2015 Fiscal Year Annual Research Report
植物ポリケタイド骨格形成酵素群の触媒機能の拡張と分子多様性の創出
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26282210
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
森田 洋行 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20416663)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポリケタイド / 閉環酵素 / X線結晶構造解析 / 酵素工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度において、アサ由来オリベトール酸閉環酵素(OAC)のアポ型の結晶構造の取得に成功した。本年度は、OACのさらなる基質特異性と触媒機構の詳細な解析を目的に、その生成物であるオリベトール酸との共結晶化を行った。その結果、1.6 Åの分解能でOACとオリベトール酸との複合体結晶構造の取得に成功した。OACは、その活性中心キャビティーに疎水性に富んだペンチル基結合ポケットを有し、ここにオリベトール酸のペンチル基を結合することが明らかとなった。また、Tyr24、Tyr72、His78が水素結合によるネットワークを形成し、His78がオリベトール酸のカルボキシル基と水素結合を形成すること、及び、His5もオリベトール酸のカルボキシル基と水素結合を形成することが明らかとなった。そこで、これら4つのアミノ酸に変異を導入し、変異が酵素活性に及ぼす影響について精査したところ、Tyr72とHis78に変異を導入すると酵素活性が消失することが判明した。さらにTyr72F変異酵素とHis78S変異酵素のX線結晶構造解析を行った結果、これらの変異の導入により、Tyr72とHis78の水素結合は消失する一方で、他のアミノ酸残基の立体構造は、野生型とほぼ同一に保持されていることが示された。これらのことからOACは、Tyr72とHis78を触媒残基として閉環反応を触媒していることが示唆された。次に、ペンチル結合ポケットを形成するアミノ酸残基を嵩高いアミノ酸に置換した。その結果、酵素活性が減弱することが示された。さらに、これらの変異酵素についてX線結晶構造解析を行った結果、変異の導入によりペンチル基結合ポケットの容積が減少し、基質が結合しにくくなったため、酵素活性を減弱することが示唆された。このことから、ペンチル結合ポケットは、基質のペンチル基の結合に重要であることが示唆された。上記解析結果に基づき、OACの反応メカニズムを提唱することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに、OACの基質特異性と触媒機構に関して明らかにすることができたことから、総合的に概ね計画通りに進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度において得られたOACの触媒機構に関する知見を踏まえ、OACの機能改変およびそれら機能改変酵素を用いた新規化合物群の創出を目指す。また、OACを他のⅢ型ポリケタイド合成酵素と組み合わせた場合の酵素反応生成物についても精査することで、さらなる新規化合物群の創出を試みる。
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Causes of Carryover |
本研究課題で使用する結晶化用試薬を発注したが、在庫がなく、現在、その製造待ちであるため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、製造・入荷を待っている結晶化用試薬の購入にあてる。
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Research Products
(15 results)