2015 Fiscal Year Annual Research Report
世界における患者の権利に関する原理・法・文献の批判的研究とわが国における指針作成
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26284006
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Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
小出 泰士 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30407225)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚武 人間総合科学大学, 人間科学部, その他 (10011305)
浅見 昇吾 上智大学, 外国語学部, 教授 (10384158)
秋葉 悦子 富山大学, 経済学部, 教授 (20262488)
坪井 雅史 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (20386816)
盛永 審一郎 福井大学, 医学部, その他 (30099767)
松田 純 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30125679)
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50303714)
小林 真紀 愛知大学, 法学部, 教授 (60350930)
本田 まり (眞鍋まり) 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (60384161)
香川 知晶 山梨大学, 総合研究部, 教授 (70224342)
甲斐 克則 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80233641)
横野 恵 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 准教授 (80339663)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
奥田 純一郎 上智大学, 法学部, 教授 (90349019)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 生命倫理 / 医療倫理 / 倫理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年8月に開催された第3回研究会において、日本における患者の権利法案についての批判・検討がなされ、さらに、「医療基本法と患者の権利」についての報告と議論がなされた。また、フランス、イタリア、カナダにおける患者の権利に関する法的動向についての報告がなされた。最後に、緩和ケアの現場に従事する医師から、患者の権利に関する貴重なお話を伺うことができた。 11月の日本生命倫理学会では、本研究グループの研究分担者3名により、多能性細胞から作成された生殖細胞や胚を利用することの倫理的是非に関する公募シンポジウムが開催された。12月に開催された第4回研究会(京都生命倫理研究会との共催)においては、自殺幇助を求める患者の権利について発表と質疑がなされた。 平成28年2月には、フランスからパリ控訴院弁護士でもあるメディアトゥールの方を招聘し、京都大学でメディアシオンについて講演していただいた。メディアシオンは新しい人権(患者の権利)擁護の方法であり、わが国における患者の権利を考える上でもきわめて有意義である。さらに、上智大学では、メディアシオンに関する講演とともに、ドイツ人哲学者による講演「治療における倫理的制約」も行われた。 年度末の資料集には、上記研究会や講演会における発表や討議の記録のほかに、患者の権利に関連して、ヒトの遺伝子編集、インターネットを通じた医療情報、オランダにおける安楽死についての資料も掲載している。 欧米およびわが国における「患者の権利」に関する哲学的・法的な資料収集、分析、検討は、少しずつではあるが、着実に進んでいる。平成28年度は、3年間の研究成果の集大成として、わが国の「患者の権利」のあるべき姿に関してある程度の方向性を示したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
わが国における「患者の権利」について考える場合、主に二つの点に目配りする必要がある。一つは、わが国における患者の権利の歴史と現状の確認である。もう一つは、諸外国における患者の権利の歴史と現状の理解である。平成27年度は、その双方を視野に収めつつ研究を進めてきた。第3回研究会では、わが国の「患者の権利法案」について、4人の研究分担者が私見を述べ、それをきっかけに議論を深めた。また、フランス、イタリア、カナダにおける患者の権利に関する報告のほか、2月には、フランス人弁護士、ドイツ人の哲学者により、それぞれの国における患者の権利の取り扱いについての報告もなされた。少しずつではあるが、わが国の患者の権利を考察するための土台となる研究は蓄積されてきていると言ってよい。今後は、諸外国における考え方を鑑として、わが国の患者の権利はどうあるべきかを考えることに研究を収斂させてゆくつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ、アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、フランス、イタリア等における患者の権利についての考察が進んでいるが、それぞれの文化の特殊性を考慮した上で、この方向の研究をさらに深めなければならない。また現在は、分野的には多少終末期医療に偏っているかもしれないが、生殖補助医療、移植医療、再生医療、医師患者関係など他の生命倫理、医療倫理の分野にも対象を広げ、もっと広い文脈における「患者の権利」についても研究の幅を広げなければならない。さらに、わが国における「患者の権利」について、その思想の本質と文化における特殊性についても総合的に考察していかなければならない。これまでもわが国の他の研究グループや海外の研究者との交流を図ってきたつもりではあるが、これからも積極的に意見交換をして異なる価値か案を理解しようとし、「患者の権利」について一層幅広い視野から考察できるように努めるつもりである。
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Causes of Carryover |
平成27年度3月に刊行する予定だった『生命倫理・生命法研究資料集Ⅱ』の刊行が遅れており、その分の支出をまだ実行していないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
まもなく『生命倫理・生命法研究資料集Ⅱ』を刊行する。
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Research Products
(61 results)