2014 Fiscal Year Annual Research Report
日本現代文学・文化の世界展開の比較文学的研究―<ポップ>なテクストを中心に
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26284051
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平石 典子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (20293764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ヨコタ村上 孝之 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (00200270)
山中 由里子 国立民族学博物館, 民族文化研究部, 准教授 (20251390)
加藤 百合 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (50326815)
大城 房美 筑紫女学園大学, 文学部, 教授 (80289595)
姚 紅 白百合女子大学, 言語・文学研究センター, 研究員 (90727140)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 比較文学 / 日本現代文学・文化 / ポップ・カルチャー / 海外展開 / 国際研究者交流 / スロベニア:イギリス:インド:トルコ:エストニア / 国際情報交換 / 多国籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、基礎的な文献を収集するとともに、ロシア語圏(ロシア、エストニア)、中国語圏に加え、インド、トルコ、チリ、ベリーズなどで調査を行い、テクストの海外展開についての資料や情報を渉猟、整理した。図書館や博物館での資料閲覧・収集と、各都市での書店・DVD店・貸しビデオ店などで行った日本のポップ・カルチャーの浸透状況の実地調査からは、ネットから情報を得ている層の圧倒的多さや、日系社会の規模などと、日本のポップ・カルチャーへの関心は必ずしも連動していないことが明らかになった。こうした調査資料をもとに、今後は分析・論文執筆の作業を進めることになる。 国際研究交流と成果発表としては、いくつかの研究集会を企画した。研究課題①「テクストの世界展開と翻訳・翻案について」については、2014年8月にリュブリャーナ大学(スロベニア)で翻訳の研究パネル"Translation, Adaptation and the Creation of Modern and Contemporary Literature"を企画し、欧州日本学会(EAJS)国際大会のサテライトフォーラムの一部として研究発表を行った。研究代表者、分担者に加え、リュブリャーナで日本文学の翻訳活動を行っている翻訳家と雑誌編集者、ルーマニアの日本文学研究、翻訳者によるパネルを行い、参加者を交えたディスカッションを通して、日本のテクストが中欧に展開していく際の特徴や問題点が明らかになった。研究課題項目②「ポップ・カルチャーの海外文学への影響について」については、2014年7月に大英図書館で開催された5th International Comics and Graphic Novels Conferenceに、代表者、分担者にブラジルとインドの研究者を加えて"Beyond "Popular": Manga as Radical Representation of Socio-Political Issues"というパネルで参加し、こちらも大きな反響を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度であり、情報と資料の渉猟、収集に多くの時間を割くことになったが、ロシア語圏、中欧、中南米、アジアなどの複数の国で調査を行うことができた。収集した情報・資料データの集積、公開方法については、当初の計画を再考しなければならないところもあるが、最善の方法を考えていきたい。 一方、国際研究者交流と国際情報交換は、予想以上に進み、各地で研究者や情報提供者のネットワークが構築されつつある。こうした研究交流は、平成27年度以降の国際シンポジウムなどでさらに展開させ、研究成果としてまとめていくことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、引き続き、調査による情報・資料の集積及び整理を進めるとともに、本研究プロジェクトを進める中で構築されつつあるリサーチグループや共同研究による活動をさらに活発化させる。リサーチグループによる研究会を開催し、資料の精読や、テーマをめぐるディスカッションを行う。こうした継続的研究は、研究課題項目①、②の両方で行われるが、複数回にわたる研究会及び討論の場では、具体的・実証的な問題提起を心がけつつも、新たなテクスト研究を志向する点から、挑戦的な課題への取り組みや問題設定、斬新な切り口を積極的に歓迎するものとする。成果発表については、それぞれの研究課題のもとに行っていく。 研究課題項目①テクストの世界展開と翻訳・翻案について 平成26年度には、ロシア語圏、中国に加えて、トルコ、インド、チリなどで調査を行ったが、引き続き調査を行うとともに、明らかになったことをもとに、〈ポップ〉なものと分類される現代の日本のテクストの世界展開の諸相をまとめていく。翻訳・翻案の個別事例研究を通して、近代から現代へと連続する、技法や伝統の継承や共有、または断絶のあり方と、現代のテクストの展開の様相を示し、日本と海外の文化の相互作用を明らかにしていく。また、今年度は、研究分担者、研究協力者をはじめとする内外の研究者による、〈ポップ〉なテクストの翻訳・翻案の様相を捉え直すシンポジウムを開催する予定である。 研究課題項目②ポップ・カルチャーの海外文学への影響について 平成26年度の調査の中では、海外で日本のポップなテクストが扱われている店舗の多くが、中国系移民による経営であることがわかり、東アジアという基盤が、日本のポピュラー文化の蔓延に何らかの効果をもっていることが推測された。今後は、こうした「東アジア」という枠組みも考慮しながら、さらに個別事例研究を進め、その成果については、適宜国際学会などで発表していく。
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Causes of Carryover |
平成26年度に予定されておりながら、主催者の都合(エボラ出血熱)で開催されなかった学会(A-ASIA in cooperation with ICAS biennial conference "Asian Studies in Africa: Challenges and Prospects of a New Axis of Intellectual Interactions")及び、調査対象者とのスケジュールがあわず、先送りとなった調査があり、その旅費等を次年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
A-ASIA in cooperation with ICAS biennial conference "Asian Studies in Africa: Challenges and Prospects of a New Axis of Intellectual Interactions"への参加、及びマンガ関連の調査のために使用する予定である。
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Research Products
(21 results)