2016 Fiscal Year Annual Research Report
ロシアにおける放射性核種の地下水の挙動解析と拡散予測シミュレーションモデルの構築
Project/Area Number |
26257402
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
加藤 憲二 静岡大学, 理学部, 教授 (70169499)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 放射性核種移行 / 地下水 / シミュレーションモデル / 微生物 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、放射性物質に汚染され40年にわたりその観測が続けられているロシア・シベリア地方のMayakを対象に、地下水中の放射性核種の挙動を、【1】微生物の関与として、①脱窒活性の推定. ②優占細菌による放射性元素の吸着現象の解明. ③希土類元素(REE)をアクチノイド類のアナログとした細菌粒子の関与の推定.【2】ナノ粒子-放射性核種作用系を原子レベルでの解析.の観点から明らかにし、これらを組み込んだ【3】GETFLOWSによる地層中での放射性核種の拡散に関するシミュレーションモデルの構築することを目的とする。 【1】では、脱窒活性細菌の高精度な遺伝子による検出手法GeneFISH法の改良をさらに進め (成果はJSME、ASMEにて発表)、アクチノイド類の微生物吸着について研究を進め成果を公表した(Ohumi et al. 2017)。【2】では、福島でのセシウムの挙動について連携研究者の宇都宮らが研究成果をまとめた(Furuki et al. 2017)。【3】について、これまでシミュレーションモデルの構築に必要な地形並びに地質環境に関する基礎データの収集が思うに任せなかったが、昨年度関係各所への働きかけにより本年度必要なデータのいくつかは入手できた。新たに入手したロシアMayak地方の地形、地質、気象情報を導入したGETFLOWSによる地下水中のストロンチウムを対象とした放射性核種流動モデル化を進めた。また、微生物情報を組み込んだモデル化の準備として進めている富士山地下圏での研究成果を国際学会(EUG、SIL)にて発表した。 また、本基盤研究において得られた成果、ならびに研究対象としたMayak地方における地下水の放射能汚染に関して2007年ロシア語にてまとめられた重要な文献内容の紹介、私たちの研究成果との比較研究、さらに関連する福島における最近の研究調査成果やチェルノブイリでの成果を合わせてSpringer-Nature社との3分冊による成果出版契約が成立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
微生物による放射性核種吸着プロセスについての研究の進捗はOhnuki at el. (2017)Sorption Behavior of Np(V) on Microbe Pure Culture and ConsortiaとしてChemistry Lettersに発表され、また、ナノ粒子による核種の研究成果はFuruki et al. (2017)Caesium-rich micro-particles: A window into the meltdown events at the Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant としてScientific Reportに発表した。地下圏における地下水流動と現場環境化の微生物の挙動については、地質環境が必ずしも類似ではないが富士山地下圏を対象として研究を進めた成果は、Kato et al. Chase the direct impact of rainfall into groundwater in Mt. Fuji from multiple analyses including microbial DNAとして発表した。シミュレーションモデルに関しても、モデル構築に必要な地形並びに地質環境に関する基礎データのいくつかが入手でき、GETFLOWSによる地下水中のストロンチウムを対象とした放射性核種流動モデル化を進めることができ、順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1.シミュレーションモデルの完成。H28年度中に新たに入手したロシアMayak地方の地形、地質、気象情報を導入したGETFLOWSによる地下水中のストロンチウムと硝酸イオン(中和剤として大量に用いられた)を対象とした放射性核種流動モデルを完成させる。これをロシア側が作成したモデルとの比較研究を行い論文化する(論文の発表形態については以下に記す)。 2.成果発表について. 本基盤研究において得られた成果、ならびに研究対象としたロシアMayak地方における地下水の放射能汚染に関するロシア側が2007年にまとめたロシア語による重要な文献(Alexakhin A.I. et al.)内容の紹介と、私たちの研究成果との比較研究、さらに関連する福島における最近の研究調査成果やチェルノブイリでの成果を合わせてSpringer-Nature社との3分冊による成果出版契約が2016年9月6日成立した。1)Behavior of Radionuclides in the Environment I- Mayak(契約番号:59819)編集: Kenji Kato, Shizuoka University, Alexei Konoplev, Fukushima University, Stepan N. Kalmykov, Lomonosov Moscow State University. 2)BRE II -Chernobyl(契約番号:59820)編集: Kenji Kato, Alexei Konoplev 3)BRE III-Comparative Study between Fukushima and Chernobyl (契約番号:59821)編集: Kenji Kato, Alexei Konoplev 第1巻については2017年末入校予定である。これを持って本基盤研究の主たる成果のとりまとめとし、当初計画で示した各種学会における成果発表はこれを順次行うこととする。
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