2015 Fiscal Year Annual Research Report
歴史的建造物を維持するための植物性資材確保に関する研究
Project/Area Number |
26282069
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 博一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70174810)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江面 嗣人 岡山理科大学, 工学部, 教授 (00461210)
斎藤 幸恵 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (30301120)
能城 修一 国立研究開発法人 森林総合研究所, 木材特性研究領域, 樹種識別担当チーム長 (30343792)
後藤 治 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 教授 (50317343)
齋藤 馨 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70215531)
坂野上 なお 京都大学, フィールド科学教育研究センター, 助教 (70273498)
田村 雅紀 工学院大学, 建築学部(公私立大学の部局等), 准教授 (80315754)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 歴史的建造物 / 森林資源管理 / 天然ヒノキ林 / 樹種判定 / 山村コミュニティ / こけら葺き / かや葺き |
Outline of Annual Research Achievements |
1)歴史的建造物の修理用資材の需要量及び品質に関する調査;岩手県及び長野県における歴史的建造物を対象に現地調査を実施し、使用部材の規格、品等、数量について調査を行った。 2)使用部材樹種判定;歴史的建造物の使用部材をより正確に判定するために、木片の細胞構造を顕微鏡により観察する手法による樹種判定技術の開発を進め、微量の資料からの精度向上を図った。 3)代替材による修理技術の評価;こけら葺きの屋根用資材として資源の枯渇が懸念されているサワラを対象として、スギ人工林材を使用した屋根との比較実験を継続した。木曽地域から伐採したサワラ天然木、秩父地方で育成されている80年生サワラ人工林、秋田・宮崎地域の人工林から生産されるスギ間伐材を使用して実際に屋根を葺き、長期的な劣化の状況を評価した。 4)歴史的建造物の重要性の評価;伝統的建造物群保存地区としてすでに特定されている歴史的建造物を対象に、地域全体の景観としての評価を行った。5)修理用資材の供給可能性に関する調査;長野県上松町の木曽ヒノキ天然林において天然更新の環境因子の評価を行った。 さらに、宮城県石巻市の葦はらについて東日本大震災による津波の影響を評価した。 また、人工林については密度管理の実態調査と生産された木材の年輪幅、品等、強度などの評価を行った。6)檜皮採取の影響評価;過去に檜皮採取を実施した森林を対象に追跡調査を実施し、木材市場における取引事例から消費者による評価を把握した。7)山村地域のコミュニティ調査;宮城県石巻市を対象に集落調査を実施し、地域の歴史的建造物の保存状況を評価した。 8)ホームページの機能向上;歴史的建造物の維持のために健全な森林の維持と大径材を使用する社会システム構築が必要であることを伝えるための機能向上を図った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下のとおりに研究の目的は達成されつつあると考えます。 1)歴史的建造物の修理用資材の需要量及び品質に関する調査は全国各地において実施しており当初計画通りに進んでいる。 2)使用部材樹種判定は森林総合研究所において、修理現場から採取した資材をもとに木片の細胞構造を用いた手法による樹種判定技術の開発を進めており、海外の学会おいても紹介されている。3)代替材による修理技術の評価はこけら葺きの屋根用資材としてスギ人工林材を使用した屋根との比較実験を継続している。また、木曽地域から伐採したサワラ天然木、秩父地方で育成されている80年生サワラ人工林、秋田・宮崎地域の人工林から生産されるスギ間伐材を使用して実際に屋根を葺き、人口劣化・暴露実験を継続している。 4)歴史的建造物の重要性の評価はすでに指定されている伝統的建造物群を対象に、地域全体の景観としての評価を継続している。 5)修理用資材の供給可能量に関する調査は長野県の木曽ヒノキ天然林において天然更新状況の調査を予定通り実施している。人工林については、間伐方法をはじめとする密度管理の実態調査と生産された木材の年輪幅、品等、強度などの評価を行っている。天然ヒノキ材の流通の中心である東海地域において関係者からの聞き取りによって高品位材の流通実態の調査を行っている。6)山村地域のコミュニティ調査;宮城県石巻市における聞き取り調査を継続している。7)ホームページの機能向上は歴史的建造物の維持のために健全な森林の維持と大径材を使用する社会システム構築が必要であることを伝えるためのホームページを通じて一般社会との間で双方向の情報交換を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の意義を広く社会に伝えるための努力が必要であると痛感している。このため、研究成果を広く社会に発信するために、すでにホームページを開設して、研究成果を公表している。これからの研究展開では一般社会からの意見をくみ上げる体制を構築する。関連する市民団体等の企画に参画し、研究成果を報告するなど、広く国民に向けて情報を提供する。
|
Causes of Carryover |
27年度に予定していた、木曽ヒノキ天然林調査が天候不順により、一部未実行となったため、次年度に調査を実施することとしたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に予定している木曽ヒノキ天然林調査を合わせて実施する。
|