2014 Fiscal Year Annual Research Report
アジア生産ネットワークの深化の要因と日本経済への影響-企業の異質性を考慮した分析
Project/Area Number |
26285058
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
木村 福成 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (90265918)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清田 耕造 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 教授 (10306863)
松浦 寿幸 慶應義塾大学, 産業研究所(三田), 准教授 (20456304)
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (80510255)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アジア経済 / 直接投資 / 企業の異質性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトでは、①海外諸国間の広義輸送費が低下することで、多国籍企業の海外拠点間の生産配置がどのように変化するか(アジア国際分業の深化)、②海外・母国間及び母国内の広義輸送費が低下することで海外・国内拠点間の生産配置がどのように変化するか(国内地域経済への影響)を明らかにすることにある。初年度にあたる26年度では、両トピックともに、まずは背後で作用する理論的メカニズムの整理を行った。具体的には、前者のトピックでは、近年の海外拠点間再配置を最も説明できると考えられる、輸出プラットフォーム型の直接投資モデルを中心に、その理論的整理を行った。後者のトピックでは、海外・母国間の広義輸送費の影響を分析している理論研究を整理しながら、それらの理論モデルに対して母国内の広義輸送費を取り込む作業を行った。また、並行的に、在タイの日系現地法人を対象に、現地調査(ヒアリング調査)を行い、見聞した実態を反映させることで、理論モデルの精緻化をした。最後に、各種データ収集を行った。「アジア国際分業の深化」用のデータとして、「海外事業活動基本調査」と「企業活動基本調査」を、「国内地域経済への影響」用のデータとして、「工業統計調査」と「企業活動基本調査」を、企業レベルで接続させた。また、広義輸送費については、国家間輸送費データとして、関税データの整理を行った。ここでは、最恵国待遇税率のみならず、一般特恵関税や特恵協定税率の整理も行い、近年における関税面での自由化を捉えられるデータを作成した。一方、国内地域間輸送費データとして、「全国貨物純流動調査」から入手可能な輸送単価の整理を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である26年度では、主に「理論的整理」と「データベースの作成開始」が計画されており、両作業ともに順調に進んでいる。前者では、「アジア国際分業の深化」を分析するために、輸出プラットフォーム型の直接投資モデルを整理、拡張した。「国内地域経済への影響」では、複数地域モデルを構築し、海外・母国間の広義輸送費、母国内の広義輸送費の影響を整理しているところである。データベースの作成では、骨格となる企業・事業所統計の整備が完了した。また、国家間輸送費のデータとして関税データの整備、国内地域間輸送費のデータとして物理的輸送費データの整備も完了した。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクト2年目にあたる27年度は、「分析用データベースの作成」および「実証分析の開始」がメインとなる。データベースの構築に際しては、第一に、最新の企業レベルデータを加えることで(2013年度対象)、より近年の企業動向を捉えられるようにする。第二に、これら企業レベルデータと輸送費データを統合することで、分析用のデータセットを作成する。年度の後半には分析結果が出ることを見越し、学会やセミナー、ワークショップ等での報告を行い、分析の精緻化等を行う予定である。また、引き続き、現地調査を行い、企業動向を調べることで、より興味深い実証仮説を増やしていく。
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Causes of Carryover |
当初、こちらから訪問する予定であった海外研究協力者が、カンファレンス参加のため、たまたま来日することになり、現地での打ち合わせを日本国内で済ませることができた。そのため、平成26年中に予定していた海外出張の一部を延期、または期間の短縮を行ったため、予定していた支出額よりも少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度に予定していた海外出張や海外企業へのヒアリングのための費用として使用する。また、順調に分析結果が揃い始めているので、国際カンファレンスでの報告なども前倒しすることも検討しており、そのために支出を行うことも考えている。
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