2014 Fiscal Year Annual Research Report
飼育環境による学習効率への影響をラット海馬の脳波変化から読み取る
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26282222
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
篠原 良章 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, 研究員 (10425423)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 整 東海大学, 医学部, 講師 (10550551)
田嶋 敦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (10396864)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生理学 / 海馬 / 脳波 / 左右差 |
Outline of Annual Research Achievements |
記憶学習の基盤にシナプスの可塑的な変化が提唱されて久しい。しかし、動物の生後の環境による動物の脳への影響は神経科学の重要なテーマであるにも関わらず、電気生理学的にはあまり詳しいことは分かっていなかった。本申請課題では、遺伝バックグラウンドがほぼ揃っており、かつマウスより頭が大きいので操作しやすいラットを用いて実験を行っている。 豊かな環境(enriched environment: ENR)で飼育したラットでは、海馬の脳波のうち、高周波成分のγ波が通常飼育ラットと異なることを申請者は発見した。海馬のγ波振幅は自発的なシナプス伝達量を反映すると考えられている。そこで、このγ波の変化が動物の環境から受けた経験量をどの程度極めて忠実に反映するかをまず定量した。 結果的には、ほぼ動物の経験がγ波の振幅の増大となって現れることが分かった。かつ、左右海馬でのγ波の協調性も動物の経験に伴い上昇しており、さらに、γ波の振幅の上昇は右海馬で優位であった。 そこで次は、γ波以外の代表的な脳波であるripple波に対して解析を行った。γ波はREM睡眠時にθ波と同時に海馬の広い範囲で出現する脳波であるが、ripple波は徐波睡眠時に海馬の錐体細胞層で観測される脳波である。脳波解析の結果、ripple波もγ波ほどは明白でないが、動物の経験をある程度反映することが分かった。さらに、ripple波もγ波とはまた異なった現れ方で、海馬での左右差を持つことも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、海馬の脳波と動物の経験との関連がつけられた。 また、γ波以外の脳波の解析にも進捗があった。予定よりは数ヶ月遅れたが、申請した研究期間中に論文の形で結果を報告できそうである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の実験の予想通り、動物を取り巻く環境刺激は海馬ではγ波の増強、左右ガンマ波リズムの協調性という形で表現されていた。慢性電極でも同様の実験を行っているが、データがまとまり次第、学術誌に投稿する。 さらに、細胞レベルでどのようなメカニズムでγ波の変化が起こっているかの研究を投稿後に行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
ラットの脳波記録装置が高額であること、無線のシステムの新製品がなかなか発売されなかったこと、の理由により、時期を待っていたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残念ながら、購入を計画していた無線脳波記録装置は新製品を待ちきれず、有線のシステムを購入することになった。
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