2014 Fiscal Year Annual Research Report
震災復興の公共人類学:福島県を中心とした創造的開発実践
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26284136
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
関谷 雄一 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (30329148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高倉 浩樹 東北大学, 東北アジア研究センター, 教授 (00305400)
武田 直樹 筑波学院大学, 経営情報学部, 社会力コーディネーター (10725766)
箭内 匡 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (20319924)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 公共人類学 / 福島県 / 映像 / 復興ツーリズム / 復興開発 / 文化開発 / チェルノブイリ / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
★研究体制の構築・役割分担の確立:本年度は初年度にあたり研究・支援・復興協力体制の構築に研究活動の力点が置かれた。5月には研究チームで第1回目のミーティングを行い、直後の国際人類学民族科学連合学術大会(開催地:幕張メッセ)において関谷・高倉の研究報告が出されている。また、9月には関谷と武田がウクライナ共和国のチェルノブイリ視察を行い、11月には関谷・武田・箭内が学生とともに福島県ツアーをこなした。 ★つくば市避難者関連:平成25年度を中心に武田と関谷で巡回調査をした避難者宅50件の聞き取り調査内容につき、本年度既に21件の音声起こしが終了している。本年度中にあと10件、来年度に残り19件の声を起こし合計50件のすべてがひとまず文字化される予定。 ★チェルノブイリ調査関連:平成26年9月5日から12日にかけ、武田と関谷がウクライナ共和国を訪れ、チェルノブイリ事故関連団体7団体とジトーミル国立農業環境大学ミコラ・ディドゥク教授に対し取材を行った。 ★映像人類学の導入:郡山出身のカメラマンでつくば市公務員宿舎にて避難生活を送っている田部文厚氏(有限会社田部商店 代表取締役)とウクライナの民放テレビ局STVのスタニラフ・メデヴェデフ氏の研究協力を得ながら、映像人類学から可能となる研究活動を創造的に開発してゆく。 ★文化開発事業の調査:本年度は予備的研究として、福島県内を広域にわたって無形民俗文化財に関わる調査を行った。訪問したのは相馬市(6月)、飯舘村(7月)、二本松市(10月)、いわき市(12月)、広野町(2月予定)である。特に生業や芸能などの無形民俗文化財の調査や、放射能被害に関わる美術企画・映像企画の調査を行った。各地における文化事業と放射能被害の全般的状況についての知見を得て、今後行うべき課題の絞り込み作業を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4月18日に実施した第2回全体ミーティングにおいてこれまでの研究作業の進捗状況確認、研究分担金の配分や今後2年間の科研チームの目標設定などを決めるべく話し合いを進めた結果、下記の2点において、本研究プロジェクトの方針が集約されることが確認された。 1.本研究プロジェクトの目的:「震災復興の公共人類学:福島県を中心に」と題された本研究プロジェクトの内容上の大きな焦点として指摘できるのは、震災をきっかけに、新しい絆(ネットワーク、人間関係)の芽生え、"togetherness"の有効性が確認され始めている。この"つながり"こそ、私たちの研究活動の出発点であり、最終的な落とし処でもあるのではないか、という結論が出されました。この結論は、一方で原発事故をきっかけに、家族や共同体がバラバラな状況に追い込まれ、復興も絶望的である、福島県の方々の現状ばかりを取り上げる先行研究の偏ったアウトプットによる影響を払しょくし、別の視点を当てることにもつながる、という学術的な期待も込めてそのような認識を共有した。 2.技術的な手法としての映像・イメージの重要性:技術面に関しても研究者全員が、映像やイメージが持つ、情報を明確に伝えるという技術的優越性を認識した。映像を上記の目的意識に沿ってどのように活用しながら一つのアウトプットを出していくかということを実践・模索しながら形を整えて、一つの制作品を創ってゆくことに今年は挑戦してみよう、ということにもなった。これはつくばで協力者田部氏お願いしている映像記録の制作活動も含まれており、その他、高倉がすでに制作されている作品も念頭に置かれたアイディアである。 以上2点の落としどころを確認できたことを踏まえるならば、現在までの達成度をおおむね順調と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は海外赴任によりいったん本研究プロジェクトを離れていた山下晋司(帝京平成大学・教授)を分担者として迎え、本プロジェクトを企画した原案にあった5人体制に戻る。平成26年度の到達度を踏まえて、さらに組織としての方針を固めながら、概ね下記のような役割分担に沿った研究活動が実施される予定である。 全体総括は全員で行う。平成27年4月18日第2回全体ミーティングを実施し、以下のような役割分担を明確にした。今後はこうした体制の下で研究活動を継続してゆく。 ★つくば市避難者関連事業:1)声の文字化・取りまとめ、2)避難者宅再訪問・追加取材(映像記録も含む)担当は関谷、武田、田部文厚(研究協力者)。★東雲公務員住宅関連事業:取材・連携活動の実施、担当は関谷・山下。★チェルノブイリ調査関連事業:1)平成26年度調査の記録とりまとめ、2)追加取材・追加資料の収集、担当は武田・関谷。★いわき市調査関連事業:1)いわき市調査、2)学会等における報告、担当は高倉。★映像人類学関連事業:1)平成26年度福島ツアー記録の編集、2)その他映像記録活動の企画・提案、担当は関谷・武田・箭内・田部。★福島ツアー関連事業:NPOHSFと連携した福島まなび旅、担当は関谷。★アーカイブ関連事業:1)福島原発関連文書資料情報整備、2)福島原発関連映像資料情報整備、担当は関谷、箭内。★復興ツーリズム関連事業:福島および宮城における復興ツーリズム、担当は山下・関谷。★情報公開事業:1)東大Anthronetを利用した情報公開、2)学会・論文等による情報公開、担当は全員で手分けして行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額のほとんどは研究分担者武田の未使用分で、他、代表者関谷、分担者箭内がわずかに残したものである武田の場合は、予定された旅費支出が実際にはそれほど出費する必要がないよう工夫をした点が指摘できる。具体的には昨年の福島調査の際に、公共交通機関ではなく、荷物を運ぶ都合でマイカーを使用した結果、大幅な支出減となった経緯がある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
代表者、分担者それぞれが繰り越した助成金をそのままの割合で、配分することにより問題を解決できる見込みである。
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Research Products
(10 results)