2015 Fiscal Year Annual Research Report
コスモポリタニズムと秩序形成――ブリテン世界における近代的イシュー
Project/Area Number |
26284113
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝田 俊輔 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (00313180)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 はる美 東洋大学, 文学部, 講師 (00540379)
辻本 諭 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (50706934)
近藤 和彦 立正大学, 文学部, 教授 (90011387)
坂下 史 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90326132)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | コスモポリタニズム / パトリオティズム / ブリテン世界 / イギリス / アイルランド / アメリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は5月、8月および11月に研究会を開催した。5月の研究会においては、連携研究者の金井光太郎が、近世のコスモポリタニズムの重要な柱である「洗練」の概念・規範についてアメリカの事例を報告した。この際に明らかになった事実としては、「洗練」を備えた人間は出自や身分に関わりなくコスモポリタンなグループに参入できた一方で、そうでない人間は排除されたことであり、こうしたコスモポリタニズムの両義性が今後の検討課題として浮上した。 8月の研究会では、研究代表者の勝田俊輔がイングランド人詩人のShelleyのコスモポリタンな活動について報告した。報告は、Shelleyが人類の全般的な徳性の向上を目指してアイルランドに渡って貧民の状況改善を提唱した事例をもとに、革命期の平民主義的なコスモポリタニズムの性格の一端を明らかにするものとなった。 11月の研究会では、ゲスト報告者として北大名誉教授の北原敦氏を招待し、コスモポリタニズムおよびパトリオティズムについての報告を受けた。本科研のメンバーの他に外部からの参加者も交えて討論を行った。報告では、一般には対立すると考えられているパトリオティズムとコスモポリタニズムには、少なくともフランス思想においては実は相通ずる側面があったことが指摘された。またフランス啓蒙思想・革命期のコスモポリタニズムの性格として、基本的には知識人の営みであったことも明らかになった。 この研究会での報告を受け、研究代表者はブリテン世界におけるパトリオティズムについて調査を行い、それがフランスの場合とは異なり、コスモポリタニズムへと通じる回路を持たない、との作業仮説を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、当初の予定通り年に2回の研究集会を開催したことに加えて、特別集会も組織できた。コスモポリタニズムはかなり幅広い問題であり、多面的かつ慎重な扱いが必要だが、議論の方向性にある程度の見通しが得られた。この一方で、本科研研究課題のもう一つの研究対象である秩序問題については未検討であり、今後の課題とされる。
|
Strategy for Future Research Activity |
過去二年間と同様、定期的に研究メンバーによる研究集会を開催する。加えて、秋には海外の研究者を招聘して研究会を組織する予定であり、また外部研究者3名を交えたミニシンポジウムを冬に開催する予定である。すでに海外研究者および外部者3名からは内諾を得ており、研究会とミニシンポジウムの趣旨もほぼ確定してある。 この一方で、秩序問題についての研究を進めること、また外国人研究者の招聘計画を進めることが課題として残されており、早期の対応が必要である。
|
Causes of Carryover |
海外研究者の招聘候補として、カリフォルニア大学のAdriana Craciun教授にアプローチしたが、本人の都合があり、今年度は招聘を見送ることとなった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度に繰り越した分は、当初の予定通り海外研究者の招聘に用いる。
|