2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26284027
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Research Institution | Tokyo National Museum |
Principal Investigator |
松本 伸之 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 副館長 (30229562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 士郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸企画部, 室長 (20249915)
沖松 健次郎 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 主任研究員 (30332133)
和田 浩 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 学芸研究部, 室長 (60332136)
小泉 恵英 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部, 部長 (40205315)
伊藤 信二 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 室長 (00443622)
塚本 麿充 東京大学, 東洋文化研究所, 准教授 (00416265)
安藤 香織 公益財団法人徳川黎明会, 徳川美術館, 学芸員 (20555031)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高雄曼荼羅 / 両界曼荼羅 / 密教美術 / 神護寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、京都・神護寺に伝来する両界曼荼羅を中心とする研究である。高雄曼荼羅は空海が中国より請来した両界曼荼羅を写したものであるが、類する作品は中国に残っていない。その表現は多分にインド的であるが、当代にさかのぼる絵画作品はインドにはわずかしか残っておらずインドとの具体的関係は明らかになっていない。おそらくその表現は、インドの表現が中国、日本で受容される過程で、それぞれの要素が取り入れられたものと考えられる。本研究は、日本、中国、インドの絵画、彫刻、工芸を研究するスタッフによって、高雄曼荼羅とそれに関係する国内外の作品を検討し、古代アジアの仏教美術の様相を探ろうとするものである。 平成28年度は、(1)韓国・国立中央博物館所蔵の西域絵画の調査(6月12日)、(2)中国・陝西歴史博物館における絵画、彫刻作品の調査、(9月22~23日)、 (3)スリランカにおける密教美術の調査(29年2月25日~3月2日)、 (4)京都・醍醐寺の密教美術の調査(8月1~2日) を実施した。(1)(2)は高雄曼荼羅の原本が描かれた時代の作品であり、高雄曼荼羅を考察するうえで重要な作品で、身体表現を中心テーマに実施し、高雄曼荼羅の身体表現の源流について考察する資料を得た。碑林博物館では、空海入唐よりも少し早い時期に造られた密教尊像の調査を実施し、高雄曼荼羅の身体表現との比較検討を行った。(3)はインドに地理的に近いスリランカでの調査である。密教では独特の法具が用いられるが、密教が生まれたインドには残っていない。スリランカにはわずかに残っていて、それらの調査を実施した。その中で、日本では紹介されていない五鈷杵を見出すことができた。(4)は、空海の孫弟子にあたる聖宝が開いた京都・醍醐寺の絵画・書跡・彫刻・工芸などの密教美術の調査で、空海没後の密教美術の変容を考察する資料などを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高雄曼荼羅の原本が描かれた時代の絵画の調査を実施した。また、碑林博物館の密教尊像は、西安でも著名であった大安国寺にあったもので、留学中の空海が目にした可能性がある。両者とも高雄曼荼羅研究には欠かせない資料であり、その調査を実施できた意義は大きい。また、高雄曼荼羅の表現の源流はインドにあるが、インドには十分な作品が残っていない。それを補完するスリランカにおける調査も本件遂行上欠くことのできないものである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに、インド、中国において、高雄曼荼羅の表現について考察するのに必要な作品調査を実施してきたが、両国とも十分な資料が残っているわけではない。両国の作品は海外でも所蔵され、特に英国・大英博物館、仏国・ギメ東洋美術館には優れたコレクションがある。また、インド美術を考える上では、海上交通によって伝わった東南アジアも重要な位置を占める。本年度は、それらの調査も視野に入れ、効率的な調査を行う。 29年度は最終年度に当たるので、これまでの成果をまとめて報告書の刊行を準備する。
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Causes of Carryover |
年度末に調査旅行を実施したため参加できないメンバーがあった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は、インド、中国作品を所蔵するイギリスやフランスの美術館への出張を検討している。調査に必要な機材を購入する。また、外部業者へ作品の撮影を発注する可能性もある。
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