2014 Fiscal Year Annual Research Report
海外日本古美術展にみる日本観とその変遷に関する基礎的研究
Project/Area Number |
26282074
|
Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
鬼頭 智美 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 国際交流室長 (80321553)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 裕次 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 博物館情報課長 (00356271)
白井 克也 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 考古室長 (70300689)
吉田 憲司 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10192808)
横山 梓 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 研究員 (00596736)
田良島 哲 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 調査研究課長 (60370996)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 博物館学 / 展示学 / 芸術諸学 / 美術史 / 文化人類学 / 国際情報交換(欧米・アジア) |
Outline of Annual Research Achievements |
1939年ベルリンでの「日本古美術展」(以下「ベルリン展」とする)以降海外で行われた日本の古美術を中心とした企画展について、文献調査等により既存リストの補完を進め、2014年までに開催された展覧会の暫定リストを作成、欧米を中心とした展覧会開催の全体像を把握した。 国内調査では、東京国立博物館年報、展覧会図録や同館保管資料および文化庁所蔵の文献・写真資料を調査、文化庁主催「海外日本古美術展」の報告書および紙焼き写真のデータ化を行った。また、京都では、2002年開催京都国立博物館とチェコとの交流展および2008年フランス プチ・パレ美術館での「金閣・銀閣・相国寺宝物展」関係の資料収集・聞き取り調査を行った。その他、関係者と面談し、国以外が主催した海外日本古美術展について調査した。 海外調査では、ドイツ(ベルリン・アジア美術館、ドイツ国立公文書館、ベルリン国立博物館群図書館、ケルン日本文化会館、ケルン東洋美術館他)、オランダ(アムステルダム国立美術館、アムステルダム市立美術館、ライデン民族学博物館他)、アメリカ(メトロポリタン美術館、サンフランシスコアジア美術館、デ・ヤング美術館他)にて1930年代以降欧米で開催された日本古美術展について調査、現地でしか得られない貴重な文献・写真資料を収集(複写)することができた。また、各館で日本美術研究者への面談調査・意見交換を実施、日本古美術展の現況を確認した。さらに、1939年前後開催の日本美術展や日本文化普及活動の動向を探るべく、オランダでは、東洋美術学会関係資料調査および主要展覧会の図録を収集し、「ベルリン展」に先行するヨーロッパでの動向の一端を明らかにする一方、同時代のアジアにおける日本の文化活動の一例として、シンガポール等で昭南博物館関係資料を調査、現地研究員との意見交換も行い今後の連携への足がかりを築くことができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1939年から2014年までに行われた展覧会の全体リストについては、既存の2004年までと2005年以降のデータを統合、確認および補完により、会期・会場、企画主体、内容について概ね把握することができた。データ体裁をさらに整えることによりリストとして一般公開可能な状態にすることができた。 本年度に予定した国内・海外現地調査は、概ね計画通りに進めることができた。欧米特に米国、ドイツ、オランダの各開催館においては面談調査を通じ、本研究について各館長や担当学芸員の理解・協力を得られることができた。特に、研究テーマの基点となる「ベルリン展」関係資料は、先行研究による成果の確認ができ、その後のドイツでの展覧会資料も多く複写・データ化することができた。また、オランダおよび米国調査により、リスト用データの確認ができ、1950年代の米国巡回日本古美術展については、東海岸と西海岸で行われた両巡回展の概況を把握することができた。 主要調査対象となる文化庁主催の海外日本古美術展については、日本側の資料は、報告書は全てデータ化し、20展覧会の会場写真等画像データを作成することができた。これらの資料は、データベースとして活用できるよう整理を進めている。 加えて、現地での研究員との面談などにより、「ベルリン展」前後の状況・動向を把握することについて助言を得、現地で実際に資料を収集することにより、始点となる時期の日本観を考える上で非常に重要な知見を得ることができた。 各地での調査により、今後の日本美術研究の進展・展覧会企画等につながるネットワークの構築も進む結果となっており、現在までの研究目的は概ね達成していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究活動により、次年度以降の調査に向けて各調査先における協力体制が進んでいる。次年度については、分担者と検討会議を行い、方針を決定した。本年度の成果を踏まえ、2015年の展覧会データを集成し、既存データの一層の充実を図った上で、年度内に「1939年~2015年開催 海外における日本古美術展覧会」の暫定リストとして公開できるよう作業を進める。また、成果としての論文発表および最終年度の報告書出版を視野に入れ、本年度までに収集した資料の整理および翻訳作業をさらに進め、より充実したデータの蓄積と、その幅広い活用を目指す。 現地調査については、本年度把握した主要巡回展の概況を元に、各年代から主要な1-2展覧会程度選定、国内外においてそれら個々の展覧会についての詳細データを収集し、データとして蓄積を進めるとともに、関係者への面談調査に力を入れる。米国については、本年度は概況把握のため東海岸と西海岸の両地域の基点としてニューヨーク・サンフランシスコの調査を行ったため、次年度は、東海岸の各会場(ボストン、ワシントンDC)および西海岸(シアトル、ロサンゼルス)を視野に入れ、国内では得られない資料収集を目的として海外調査を行う。ヨーロッパについては、現在の活動状況も鑑み、スイス(チューリッヒ)およびイタリア(ローマ)の調査とともに、日本美術研究の現況・展示の動向も探るため、キーパーソンとなる学芸員への面談調査も進める予定である。加えて、シンガポールについては、本年度の調査先と引き続き連絡を取り合い、資料所在についての情報交換・資料収集を継続する。
|
Causes of Carryover |
国内での資料調査の結果、米国での調査先の順番を変更したほうがよいと判断されたため、まず、サンフランシスコ、ニューヨークを調査した。そのため、ボストン・ワシントンDCへの調査を次年度に行うこととなった。 また、予定していた資料整理の人員・翻訳謝金について、ドイツ・オランダの現地語での資料が多く、次年度分とあわせて処理することが適当と判断されたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
ドイツ語・オランダ語資料翻訳および米国ボストン、ワシントンDCでの調査費とする。
|
Research Products
(2 results)