2014 Fiscal Year Annual Research Report
民主主義活性化のための政治理論と実証研究の共生成的政治学の研究
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26285035
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
小川 有美 立教大学, 法学部, 教授 (70241932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
空井 護 北海道大学, 公共政策学連携研究部, 教授 (10242067)
芝崎 厚士 駒澤大学, グローバル・メディア・スタディーズ学部, 准教授 (10345069)
中井 遼 立教大学, 法学部, 助教 (10546328)
一ノ瀬 佳也 立教大学, 法学部, 助教 (20422272)
田村 哲樹 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (30313985)
粕谷 祐子 慶應義塾大学, 法学部, 教授 (50383972)
井上 弘貴 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (80366971)
三村 憲弘 武蔵野大学, 法学部, 講師 (40453980)
浅井 亜希 立教大学, 法学部, 助教 (40709573)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 民主主義 / リスク / 福祉国家 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、まずその全体的構造を明確にするため政治学の諸領域を関係づけ、概念的整理と討議を行った。特に、以下の四つのサブテーマ(1政治制度、2リスク社会・福祉、3民族・国際関係、4政治学史)のそれぞれにおいて具体的な課題を設定し、お互いに議論を積み重ねた。 1.「一票の格差」問題を取り上げ、規範理論と実証分析の両面をあわせて検討する包括的なアプローチによってより深い制度改革的インプリケーションを引き出し、その相乗効果を示した。一方の規範理論の観点からは、一票の格差が政治的平等の問題であるのみならず、いかなる代表であるか(委任か独立か、地域か集団か)の問題であることが指摘され、他方の実証分析の観点からは、司法判断などで用いられる一票の格差を測定する諸指標に長所・短所があることが指摘された。 2.実証分析において概念をどのように構築していけばよいのかというのはかなずしも自明ではないことから、先進民主主義国の社会政策に関して、理論モデルと経験分析とを緊密に結びつける方策を示した。 3.デモクラシーの中核的な制度である選挙が人々の政治意識に与える影響について分析した。とくに,その民族意識や愛国心について経済格差による条件付けを行い,経済格差の強さと選挙近接の組み合わせは,求心的ナショナリズムとしての愛国心を損ね,遠心的ナショナリズムとしてのゼノフォビアを強めることを,計量分析を通じて論じた。 4.戦後日本政治学における政治理論と実証研究の関係を探るべく,岡義武と京極純一の代表的な研究に集中的に検討を加えつつ,さらに理論と実証の関係性について最も鋭敏な問題意識を抱いていた戦後日本の政治学者のひとりとして,あらたに篠原一を取り上げ,彼が提唱した「歴史政治学」の内容・内実を分析する研究を行った。 さらに、海外から研究者を招聘し、上記の課題についての国際的な水準での意見交換、討議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「政治理論」のアプローチと「実証研究」のアプローチ、それぞれを出発点としつつ、相互に接近法を考慮、活動して、研究を実施していくものである。そのために、活発にコミュニケーションを行って研究計画、アプローチ、問題点についての知見、意見を交換し、フィードバックし、公表する組織体制を構築していくことを行っていくことになる。 初年度の研究目的は「研究体制の確立と課題の設定」にある。当初の研究計画に示されたとおり、まず7月に全体研究会を立教大学において開催し、本研究における分析枠組みを共有することが行われた。この研究会においては、「政治制度、民族・国際関係、リスク社会・福祉、政治学史」などのそれぞれの観点から具体的なテーマが提示され、それについてお互いに議論を交わすことを行った。その後も、お互いに意見交換を行いながらそれぞれが論文の執筆を行っていった。また、2015年1月には、アメリカから海外研究者を招聘し、本研究のテーマに関する国際研究会を開催した。それによって、本研究課題についての国際的な水準での議論を展開することを行った。その結果、最終年度に世界政治学会(IPSA)において発表を行うためのプランが具体化しはじめた。 しかし、当初の計画にあったインターネットのフォーラムの形成には至っていない。研究代表者や研究分担者間での意見交換に終始したままであり、本研究における議論を広く社会へと発信することはできていない。こうしたインターネット・フォーラムの形成については、次年度の『年報政治学』の刊行を機に、幅の広い研究者たちの参加を進めていくことができるだろう。 以上のことから、本年度の本研究は、「おおむね順調に進展している」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後においては、四つのサブテーマ(1政治制度・政策、2リスク社会・福祉、3民族・国際関係、4政治学史)を四半期ごとの「研究対話アジェンダ」として設定し、インターネット上並びに研究会において集中討議を行い、その議論・小括内容をネット上のフォーラム並びに研究会議に提示して、インターディシプリナリ―なフィードバックを積み重ねる。最終的に、政治学にとっての学術的公共財となるべく成果発信をしていく。 以下のように、テーマ横断的研究会を開催し、科研メンバー外の研究者を含む、内外の関心ある政治学者に開かれた討議の場とする。 1.2015年度に総合的な中間成果発表を予定している。『年報政治学2015-1-政治理論と実証研究の対話』(2015年6月刊行予定)についてのレビュー研究会の開催。 2.外国人研究者を中心とするゲストと、科研メンバーとの間で「政治理論と実証研究の対話」の可能性、問題点、実践などについて、論題提供と意見の交換を行うための国際研究会の開催。 このようにして、これまでの研究成果の上に、さらなる研究対話を積み重ね、研究代表者、各研究分担者はそのフィードバックとして本年度の研究を修正、進展させ、その成果を論文執筆、学会報告、インターネット・フォーラムなどを通じて公表していく。また。2016年度の国際・国内学会発表を目指して参加チームを構成し、世界政治学会IPSA、日本政治学会等に計画的にアプライすることを行っていく。
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Causes of Carryover |
北欧への海外調査を予定していたが,次年度のフィンランドとデンマークでの選挙結果を反映させるために延期になった。また、予定していた海外調査が学会発表となり滞在期間が短くなり、次年度に別の海外での学会発表を行うために、その分を次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
北欧での行われる選挙の結果を踏まえながら海外調査を行うことを予定している。また、海外での学会発表を行うことも予定している。上記の2点が、新たに加えられることになった。
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Research Products
(15 results)