2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26284090
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Research Institution | Hakodate National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 和之 函館工業高等専門学校, 一般科目人文系, 教授 (80342434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 英男 富山大学, 大学院理工学研究部(理学), 教授 (30134993)
小林 淳哉 函館工業高等専門学校, 物質環境工学科, 教授 (30205463)
小田 寛貴 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 助教 (30293690)
浪川 健治 筑波大学, 人文社会科学研究科(系), 教授 (50312781)
三宅 俊彦 淑徳大学, 人文学部, 教授 (90424324)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | アイヌ / 交易 / ガラス / 出土銭貨 / 電磁探査 / 成分分析 / 年代測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
アイヌ文化の成立の時期を明らかにすること、それはアイヌ民族の成立を明らかにすることにもつながる重要な問題である。しかし、この問題を明らかにする上で、大きな障害となっていることがある。それは14~16 世紀という時期が、考古学の面からも歴史学の面からも、アイヌ史の空白とされていることである。本研究は、14~16 世紀のアイヌ文化について①地域によって顕著な差があったか、②交易の拡大がアイヌ文化にどのような影響を及ぼしたか、③中世と近世とでアイヌ文化には断絶があったか、以上の3点の視点から研究する。そして、14~16 世紀のアイヌの物質文化および精神文化のいくつかの要素を、現時点で可能な限り復元し、アイヌ文化の成立の経緯に迫る。 具体的な方策としては、考古学データを収集するとともに、これまでに発掘されたガラス玉や銭貨などの遺物の成分分析や新しい手法での年代測定を行う。さらに遺跡の電磁探査を通じて、遺物や遺跡から新たな情報を可能な限り収集することとした。 また漢語史料と日本語史料の収集と比較を行い、上記の作業で得られた新しい情報と対比することによって、上記の①・②・③の課題を解明することをめざす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に成果をあげられたのは、電磁気探査と出土銭貨の成分分析および青銅製品の年代測定である。 電磁気探査については、24年度に上ノ国町の勝山館の背後に広がる墳墓群を探査した結果、反応が見られた。今年度は反応が見られた個所を発掘したが、遺物は見られなかった。これは発掘面をどこまで掘り下げるかという技術的な問題とも係わっており、検討課題が明らかとなった。また、25年度のシベチャリチャシ跡に続き、26年度も新ひだか町のホシナシリチャシ跡を探査し、壕の跡かと思われる反応を得た。 つぎに出土銭貨については、表面の錆と内部の金属組成とを比較できるデータを得た。ガラス玉の成分分析については、北海道の資料の測定を進めたが、ロシア連邦の極東地域の資料を借用する作業が進まず、思ったほどの成果をあげることができなかった。 青銅製品の緑青を用いた年代測定は、伊達市の資料についての結果が明らかになり、この分野では、はじめて成果をあげることができた。 最後に、文献史料の面では調査を続けており、明代の漢語史料についても調査を進めている。また板碑についての調査・確認も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、新ひだか町のチャシの探査を終えてしまう予定である。また伊達市のオヤコツ遺跡の電磁探査のために地権者との交渉を進める予定である。 つぎにガラス玉は、可搬型の装置をロシア連邦ウラジオストーク市のロシア科学アカデミー極東支部歴史学・考古学・民族学研究所に持ち込んで、7~13世紀のガラス玉・ガラス製品を分析する予定である。北海道や東北のガラス玉の分析も、昨年度からの計画を継続する予定である。いくつかの分析装置を利用して、相互の数値を比較できるように測定を進める予定である。 銭貨の調査、青銅製品の年代測定は、昨年度からの計画を継続する予定である。特に銭貨は、上記のロシア科学アカデミー極東支部に所蔵される資料の調査を行う予定である。 最後に、文献史料の調査については、漢語史料と日本語史料の収集が進んできたので、両者の内容の対比を行う予定である。
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Causes of Carryover |
ロシア連邦ウラジオストク市にあるロシア科学アカデミー極東支部歴史学・考古学・民族学研究所に所蔵されるガラス玉を借用して、函館工業高等専門学校の分析装置で非破壊分析をする予定であった。しかし、先方がロシア文科省の許可を得るために必要としてきた保証書が、函館市と函館工業高等専門学校の両方から必要という状況であったため、函館市との交渉がうまく進まず、平成26年度の借用は諦めざるをえなかった。そのため、借用についての下交渉のための旅費、借用と返却に際してロシア側の研究者を招聘するための旅費が執行できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画を変更し、函館工業高等専門学校の分析装置には拘らないことにした。ある程度は測定精度が下がることを覚悟して、可搬型の測定装置をウラジオストーク市に持ち込むことに方針を変更した。今年の12月に現地調査を行う方向で、先方からの内諾を得ている。
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Research Products
(10 results)