2015 Fiscal Year Annual Research Report
現代南アジアにおける法と権利の動態をめぐる研究―国制・権利・法秩序
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26283006
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
山本 達也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石坂 晋哉 愛媛大学, 法文学部, 准教授 (20525068)
橘 健一 立命館大学, 産業社会学部, その他 (30401425)
鈴木 真弥 東京外国語大学, その他部局等, 研究員 (30725180)
木村 真希子 津田塾大学, 学芸学部, 准教授 (90468835)
舟橋 健太 龍谷大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (90510488)
上田 知亮 東洋大学, 法学部, 准教授 (20402943)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 現代南アジア / 法秩序 / 権利 / 国制 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度、本プロジェクトは静岡大学および金沢大学において2度の研究会を開催し、現代南アジアにおける法秩序の実際をめぐって議論をおこなった。静岡大学においては、インドにおいて2000年代より「新たな権利」として注目されることになった「知る権利」が草の根レベルで普及し、法制化されるまでのプロセスに着目した石坂晋哉氏の発表と、インド憲法に明記された留保制度によって村落政治に進出することができた不可触民の改宗仏教徒を事例に、ローカルなエリートが誕生することで不可触民の人たちの暮らす世界が変わりつつあることを示した舟橋健太氏の発表を通して、現代インドの法秩序の動態性が浮き彫りにされた。 また、金沢大学では宇根義己氏にゲスト講師としてインドでの産業をめぐる法制度やそれに結びついた産業集積や工場立地選定過程についてお話しいただき、経済と法に関するインド/南アジア的な絡み合いを思考する必要性が明らかになった。同日、木村真希子氏のブラフマプトラ河の中州に暮らす人々の生活や土地権をめぐる発表、橘健一氏のネパールの山地民が直面した法的位置の変遷に係る歴史人類学的視点からの発表は、現代南アジアの法や権利を考えるに当たり、植民地統治という側面は不即不離である点を再度明示した。 以上の点を踏まえて、本プロジェクトは平成28年度ウィーンで開催されるISAでパネルを組織し、世界的な議論に本プロジェクトで得た知見を接続するための基盤整備を平成27年度の研究会ではおこなったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクト申請時、4班に分かれて研究課題を遂行するという当初の予定とは現状異なった方向性に向かっているため、「当初の計画以上」と区分することはためらいがあるが、現在までのところ、個々の研究状況やそこから得られた知見は、本プロジェクトが明らかにしようとする「現代南アジア型法秩序」を導出するためのプロセスとしては順調に展開しており、結果、研究の進捗状況はおおむね順調であると判断する。また、繰り返し述べているように、平成28年度はウィーンにて国際学会でのパネルを組織し、海外に本プロジェクトについて発信する機会を得ている点も考えると、国際発信という観点からも本プロジェクトが当初予定していた展開としては、基準を十分満たしていると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は5月13~15日、愛媛大学にて研究会およびミーティングを開催し、28年度に遂行予定の研究プランについて研究分担者間の意思統一を再度おこなうとともに、オーストリアのウィーン大学で開催される国際学会ISAで7月13日(予定)に組織予定の本プロジェクトに係るパネルセッションに関する方向性の再確認をおこなった。 また、最終年度である平成29年度は、タイのチェンマイで開催されるアジア地域研究者のための国際学会ICAS10でも本プロジェクトのパネルを組織する予定であり、その機会を海外に対する本プロジェクトの暫定的結論を公表する機会と捉え、平成28年度はその理論的方向性を詰めることに集中する。その際、必要に応じて各班員は現地調査に赴き、資料収集することとなっている。 以上のことから、平成28年度の研究推進の方向は、①国際発信(平成28年度の発表および平成29年度のパネル組織)、②そのための理論化という2点に特に注力するものとなる。
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Causes of Carryover |
研究分担者の木村真希子氏は平成26年度出産し、翌年平成27年度職場に復帰したが、育児の関係でフィールドワークを行うことができず、結果的に海外調査費として割り当てられた分担金を使用することができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度は研究会、国際学会で支出が確定的であり、また、木村氏自身も個人調査で海外にも出ると意思表示しているため、滞りなく使用される見通しである。
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Research Products
(31 results)