2015 Fiscal Year Annual Research Report
日本語の多様な表現性を支える複合辞などの「形式語」に関する総合研究
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26284064
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
藤田 保幸 龍谷大学, 文学部, 教授 (80190049)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 誠 大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所, 言語変化研究領域, 教授 (30182489)
青木 博史 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (90315929)
江口 正 福岡大学, 人文学部, 教授 (20264707)
岡崎 友子 東洋大学, 文学部, 教授 (10379216)
小西 いずみ 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60315736)
砂川 有里子 筑波大学, その他部局等, 名誉教授 (40179289)
塚本 秀樹 愛媛大学, 法文学部, 教授 (60207347)
中畠 孝幸 甲南大学, 文学部, 教授 (00217811)
馬場 俊臣 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (70218668)
日高 水穂 関西大学, 文学部, 教授 (80292358)
三井 正孝 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (60249240)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 形式語 / 複合辞 / 文法化 / 形式名詞 / コーパス / 接続詞 / 文法史 / 方言文法 |
Outline of Annual Research Achievements |
科研・共同研究の二年目にあたる本年度は、これまでの研究成果をふまえて、それぞれの研究の深化をはかるとともに、「方言の『形式語』研究文献一覧」「古典語の『形式語』文献解題」の作成に向け、交付申請書に記した研究計画・方法に即して作業を進めた。また、内部研究会である「形式語研究会」を二回(科研採択以前からの通しの回数で、第10・11回)行い、新たな成果が示された。それぞれの研究会での発表者と発表題目は次のとおりである。 第10回・形式語研究会(2015年9月27日・於JR博多シティ) 中畠孝幸「形式名詞『つもり』について―中国語との対照―」/小西いずみ「引用形式に由来する提題形式の発達過程を推定する」/岡崎友子「現代・古代語における時間接続表現」 第11回・形式語研究会(2016年1月24日・於国立国語研究所) 馬場俊臣「『(だ)からこそ』と『(だ)からといって』『(だ)からか』について」/三井正孝「近代語における〈ニオケル〉の変遷―非連体タイプを中心に―」/青木博史「非変化の『なる』の歴史」 他にも成果は個別論文・発表として公にされているが、それらを通して目立った点としては、コーパスを活用した形式語研究が引き続き積極的に進められていること、方言における形式語の動態研究の成果も出てきていること、形式語の成立・文法化の進行を文法史的に記述する研究も進められていることなどが挙げられる。またコーパスによる研究が成果を上げる一方で、研究代表者などを中心に、従来から行われてきた内省を手がかりとして形式語の意味・用法を記述する研究も積み重ねられており、しばしば指摘される、コーパスによる研究と内省による研究は相補って進められるべきものであるという研究のあるべき形を実践するものとなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研・共同研究の二年目を終了して、交付申請書の研究計画・方法に記載したとおりに、個々の研究の一層の深化がはかられ、個別研究の成果が多面的に積み重ねられつつある。たとえば、上記の研究分担者小西いずみの「提題形式」の発達に関する研究は、方言の実態をもふまえた氏のこれまで研究を一段深めて総括するものであり、同じく青木博史の研究は、従来形式ご研究で取り上げられてこなかった「非変化の『なる』」表現を一種の文法化を取り上げて形式ご研究に位置付けようとするものである。また、同じく馬場俊臣・中畠孝幸の上記の研究は個別の形式語の各論記述を着実に進めるものといえる。これらの他、研究代表者藤田保幸の「引用形式の複合辞への転成」を論じた研究は、昨年度に藤田が発表した「複合辞の成立を支える共時的条件」の論を補うもので、形式語の共時的な存立・成立の要件を考える理論的な考察の深化となっている。 「形式語用例集」「方言の『形式語』研究文献一覧」「古典語の『形式語』文献解題」といった資料集の作成に向けても、作業が積み重ねられている。「形式語用例集」については、「形式名詞」のリストをもとに、個々の形式名詞についてこれまでの記述を集約しつつある。ただ、適切な用例を新たな収集することに時間がかかっており、草稿としてまとめるまでには至っていないが、作業の完成までの見通しは立っており、問題はない。あと二つの資料集の作成についても、主たる担当者を中心に同様に計画が遂行されている。 そして、科研費が得られるようになって出張費が確保され、研究会を年に二回行えることになり、関連する問題に通じている研究協力者をコメンテーターに迎えることも出来て、目下研究交流は極めて円滑に進められており、共同研究の実が大いに上がっている。 以上のような研究グループの研究の現状を踏まえ、達成度としては「おおむね順調」と判断する
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度に当たる平成28年度も、交付申請書に研究計画・方法として記した事柄を柱として研究を進めていく。具体的にはまず、今年度も各自の進めている個別の研究を内部研究会である「形式語研究会」において順次発表し、相互に成果を評価し共有することを積み重ねていく。そして、最終年度であるので、共同研究三年間の成果を報告書にまとめる。報告書は書き下ろし論文集とする予定であり、研究代表者・研究分担者の個々の研究を集成し、研究協力者にも寄稿を求めて、現在の形式語研究の水準を示せるようなものとする。 また、「形式語用例集」「方言の『形式語』研究文献一覧」「古典語の『形式語』文献解題」といった資料集についても、完成稿をまとめて公刊する。
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Research Products
(27 results)