2015 Fiscal Year Annual Research Report
定量的身体機能計測指標に基づいた虚弱高齢者の転倒予防ための縦断的介入研究
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26282166
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Research Institution | Tokyo Health Care University |
Principal Investigator |
山下 和彦 東京医療保健大学, 医療保健学部, 教授 (00370198)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 満 昭和大学, 保健医療学部, 准教授 (10300047)
太田 裕治 お茶の水女子大学, その他部局等, 教授 (50203807)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 介護予防 / 転倒リスク指標 / 下肢筋力 / 歩行機能 / バランス機能 / 足部ケア |
Outline of Annual Research Achievements |
H27年度の概要を述べる ・下肢筋力,歩行機能,バランス機能の評価による統合的転倒リスク指標の構築と糖尿病を含む足部・足爪変形者の足部機能改善の実践的研究 本研究では,下肢筋力計測装置,靴型歩行機能計測装置を開発し,有効性を明らかにし,転倒リスクが高まる下肢筋力等の閾値,足部機能低下が転倒リスクをさらに高めることを示した.本年度は転倒リスクの高い糖尿病と軽度認知症を含む高齢者に縦断的介入研究を実施した.追跡したのは,フットケア群など534名である.その結果,フットケア群は下肢筋力等で構成した転倒リスク指標を改善させ,SDA法で評価した姿勢制御能も改善した.運動指導群は歩行機能を特に強化するノルディックウォーキングを導入し,足底部の筋骨格系の改善が大きく,それに伴って下肢筋力の向上が確認された.合わせて74歳までの前期高齢者については国保医療費の分析を行った.本成果に基づく,Closed kinetic chain(CKC:閉鎖運動連鎖)の観点から総合的転倒リスク指標の構築を進めている. ・足部の筋骨格系のダイナミクス解析による変形性膝関節症のリスク推定方法の確立 変形性膝関節症の発生リスク予測を目的に,FTA角が明らかな変形性膝関節症と膝が痛い地域の未受診者・痛みを感じていない群を比較検討した.その結果,歩行中のCOP軌跡と足底部の筋骨格系の変化がリスク予測に有効であることが推察され,地域の中で膝が痛いと回答した対象者についても,パタン分類が可能であることがわかった.本研究では足底部筋骨格系を靴型歩行機能計測装置のセンサ位置で評価しているが,歩行中の足底部のダイナミックな骨格変化は圧力値の変化による予測の域を出なかった.そこで,SFM(Structure from motion)技術を用いた足部外形の評価システムを新たに開発し,表面情報まで評価できるところまでたどり着いた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した研究はすべて順調に進展している.A.統合的転倒リスク指標を構築するための横断的・縦断的調査・計測研究から十分な人数のフィールドテストを実施し,運動学的,解剖学的,足底部に特化した観察の見地から正しいと考えられる転倒リスクを高める要因が明らかになりつつある.さらに定量的で具体的な転倒リスク指標の構築も進められている.B.足部・足爪に問題がある対象者の足部機能を改善する介入研究では身体機能の向上,行動変容,医療費の改善効果が確認され新しい知見を明らかにすべく論文投稿を行っている.ここには軽度認知症や変形性膝関節症対象者を含め,要介護レベル別にも調査を進めている.合わせてこれら対象者の社会活動への参加状況(ソーシャルキャピタル特性)についても言及しており,身体機能,心理的特性,行動特性の観点から詳細に解析を進めることができている. C.変形性膝関節症のダイナミクス解析は,医療機関および行政機関の協力を得ながら進めている.ここではレセプト分析を独自に実施し,解析プログラムの開発も行った.変形性膝関節症のリスクを地域の高齢者にまで拡大して分析ができており,有意義な成果が確認できつつある. 合わせて,本研究に参加している対象者の日常生活の活動度にまで言及するために,行政機関の協力を得て大規模なICTシステムを開発し導入した.行動様式の分析には情報理論の観点から新しい指標の構築を進めており,生活機能の評価を実現可能にすべく開発を進めている. 以上のように,本研究の進展に関しては大きな問題はなく順調であり,今後取り組むべき課題や方向性を把握しながら進めている.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,A.地域で活用可能な計測システムの開発と高齢者の身体機能向上につながる支援方法のエビデンスの構築,および生活機能の定量的評価と予測指標の構築,B.変形性膝関節症(リスク群を含む)のスクリーニング手法の開発とリスク予測スケールについて妥当な手法を示す.さらにC.効果的な介入プログラムが医療費の有効活用におよぼす影響を明らかにすることにある.平成28年度はこれまでの事業を継続する.すなわち,1.足部ケアによる介入群,運動指導(ノルディックウォーキング)介入群,コントロール群について,CKCの観点を盛り込んだ総合的転倒リスク指標の有用性の検証,2.足底部の筋骨格系のダイナミクスに言及できるシステム開発と変形性膝関節症のスクリーニング方法とリスク推定方法の確立,3.本システムを用いることによる生活支援効果と医療費等の社会保障費への影響・介入効果の検証を実施する. 現在の介入対象者は約500名であり,H28年度は200人程度増員することを考えている.対象者の募集もすでに進めており,実現可能性は高い.ここまで大規模な介入研究はこれまでに例がなく,レセプト分析を組み合わせることで,レセプトに基づく背景疾患にまで踏み込んで解析が可能となる. 本年度は新たにいくつかの医療機関と連携が可能な状況にするべく議論を重ねており,医工学的見地から具体的でエビデンスレベルの高い成果をまとめることを目指す.これらを組み合わせ,発展させることで,変形性膝関節症など社会的課題に向けて,スタティックな筋骨格分析,歩行中に起こっているCOP軌跡と筋骨格自体のダイナミックな変化,筋力と姿勢制御能の関係を総合的に評価ができるように進める. 以上のようにこれまでの成果の有用性が確認されつつあることから,計画の変更は考えておらず,拡大と詳細な分析を進めることで展開する.
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Causes of Carryover |
物品費についてH27年度は靴型歩行機能計測装置の無線機の台数を増加することと,センサの新規開発を行う計画をしていた.現在,新しいセンサ等の開発を進めている.これまでのものでもH27年度までは対応ができたが,今後大規模介入計画を並列で行う必要があることから,現在の調整を完了する必要がある.現在,十分に目途が立っていることから,ここから大幅な修正はない見込みである. 旅費についてH27年度に発表予定だった内容をH28年度に移行したこと,大規模なフィールド実験の調整が大変スムーズに進んだことで旅費が軽減されたことが挙げられる.これらはH28年度に移行されることとなる.人件費の繰り越しは開発のための学生アルバイト代がH28年度に移行したことによる. その他の項目で,H27年度に投稿している論文の採択が伸びており,H28年度の支払いとなる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費は,新しいセンサの精度検証を進めており,それに伴い回路設計が変更となる.新しいセンサ,回路,無線機の作成をH28年度に行い開発を完成させる.また新規開発を進めている足部外観の特徴量を定量的に評価するシステムでは,画像解析用PC,撮影用ビデオカメラが必要となる.フィールド実験では3か所以上で並列計測するため,ビデオカメラは3台程度必要となる.旅費については,国際会議での成果発表の費用,実験にかかる旅費等が必要となる.人件費について,H28年度は対象被験者数が多いため,ノルディックウォーキング指導者等の謝金,実験補助,およびデータ整理のための学生アルバイト代が増加する見込みである.その他の項目では,H27年度から移行される論文と新規の論文投稿費用が必要となる. 以上よりH27年度からH28年度に移行したものを含め,最終年度としてのまとめのために予算を有効に活用できる計画となっている.
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Research Products
(6 results)