のアナログとした分配パターンから細菌粒子の関与に関する現場情報、ナノ粒子への放射性核種の吸着現象等の原子レベルでの分析および解析を行う。GETFLOWSによる放射性核種の地下水中での拡散シミュレーションモデルに、汚染情報を追加する作業を進める。また、脱膣活性の予測、細菌細胞およびナノ粒子への放射性核種の吸着について得られた成果を拡散シミュレーションモデルに導入するための検討をおこなう。
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[Journal Article] Characterization of particulate matters in the Pripyat River in Chernobyl related to its adsorption of radiocesium with inhibition effect by natural organic matter,2014
Author(s)
H. Suga, Q. Fan, Y. Takeichi, K. Tanaka, H. Kondo, V. V. Kanivets, A. Sakaguchi, K. Kato, N. Inami, K. Mase, K. Ono, and Y. Takahashi
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Journal Title
Chem. Lett
Volume: 43
Pages: 1128-1130
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Biodiversity of Bacteria and Archaea in nitrate- and radionuclides-contaminated groundwater2014
Author(s)
T.N. Nazina, T.L. Babich, N.K. Kostryukova, D.Sh. Sokolova, R.R. Abdullin, E.V. Zakharova, S.N. Kalmykov, I.G. Tananaev, A.B. Poltaraus, K. Nagaosa, and K. Kato
Organizer
9th International symposium of subsurface microbiology
Place of Presentation
Pacific Grove, California USA
Year and Date
2014-10-05 – 2014-10-10
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