2016 Fiscal Year Annual Research Report
資金制約下の企業行動:1990年代以降の日本のミクロデータによる実証分析
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26285068
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Research Institution | Research Institute of Economy, Trade and Industry |
Principal Investigator |
後藤 康雄 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員 (00571192)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
照山 博司 京都大学, 経済研究所, 教授 (30227532)
神林 龍 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40326004)
太田 聰一 慶應義塾大学, 経済学部, 教授 (60262838)
関沢 洋一 独立行政法人経済産業研究所, 研究グループ, 上席研究員 (60444098)
溝端 泰和 帝塚山大学, 経済学部, 講師 (60727121)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非正規雇用 / 企業ダイナミクス / パネルデータ / 資金制約 / 同時決定 / 企業の効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
次年度の本プロジェクト研究に向け、以下を行った。 ●活動実績--全体研究会2回、全体進捗管理のための研究会6回(後藤、照山)、その他個別打ち合わせを約30回実施した。 ●活動内容--本研究の基本的な問題意識である企業部門の資金制約と実体経済活動の関係について、以下の具体的な領域に焦点を当てた実証分析を行った。特に①と②は、当初から重視していた企業規模の視点を明示的に織り込んでいる: ①企業部門の雇用、特に非正規雇用の様々な決定要因を検討した上で、パネルデータによる回帰分析を実施、②近年、急速に政策的な関心が高まっている企業部門のダイナミクス(参入、退出、成長)を、資金制約の観点からパネルデータを用いて分析、③企業ダイナミクスの促進という近年の政策的な関心を受け、企業属性等と企業行動の関係性を統計的に解析するためのオリジナル・データの作成に関する専門家をまじえた検討、④企業への公的支援に関する独自データを用いた実証分析の道筋をつけるべく、政策関連部局と連絡・調整、⑤本研究の関心の中核にある金融制約と実体経済活動の連関をマクロ的な視点から捉えるべく、金融環境と経済変動の関係性についての投資・雇用を同時に考慮した時系列分析、⑥公共性を加味した場合の金融と実体経済活動の関係を探るため、公共部門と民間部門の協調体制によるプロジェクト遂行(PFI等)に関する実証分析。 ●主な成果--①企業部門全体や分析対象グループに関する概観やサーベイの結果に基づくDP作成や寄稿、②国際ワークショップにおける国際共同研究の発表、③政策当局をまじえた研究報告会等におけるDPの発表。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
個別作業領域をならしてみれば、おおむね計画通り順調に進展している。 「企業活動基本調査(企活)」を核に据え複数の政府統計を接合する作業については、調査項目や産業分類が異なり、年度によって変遷もある各統計の整合性や接合の意義を、プロジェクト・メンバーおよび関係部署とともに調整、検討してきたところである。その検討の過程で、当初計画の根幹にあった企業規模に応じた統計的差違に強い関心を有する政策当局(中小企業庁等)との関係の緊密化が進み、ヴィヴィッドな政策的関心を反映できるようになったほか、通常の手続きでは入手が困難な政策当局独自のデータを他の統計に接合して利用できる可能性が拓けてきた。また、それを補完する位置づけとして、民間データベース機関等が整備を進めるデータを分析に利用する方向についても、本研究の意義に理解を示す関係者の協力を得て検討を進めている。これらは本研究プロジェクトの意義を、当初計画時には想定できなかった形で飛躍的に高める方向に働きつつある。さらに、本プロジェクトの遂行を通じて得た公式・非公式の人的関係を介して、国境をまたぐ国際共同研究も複数立ち上がっている。 その一方で、当初計画時に想定していた「法人企業統計(法企)」を接合する意義については、検討を重ねるにつれ相対的に薄れてきたのが実情である。平成27年度の段階ですでにその傾向を指摘していたが、かつては内容に乏しかった財務関連の情報が企活において大幅に拡充され、それが定着する形で今日まで続いている。この他にも企活は労働関係の項目や各種コンバーター(親子企業間の接合等)を充実させており、当初計画でメンバーが想定していた接合の意義を、単独の統計として代替しつつある。 以上の状況を踏まえ、限られたリソースのもとで最大の研究成果をあげるため、マンパワー等の配分の適正化を、慎重な検討に基づいて進めているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
全体としておおむね順調に進捗しているため、平成29年度も現在の方向に沿って進めてく方針にある。引き続き「企活」を分析の中核に位置付け、その情報量と関連ファシリティを最大限に活用して実証分析を進めていく。また、政策当局や民間データベース機関の協力を得て、必ずしも当初計画には無かった貴重な分析データを用いた実証研究を行う。 特に平成29年度は本研究プロジェクトの最終年度にあたるため、成果のとりまとめや社会的な発信活動がこれまで以上に重要になる。専門性の高い学術的な成果をあげることは当然として、啓蒙的な性格を持つ発表のチャネルを設けることにも注力する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は本格的に企活の利用を進めたが、企活そのものがその内容やファシリティを充実させており、想定に比べ作業に費やす人件費が少なくて済むこととなった。また、年度当初の方針に沿ってデータ処理に関する補助スタッフを強化したが、見込み以上に支援能力が高かったため、人件費について当初想定していたコストを大幅に下回る結果となった。 その一方で、本プロジェクトの意義を高める方向で得られつつある政策当局等の協力を具体化し、補完するためのデータ作成にかかる費用(独自アンケートの実施等)が見込まれるため、次年度使用額が生じることとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額の主な内訳としては、企業行動の検証にかかる補完データ作成のためのアンケート調査費に100万円、その分析等にかかる物品費(ソフトウエア等)20万円、国際共同研究のための旅費20万円、新規データの整備・加工に関連する新たな人件費20万円を計画している。
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Research Products
(16 results)