2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26281064
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小幡 範雄 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70224300)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 裕之 立命館大学, 政策科学部, 教授 (40253330)
平岡 和久 立命館大学, 政策科学部, 教授 (70259654)
石原 一彦 立命館大学, 政策科学部, 教授 (80388082)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 災害廃棄物 / 震災復興 / アスベスト / 健康影響 / アンケート調査 / 被害予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
阪神・淡路大震災および東日本大震災の被災自治体への訪問ヒヤリング調査や資料調査を進めてきているが、平成26年度は本研究の初年度であるため多くは作業途中にあり、研究実績の成果発信に至ったのは次の2点となる。 第一に阪神・淡路大震災のおける有害性災害廃棄物(粉じんおよびアスベスト)の処理に係る対策状況や健康影響に関する住民アンケート調査の実施およびその集計・分析結果の発信である。震災発生から倒壊建築物等の震災がれきの解体撤去が概ね完了するまでの期間に被災地で生活していた人を対象に、生活周辺での当時のがれき撤去作業の実施状況や大気中の粉じんの印象、呼吸器系の健康不調・病気の有無などを質問した。その結果、震災からの復旧期間における大気汚染の高まりやそれに起因する健康影響の実態が明らかとなった。9割の人ががれき作業の周辺で通常より粉じんの多い環境で生活していた経験を持ち、半数以上が将来の健康不安を抱いている状況にあった。さらに現在の健康状態について、呼吸器系の健康不調・疾患が1割、アスベスト関連疾患が1%という結果であり、精神的・肉体的損失としての、震災当時の廃棄物処理に起因する大気汚染の長期的影響が考えられる。 第二に国際学術会議としての講演プログラムにおいて、震災時まで含めてのアスベスト災害対策についての現状と課題について報告を行った。東日本大震災での災害廃棄物処理とアスベスト飛散問題の動向を念頭におきつつ、今後の被害発生リスクの把握と被害予防を重視しての政策課題やリスクコミュニケーションのあり方について、現状分析からの整理を行った。さらには建築学や建設労働者の健康被害状況や、自治体でのアスベスト対策の現状の側面からの整理も行った。以上の現状の概況を整理しておくことで、今後の調査分析の上で新たに解明できる点や政策展望をより明確にできることにも寄与するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では阪神・淡路大震災および東日本大震災の被災地域が主な調査対象であり、実際に兵庫県神戸市や宮城県および同県南三陸町、女川町等の自治体訪問調査を実施して計画遂行の進展が出来ている。特に東北地方の調査においては、東日本大震災から3年以上の期間を経て、災害廃棄物の処理の完了に至っているタイミングにおいて、複数の自治体に対して横断的にこれまでの経験や行財政の現状と課題について把握を行うことができた。ただし、石巻市など自治体によっては本業務の都合などからこちらの調査日程と合わず、調査を先送りせざるをえない対象もあった。 本研究での実施予定の大きな調査項目として複数のアンケート調査がある。その内の1つとして、「有害性災害廃棄物によって発生した健康影響・被害発生の実態解明」の内容に該当する阪神・淡路大震災の当時の住民を対象としたアンケート調査は実施することができた。共同で調査研究を行っている協力者・団体等の協力も得て、当時の激甚な被災地を中心として広くアンケート配付・回収を行うことができ、高い有意性をもった分析結果を得るに至った。ただし、他に計画段階で予定していたアンケート調査が2つあり、これはまだ実施できていない。 遅れがあった一方で、一般に広く成果発信を行う内容として、「日中韓・アスベスト国際学術会議(日程:平成27年3月7~8日)」での講演・報告を実施した。講演・報告は、小幡範雄(代表者)「アスベスト災害予防のあり方-平常時と震災時にどう対応するか-」、平岡和久(分担者)「政府・自治体のアスベスト政策」、石原一彦(分担者)「日本の建設アスベスト問題」、南慎二郎(連携研究者)「阪神・淡路大震災20年とアスベスト問題」である。この国際会議は参加無料で誰でも自由に参加できる形で実施され、一カ年目時点での本研究での取り組みや知見を共有化する上で有益なものとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究での実績の成果発信もまだ十分に行えていないことがあり、以下の目標項目に基づき活動を推進していく。 第一に、明確な形での実績形成のため、順次、学術論文、学会報告、ディスカッションペーパー等で研究調査内容をまとめていく。すでに訪問調査や収集資料の蓄積を一定進めており、その整理と分析を行う素地は形成しつつある。発表や報告の機会を見据えて予定を組み、広く成果発信を図っていく。 第二に、主に自治体を対象とした訪問調査の推進である。本研究期間は三カ年で平成27年度は二カ年目に当たることを鑑みれば、本年度中に概ねの訪問調査活動を完了し、調査研究活動の全体のとりまとめの時期となる次年度は必要に応じてのフォローアップ調査を行う程度まで進める必要がある。また、平成26年度中には取り組めなかった「全国に点在する原子力発電所立地自治体およびその周辺自治体に焦点を当てての、地域防災計画や廃棄物処理計画等による危機管理・災害時対応の動向調査」についても重点的に調査予定を組み込む。そのために年間を通じての複数回の調査日程の確保と訪問先との調整をより綿密に図っていく。 第三に、主な実施調査予定である2つのアンケート調査「災害廃棄物処理をめぐる対策および処理の進行状況等について、被災地域である岩手県、宮城県、福島県の市町村を主な対象としたアンケート調査」、「東日本大震災以降における地方自治体の地域防災計画や廃棄物処理計画等の動向について全国的にアンケート調査」について、計画的に遂行して本年度中に完了させる。具体的には、7月までにアンケート調査票の作成とその内容の精査・検討、対象自治体リストの整理の作業を行う。8~9月にかけてアンケート票の送付と回収作業(未回答の自治体には要請)を行う。10~11月の期間に集計・分析を行い、12月の時点ではその内容を発表できるまでを目指す。
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Causes of Carryover |
大きな理由として、自治体への訪問ヒヤリング調査を少ない回数しか実施できなかったことと、アンケート調査の実施を先送りしたことがある。 ヒヤリング調査の実施回数については、複数の研究メンバーによって取り組んでいることから実施可能な調査日程が限られてしまうということに加えて、東日本大震災の被災地はまだ復興途上で本業務に追われている事情があり、こちらの訪問調査の調整がうまくいかないことがしばしばあった。 アンケート調査については複数の計画を予定していたが一つの実施に留まった。その理由としては、住民対象のアンケートは母集団のスクリーニングのために、広く多量にアンケート票の配付を行い、回収する時間と労力を集中的に注力する必要があったことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額が生じた理由は計画上の研究調査を先送りしたことにあるので、その実施を行うことで使用を遂行していく。 東北地方での調査に係る旅費等の経費を考慮すると、3日程度の滞在で1人10万円ほどは必要となるので、研究グループによる1回の調査行程を組めば、次年度使用額に該当する程度の経費となる。また、残されたアンケート調査については、いずれも対象が自治体と明確であり、住民対象のアンケートの場合に比べて、アンケート票の配付数や回収に係る経費も少なく見積もることができる。 以上のことから、先送りとなったヒヤリング調査とアンケート調査の実施をもって次年度使用額の経費にほぼ対応しており、平成27年度の研究費と併せて集中的に調査活動を推進していく。
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Remarks |
平成26年度中に実施した阪神・淡路大震災当時の住民を対象としたアンケート調査、および本研究活動の成果発信の講演・報告を内容に含む「日中韓・アスベスト国際学術会議」の概要について掲載しています。
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Research Products
(7 results)