2016 Fiscal Year Annual Research Report
片手駆動による直進走行が可能なスポーツ競技用車椅子の開発と実用化
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26282175
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
塩野谷 明 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50187332)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹田 唯史 北翔大学, 公私立大学の部局等, 教授 (10320574)
山本 敬三 北翔大学, 公私立大学の部局等, 教授 (00405698)
大橋 智志 苫小牧工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (40509923)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 片手駆動 / 直進走行 / スポーツ競技用車椅子 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は,実際の競技場面を想定した実験等はあまり実施に至らなかったものの,ヒト生理情報と機械力学情報からの車いす評価とともに,片手駆動による直進走行が可能なスポーツ競技用車いすの片手による直進走行が可能な車いすの実用化に向けて最大の課題である駆動力伝達軸の耐久性評価を中心的に実施した.そこで当該年度は,伝達軸にトルクメーターを組み込んだ車いすを開発し,駆動時の酸素消費量や筋電図と合せて駆動トルクの測定を可能とした. 測定に際し,片手駆動時における最大努力の駆動力の計測で得られたデータをもとに,伝達軸にかかる最大せん断応力を算出し,耐久性評価のための基準値として37.5[MPa]と設定した.トルクメータとともに自転車競技用のシャーシ台を改良し,キャンバースラストの特性を用いて車いすに駆動負荷をかけ,前進動作・後進動作における伝達軸にかかるトルクを測定した.加えて,得られた結果から伝達軸にかかるせん断応力を算出した.その結果,前進動作における全体平均は負荷において5.68[MPa],無負荷においては4.38[MPa]となった.同様に,後進動作では負荷において6.53[MPa],無負荷において5.91[MPa]となった.また,前進動作・後進動作の最大値はそれぞれ7.26[MPa],9.96[MPa]であった. 上記の結果から分かるように,前進動作・後進動作の全体平均は,負荷・無負荷下において基準値の約1/6に収まる結果となった.また,全試行中最大でも基準値の約1/3程度であったことから,本車いすの伝達軸の耐久性は高いものと判断され,最終年度本車いすの製品化を目指した仕様策定までが可能となっている. これらの研究結果は,日本機械学会年次大会にて発表したに留まるが,最終年度は学術論文誌投稿も含めて,研究の総括が可能な状況となっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたとおり,伝達軸にトルクメーターを組み込んだ車いすならびにシャーシー台を作製し,片手駆動による直進走行が可能なスポーツ競技用車いすの片手による直進走行が可能な車いすの実用化に向けて最大の課題である駆動力伝達軸の耐久性評価を集中的に実施できたことで,本車いすの伝達軸の耐久性が予想よりも高いことが明らかとなり,最終年度の目標であった本車いすの製品化を目指した仕様策定までが既に可能となっていることから,当初の計画以上に進展していると判断した.ある意味,想定されていなかった成果が得られていると言える.しかし,駆動力伝達軸に関連して,新たな課題もみつかっており,その対応についても最終年度にある程度の方向性を出していく予定である.新しい課題として,伝達軸装着に伴い,車いすの自重が重くなり,結果普通の両手による車いす操作に影響が出てしまう.これについては,より軽量の車いす材料の選定等も必要になってくるものと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況に述べたように,当該研究は申請当時の課題を概ね順調に達成してきているが,それに伴い新しく軽量化という課題が浮かび上がってきている.最終年度の研究の推進方策としては,これを考慮した上で,前半はこれまでの機械力学計測とヒト生理計測を引き続き実施していくとともに,後半では実用化を念頭においたスポーツ競技用車いすのプロトタイプ型を製作し,特に実際の競技での使用を前提とした実験(フィールド実験)を行っていく予定である. 特に,車いすの操作性や使い易さについて,感性・官能評価することで,当該研究終了後次の研究立案に役立つ方向性を見つけ出していく.これまでは定量的な評価をめざしてきたが,最終年度についてはフィールド実験の回数を増やし,定性的な評価からの車いす開発につなげていく予定でいる.
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Causes of Carryover |
当該年度の予定では,実用化に向けた車輪交換機構の導入やフィールド実験等への参加に係る車いすの運搬費等を想定していたが,研究進捗に従い,実用化の最大課題となる駆動力伝達軸の耐久性評価のためのトルク計測を中心に行ったため,車輪交換機構については凍結し,またフィールド実験等もトルク計測を優先したため,結果運搬費等がそれほど計上されることがなかった.トルク計測が予想以上に成果を上げていることからも,研究の遅れによる次年度使用額発生ではない.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実用化に向けて,最終年度はフィールド実験等の実施や車輪交換機構を含めた新しい機構への対応,さらに新しい課題である軽量化に向けた構造解析等に使用する.特に構造解析については,専門のプログラムやスペックの高いPC等も必要になることから,それらに充当していく予定である.
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