2014 Fiscal Year Annual Research Report
看護組織における行動センサ解析を用いたコミュニケーションに関する経営学的研究
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26285089
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
水野 基樹 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 准教授 (20360117)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
水野 有希 東洋学園大学, 東洋学園教養教育センター, 講師 (20450231)
山田 泰行 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (80531293)
芳地 泰幸 聖カタリナ大学, 人間健康福祉学部, 助教 (70736256)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャル・シグナリング / 行動センサ / コミュニケーション・ネットワーク / コミュニケーション・チャネル / 看護組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、病棟内コミュニケーション変数(コミュニケーションの経路、時間、量、場所)を客観的に評価し、医療業務のパフォーマンス変数(協働作業認識、チームワーク、医療安全文化、インシデント数、職務満足度、職業性ストレス等)との関連について統計学的根拠を示すことを目的に、1大学総合病院(産婦人科、26名)、1大学単科病院(精神科、33名)の各1病棟に所属する看護師を対象に行動センサを用いたコミュニケーションの評価(14日間)と医療業務パフォーマンスを評価する質問紙調査が実施された。 B大学単科病院については、看護組織におけるフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション・チャネル、ソーシャル・シグナルに関する解析が行われた。とりわけ、調査期間中の一日当たりのコミュニケーション量と全勤務時間のコミュニケーションの総量を基にしたコミュニケーション頻度に着目し、病棟内の看護師間ネットワークと人間関係に関する分析を実施した。 その結果、精神科病棟のコミュニケーションにおいては男性看護師が管理職、スタッフ看護師の双方に対し強い影響力を有すること、看護師長や主任看護師の重要性と同時にベテラン看護師が重要であることが示唆された。 また、一日当たりのコミュニケーション量に着目した場合、より個々人の緊密な結びつきを示すコミュニケーション・ネットワークが示され、2週間のコミュニケーション総量に着目した場合、人間関係が明瞭かつ如実に浮かび上がることが明らかになった。 行動センサを用いた調査手法を確立し、今後のコミュニケーションの客観的評価に関する研究への先鞭をつけたことに本研究の一定の意義がある。さらには、看護師長や主任看護師など管理職の看護師が、看護組織の活性化に重要な役割を果たすことがコミュニケーション・ネットワークに対する客観的評価により示唆されたことは、コミュニケーション研究の大きな前進である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は当初の研究計画通り、予備調査と1大学総合病院における本調査が実施された。大学単科病院を対象とした予備調査においては、行動センサを用いたコミュニケーションの安全な測定方法および測定バイアスの検討を行った。行動センサの着衣への取り付け方法などにおいて若干の修正があったものの、概ね計画した手法を用いた調査の実施が可能であることが示された。 1大学病院を対象とした調査では、行動センサを用いた2週間のコミュニケーション測定、質問票調査が実施された。当初研究計画においては、キーパーソンに対する半構造化面接調査と多重役割マップ調査が平成26年度中に実施される予定であった。しかし、行動センサにより評価されたコミュニケーション変数の解析においては、解析の視点によりキーパーソンが異なることが明らかになったため、多様な視点からコミュニケーション・ネットワーク、コミュニケーション・チャネルの解析によるエビデンスを蓄積したうえで面接対象者の選定を行うこととした。 平成26年度終了時点において、本研究は面接調査(多重役割マップを含む)を除き、概ね順調に進捗しており、今年度に予定する2度の行動センサを用いた調査の計画も順調に進められている。今年度は予定する2病棟での行動センサによるコミュニケーション評価をつつがなく進めることが第一の課題である。その調査を終了次第、コミュニケーション変数と医療業務パフォーマンスに関するデータ解析、コミュニケーション・ネットワークにおけるキーパーソンとベストチームの特徴を示すためのデータ解析に着手する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画として、1)行動センサを用いた病棟内のコミュニケーション評価と医療業務パフォーマンスに関する質問票調査の実施、2)コミュニケーション変数およびコミュニケーション・ネットワークと医療業務パフォーマンスの関連について統計学的根拠を示すことを目的としたデータ解析、3)コミュニケーション・ネットワークにおけるキーパーソンの特定とその特徴に関する分析、4)医療業務パフォーマンスにおけるベストチームを特定しベストチームのコミュニケーション・ネットワークの特徴に関する分析を予定している。 進捗状況としては、既に2病院2病棟において行動センサを用いた病棟内のフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーション評価と医療業務パフォーマンスに関する質問票調査の準備が進行中である。今後の研究スケジュールについては、1)の調査終了後、コミュニケーション・ネットワークに関するデータを踏まえ、病棟内コミュニケーションにおけるキーパーソンに対する半構造化面接調査を実施する。その後、2)3)4)の各目的に応じたデータ解析を予定している。 研究を推進するにあたり、行動センサによるコミュニケーション評価の調査手法に関する知見は本研究の推進と同時進行的に蓄積される段階にある。医療組織を対象とした介入であるため安全の確保には考え得る限り万全を期しているが、今後も安全の確保を最優先事項に定め、関係各医療機関および各分担研究者とより緊密な連携をしながら研究を推進する。
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Causes of Carryover |
当初、平成26年度の研究計画において、行動センサによるコミュニケーション評価および医療業務パフォーマンスに関する質問票調査の実施後に、病棟内のコミュニケーション・ネットワークにおけるキーパーソンに対する半構造化面接調査と多重役割マップ調査を実施する予定であった。しかしながら、コミュニケーション・ネットワークに関する解析の結果、解析の視点によりキーパーソンが異なることが明らかになったため、半構造化面接と多重役割マップ調査は平成27年度の行動センサによるコミュニケーション評価およびコミュニケーション・ネットワーク解析が終了次第、対象者を選定し実施することとした。それに伴い、対象者に対する謝金の支払いが平成26年度中から平成27年度に変更された。 平成26年度の予算の執行において、大幅な変更点は上記の謝金の支払い時期の変更であり、平成27年度に使用する予算となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
行動センサを用いたコミュニケーション評価および医療業務パフォーマンスに関する質問票調査、コミュニケーション・ネットワークにおけるキーパーソンを対象とした半構造化面接調査および多重役割マップ調査終了時に、対象者に謝金として支払うことを予定している。当初、平成26年度に執行される予算であったが、コミュニケーション・ネットワークに関する解析の結果、解析の視点によりキーパーソンが異なることが明らかとなり、半構造化面接調査および多重役割マップ調査が平成27年度に予定する調査終了後に実施されることとなった。それに伴い、対象者への謝金の支払いが平成27年度に変更された。 平成27年度早々に2病院2病棟において調査を実施する予定である。調査終了後、直ちにコミュニケーション・ネットワークの解析を行い、キーパーソンへの半構造化面接調査を実施する。全ての調査が終了した時点で次年度使用額として残る予算を執行する。
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Research Products
(1 results)