2014 Fiscal Year Annual Research Report
現代南アジアにおける法と権利の動態をめぐる研究―国制・権利・法秩序
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26283006
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 達也 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 客員研究員 (70598656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石坂 晋哉 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 客員准教授 (20525068)
橘 健一 立命館大学, 産業社会学部, その他 (30401425)
鈴木 晋介 関西学院大学, 付置研究所, 助教 (30573175)
鈴木 真弥 東京外国語大学, その他部局等, 研究員 (30725180)
木村 真希子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90468835)
舟橋 健太 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90510488)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 南アジア型法秩序 / 国制 / 権利 / 法秩序 / 新しい権利 / 権利意識の生成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、南アジアにおける権利の獲得・行使の実態を、法制度の規定と運用を踏まえつつ、臨地調査によって明らかにすることである。従来の研究は、法制度そのものの紹介や権利をめぐる運動の個別事例分析にとどまっているものが多く、法の制定・運用と個別具体的な文脈における法と権利の要求・行使との間に展開される動態を十分に捉えてこなかった。本研究では、①国制・権利・法秩序、②「新しい権利」と司法制度、③権利の行使と支援団体、④権利意識の生成、という4つの観点から、(a)南アジア固有の文脈における〈法と権利〉の多様な在り方をミクロとマクロの両面から分析して「南アジア型法秩序」を導出するとともに、(b)法学や政治学における普遍主義的な権利論に対して個別的文脈を重視する地域研究から理論的貢献を果たすことを目指したものである。 本研究課題が目指す「南アジア型法秩序の導出」は、西洋由来の国民国家制度の上に立脚しつつも決して一面的ではない法をめぐる人々の生のあり方を提示するものであり、従来の法社会学等の議論を深化させていくうえで極めて大きな意義を持っている。 また、本研究課題の遂行は、世界最大の民主主義国であるインドをはじめとして政治的な活動が活発な地域における法とそれを支える人々の意識のあり方を理解することに繋がり、南アジア地域で活動を目指す企業やNGO等の支援団体の実践においても極めて重要な意味を持っているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
26年度、本研究課題は研究会を2回開催し、議論を深めている。初回は東京の大阪経済法科大学サテライトキャンパスにて研究会を催し、本研究課題の方向性と個々人の役割分担を再確認した。2回目は11月に琉球大学にて開催された。沖縄と台湾という東アジアの研究に関わる文化人類学者と社会学者とセミナーを開催し、南アジア型法秩序(自己の帰属する共同体をベースにした権利意識の保持)と東アジア型法秩序(戸籍や登記をベースにし、共同体への帰属がそれほど重視されない権利意識の保持)の比較研究をおこなった。これにより、南アジアと東アジアの法秩序のあり方の相違点の一端を導出することができた。 また、本研究課題をもとにしたパネルを第87回日本社会学会(於:神戸大学)にて組織し、昨年度時点で本研究課題が提示しうる研究成果を公開したのみならず、会場での参加者との質疑応答を通して、本研究課題に関する議論をさらに深めることができた。 さらに、一部班員は個別に国際学会にて本研究課題に基づいた報告をおこない、国際発信も積極的におこなっている。 26年度、3人の研究分担者が海外調査をおこない、現地でのインタビューや資料収集に携わり、また、海外での調査出張に行けなかった分担者も国内にて関係資料を購入し、先行研究のレビューの深化や新たな視座を獲得している。 以上の点から、本研究課題の達成度はおおむね順調であり、27年度はさらなる深化が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度、本研究課題のさらなる進展のために①国際発信②地域間比較の継続③海外調査のさらなる継続の三点を追求する。 まず①の国際発信であるが、7月1日よりオーストラリアのアデレードにて開催される国際学会ICAS9にて本研究課題に基づくパネルを組織し、報告をおこなうことが決まっている。ここで南アジア研究者と交流することでさらなる議論の深化が期待される。また、28年度オーストリアのウィーンで開催される世界社会学会においても本研究課題のパネルが受理されており、それに向けて構成員と議論を進めることを計画している。このように、本研究課題は国際発信を積極的におこない、27年度はその意義を世界に問うものとなる。 ②の地域間比較に関しては、昨年度の琉球大学でのセミナーが意義深かったこともあり27年度も継続しておこなう。特に、27年度は東南アジアもしくはスラブ系の地域との比較研究を予定しており、これにより、構成員間の議論から南アジア型法秩序を導出するのみならず、外部からの視座がもたらされ、人々が生きている南アジア型法秩序の特異性をより明確化することが可能になる。 ③の海外調査のさらなる継続に関しては、26年度諸般の事情で海外調査をおこなえなかったものの文献資料を通して枠組み等を明確化した構成員がフィールドワークをおこない、現地での資料収集にとりくみ、帰国後、研究会を班ごとに催す。これにより、南アジア型法秩序を導出する上で各班に割り当てられた役割が遂行可能となる。 以上3点を実施することで、2年目を迎えた本研究課題は充実した研究活動を国内外にておこなうことができるものと考える。
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Causes of Carryover |
研究分担者である木村真希子氏が出産および育児のため育児休暇を申請した。そのため、彼女に割り当てられた分担金を使用することができず、次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
木村氏の育児休暇は昨年度一杯であり、本年度は研究活動に復帰する。よって本年度の研究活動において昨年度から繰り越した金額は海外調査に係る経費や物品購入で使用される予定である。
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Research Products
(42 results)