2015 Fiscal Year Annual Research Report
琵琶湖底層部におけるメタロゲニウム生成機構の解明と底層部環境の質的評価
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26281042
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
宮田 直幸 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (20285191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古田 世子 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, その他部局等, 専門員 (00508476)
岡野 邦宏 秋田県立大学, 生物資源科学部, 助教 (30455927)
桐山 徳也 滋賀県琵琶湖環境科学研究センター, その他部局等, 専門員 (40723862)
高田 潤 岡山大学, 自然科学研究科, 特任教授 (60093259)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マンガン酸化細菌 / メタロゲニウム粒子 / 琵琶湖底層部 / 貧酸素化 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. メタロゲニウム粒子を生成するマンガン酸化細菌BIWAKO-01株の培養系を用いて、メタロゲニウム粒子生成をもたらす環境因子を調査した。メタロゲニウム粒子生成は多糖存在下で促進する。そこで、細胞外多糖を持つ種々の植物プランクトン存在下で培養した結果、試験した緑藻9種、珪藻1種、藍藻8種の内、緑藻4種以外でメタロゲニウム粒子が生成した。 BIWAKO-01株の全ゲノム配列を決定し(7.3 Mbp)、アッセンブルにより2つのコンティグ配列が得られた。アノテーション解析により、マンガン酸化細菌Pedomicrobium sp.のマンガン酸化酵素(マルチ銅オキシダーゼ)に相同性の高い配列が得られ、メタロゲニウム生成への関与が推察された。 2. 琵琶湖北湖で毎月採水を行い、水質及びメタロゲニウム粒子数をモニタリングした。6月から10月にかけて深度-10mの多糖濃度が高くなり(0.6~0.8 mg/L)、夏季の植物プランクトンの増殖によるものと推察された。多糖はフルクトースやアラビノース等複数の単糖で構成されていた。メタロゲニウム粒子は、12月に底層部で2000~3000 粒子/mLの発生が確認された。本研究により、北湖での植物プランクトンによる多糖生産の実態を提示できた。琵琶湖表層で増殖した植物プランクトンが底層部に沈降し、多糖の供給源として働いている可能性が示された。 3. 琵琶湖底層部のメタロゲニウム粒子の微細構造をTEM、STEM-EELSにより解析し、ナノシート構造をもつバーネサイト様マンガン酸化物からなることを明らかにした。また、低濃度Mn(0.1 mM)存在下でBIWAKO-01株を培養することで、同様の構造をもつ粒子が生成することが分った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1. BIWAKO-01株の培養系を用いたメタロゲニウム粒子生成をもたらす環境因子の解析では、これまでに多糖の要求性が示されていたが、本年度の研究により、植物プランクトン藻体が多糖の供給源となり得るとの新しい知見を取得できた。さらに植物プランクトン藻体の多糖含量も定量している。湖沼でのメタロゲニウム粒子生成への植物プランクトンの関与を支持する極めて重要な成果が得られた。さらに、BIWAKO-01株の全ゲノム解読を終え、マンガン酸化に関わる酵素遺伝子を推定することができた。以上より、本年度の目標は十分に達成できた。 2. 前年度から継続して、琵琶湖北湖で水質調査を行った。メタロゲニウム粒子発生数と多糖濃度について、深度(表層~-90 m)ごとに季節変動を捉えた。北湖で発生した植物プランクトン種のデータは琵琶湖環境科学研究センターで別途取得しており、今後どのような植物プランクトンが主要な多糖供給源であったか解析する予定である。北湖での植物プランクトンによる多糖生成の実態を明らかにでき、当初の目標は十分に達成できている。 3. 琵琶湖底層部のメタロゲニウム粒子の微細構造を明らかにし、BIWAKO-01株の培養(低濃度Mn条件)で生成する粒子と構造的によく一致することを提示できた。これにより、BIWAKO-01株の培養系が、湖沼でのメタロゲニウム粒子生成のラボモデル系として利用できることを示せた。以上より、本年度の目標は十分に達成できている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に続き、琵琶湖底層部でのメタロゲニウム粒子の生成要因と底層部環境の調査を行い、メタロゲニウム粒子数、植物プランクトン量、多糖濃度のデータを収集する。 これまでに得られたBIWAKO-01株の解析及び現地調査の結果を踏まえ、メタロゲニウム粒子生成に関わる生体分子として、BIWAKO-01株の16S rRNA遺伝子、及びマンガン酸化酵素遺伝子を選出し、これらを分子マーカーとしてメタロゲニウム粒子生成細菌の湖水中でのモニタリング手法を確立する。 分子マーカーを利用したメタロゲニウム粒子生成のモニタリング手法を用いて、琵琶湖底層部環境を調査解析する。次世代シーケンサーによる細菌群集構造解析とマンガン酸化細菌(BIWAKO-01近縁株)のポピュレーション解析を行うとともに、定量PCR法によるマンガン酸化酵素遺伝子の存在量を調査する。これにより、メタロゲニウム粒子生成細菌の鉛直方向での分布や季節変動、メタロゲニウム粒子の消長との関係性を明らかにする。 BIWAKO-01株が生成するメタロゲニウム粒子と琵琶湖底層部で生成する粒子の構造特性を比較検討し、その生成メカニズムについて考察する。 最後に調査結果をとりまとめ、①BIWAKO-01株によるメタロゲニウム粒子生成の分子機構、②琵琶湖底層部におけるメタロゲニウム粒子の生成機構、及び③メタロゲニウム粒子生成をもたらす琵琶湖底層部環境の質的評価の観点から研究を総括する。
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Research Products
(3 results)