2015 Fiscal Year Annual Research Report
東大寺を中心とする南都の未整理文書聖教の復原的調査研究
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26284104
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
吉川 聡 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 室長 (60321626)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 副部長 (30212319)
横内 裕人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (50706520)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 東大寺近世文書 / 廃仏毀釈 / 興福寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主眼は、東大寺に膨大に存在する未整理の文書聖教について、基礎的な調査を進めるとともに、その検討から、伝来過程や組織の内実等を理解しようとするものである。あわせて、南都の寺社等に集積された文書聖教について、その把握につとめ、伝来状況等を明らかにすることを意図している。 2年目である平成27年度は、昨年度の調査研究に引き続き、新修東大寺文書聖教の第80函~第85函の原本調査を実施した。調査ではラベルを貼付し、書誌事項をパソコンに入力した。桃山~江戸時代の寺院運営関係の文書や、少数ながら中世大般若経の断簡も存在した。これらはさらなる検討が必要である。 また、東大寺図書館が所蔵する中村純一寄贈文書については、前回の科研「南都における廃仏毀釈後の資料動態に関する調査研究」で目録と一部の釈文を公表したが、その後も引き続き、釈読・内容検討作業をおこなっている。その結果、明治維新前後の興福寺における神仏分離の動向が詳しく判明したので、その成果を雑誌『月刊住職』史上に公表した。奈良の明治維新期は、従来、変革期のために資料が少なく、不明な点が多かった。それが今回の論考で、寺院の動向、その内部の寺僧集団ごとの考え方の相違など、詳細が明確になってきた。 また、中村純一寄贈文書に関連して、現在も個人蔵で所蔵されている資料を把握したので、今年度からその個人蔵資料の調査を開始した。中村純一寄贈文書と同様、江戸時代後期から近代にかけての資料で、興福寺に仕えていた家が、近代に変化を遂げていった様相がうかがえる資料だと認識している。 さらに、東大寺中性院の襖・屏風の下張り文書を、襖等からはがす作業を実施している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東大寺での原本調査は、当初計画どおり、10日間実施した。原本調査終了分についても、中村純一寄贈文書の翻刻検討を継続して実施している。またそれ以外に、中村純一寄贈文書に関連する、個人蔵の資料について調査を開始し、軌道に乗せることができた。さらに、東大寺中性院の襖・屏風の下張り文書をはがす作業も、当初計画どおりに実施した。 さらには、中村純一寄贈文書の検討をふまえて、明治維新期の興福寺の廃仏毀釈の様相を、論文にして公表することができた。以上から、おおむね順調と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
新修東大寺文書聖教は、未整理資料がまだまだ存在するので、継続的に原本調査を実施していく必要がある。その上で、原本調査終了分の検討作業も続けていかなければならない。さらに、新たに始まった個人蔵の資料については、平成27年度で調査が軌道に乗ってきた段階なので、さらに進捗させていく必要がある。また、東大寺中性院の襖・屏風の下張り文書については、骨組みから文書を外す作業が進んできた状態なので、さらに細かく剥がしていくことが必要である。
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Causes of Carryover |
残額が少額で、物品を購入するには金額が不足したために、翌年度予算と合わせて、翌年度に購入することとしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品購入費用として使用予定。
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