2016 Fiscal Year Annual Research Report
コスモポリタニズムと秩序形成――ブリテン世界における近代的イシュー
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26284113
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
勝田 俊輔 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (00313180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
後藤 はる美 東洋大学, 文学部, 准教授 (00540379)
辻本 諭 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (50706934)
近藤 和彦 立正大学, 文学部, 教授 (90011387)
坂下 史 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (90326132)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 西洋史 / コスモポリタニズム |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度の本科研研究課題の研究遂行状況としては、2016年4月3日に年度最初の定例研究会を開催した。研究報告は連携研究者の金井光太郎氏(東京外国語大学)による「フランクリンから見るコスモポリタニズム」であり、いわゆる知識人階層に属さないベンジャミン・フランクリンのような人物がコスモポリタンな活動を手広く展開していたことが明らかになり、非常に有意義な研究会となった。金井氏はさらに7月24日の定例研究会でも「万国公法のコスモポリタニズム」との題で報告を行った。続いて9月17日にOxford大学のJoanna Innes教授を招聘して 、「Cosmopolitan politics」のテーマで公開セミナーを開催した(研究分担者坂下史氏の科研基盤研究B 15K02955と共同開催)。また12月3日には、角田俊男(武蔵大学)、古家弘幸(徳島文理大学)、桑島秀樹(広島大学)、犬塚元(法政大学)の4者を招聘し、「18世紀ブリテン世界におけるコスモポリタニズム:ヒューム、スミス、バークの所論から」とのタイトルでのシンポジウムを開催した。発題者は本科研代表者の勝田俊輔が務めた。さらに2017年3月30日に年度最後の定例研究会を開催し、東京大学の川出良枝教授を招聘して、「人類愛・商業・連合:フランス18世紀コスモポリタン思想の3要素」との題で報告を頂いた。以上のように、28年度は研究会、セミナー、シンポジウムの開催に見られるようにかなりの研究活動を行ったと言える。また同時に、研究メンバーは以下の「研究発表」欄に明らかなように、それぞれ関連する研究業績を公にしてもいる。総括すると、28年度の最大の成果は、近世・近代のコスモポリタニズムについて、ブリテン世界における現象として把握すると同時に、本来の研究メンバー以外の研究者を外部から積極的に招聘することによって、フランス語圏・ドイツ語圏における現象としても把握し、これらを重層的に理解する可能性が開かれた点にある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は17-19世紀のブリテン世界におけるコスモポリタニズムの展開を秩序問題と関連づけて検討する予定であったが、以下の二点の理由により、研究の進展は当初の構想および計画には必ずしも即していない状況にある。第一は、コスモポリタニズムが予想よりも大きなテーマであると同時に海外で急速に研究が進展していることであり、このため秩序形成の問題は正面からは検討できていない。第二は、ブリテン世界でも特に本国のグレートブリテンにおいては、コスモポリタニズムの諸思想が、フランス語圏、ドイツ語圏のように明示的・積極的に形成されなかったということである。その一方で、これまでの研究会・シンポジウムなどを通じて、当初の研究計画に含まれていなかったフランス語圏、ドイツ語圏でのコスモポリタニズム思想の展開についても検討の対象とすることができ、この点では今後の研究の発展にとって大きな意義を持つ成果と言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、コスモポリタニズムを秩序形成の問題とあわせて検討するのは困難であると予想される。また、コスモポリタニズムをブリテン世界のみ現象として扱うことも有意義とは考えにくい。そのため、今年度は、フランス語圏、ドイツ語圏の専門家も外部から招聘し、コスモポリタニズムを近世ヨーロッパ/大西洋世界における現象として広い視座から検討し直す予定である。具体的には、定例の研究会に加え、6月にはフランス史、ドイツ史を専門とする外部の研究者を交えたシンポジウム、12月には近世ヨーロッパにおけるコスモポリタニズムを専門とするアメリカの研究者を招聘したワークショップを開催する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度に海外から研究者を招聘する予定だったが、先方の都合で実現しなかった。その分が28年度に繰り越されたが、28年度分はすでに研究計画が決まっていたため、この超過分を完全には執行することができず、29年度に先送りせざるを得なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は、12月にカリフォルニア大学ロサンジェルス校のMargaret Jacob教授を招聘し、ワークショップおよびセミナーを開催する予定であり、本人より内諾を得ている。この費用は、あらかじめ海外研究者の招聘に向けて29年度分として計上していた予算を用いる。なお同教授の同僚であるLynn Hunt教授も同時に来日し、別にワークショップとセミナーを開催する予定であり(こちらも内諾済)、その費用の一部として、本科研からの28年度からの超過分を用いる予定である。
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Research Products
(16 results)
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[Book] 『痛みと感情のイギリス史』2017
Author(s)
伊東剛史・後藤はる美(共編著)/那須敬・金澤周作・高林陽展・赤松淳子(分担執筆)
Total Pages
368 (5-13, 55-104, 141-174, 215-259, 261-301)
Publisher
東京外国語大学出版会
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