2015 Fiscal Year Annual Research Report
階層問題としての団地高齢化の構造解析-計量分析とアクションリサーチの適用
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26285125
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
与謝野 有紀 関西大学, 社会学部, 教授 (00230673)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 直保子 関西大学, 社会学部, 教授 (00302654)
江川 直樹 関西大学, 環境都市工学部, 教授 (20388416)
高瀬 武典 関西大学, 社会学部, 教授 (90187956)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 団地 / 高齢化 / 世代間格差 / 階層 / 社会調査データ / 内容分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、団地高齢化問題の対象地域として設定した河内長野市・南花台団地での調査票を用いた調査の実施が主たる課題となっていた。この課題に対して最大の効率を上げるべく、大阪府、河内長野市の担当部署と綿密な連携を図り、府および市が推進するスマートエイジングシティ構想について情報収集しながら、地域の基礎的な情報を収集し、調査計画を策定した。また、市の調整により、対象地域の自治会との間でも意見交換会を実施し、約3500世帯のうちの1割にあたる350世帯からの調査票回収を目指して、協力率の上昇に向けて検討を続けた。また、サンプリングに当たっては、河内長野市の協力のもとに世帯サンプリングを効率的に行い1000世帯を抽出した。 調査票の作成については、研究代表者、研究分担者の間で密な連絡をとり、さらには、府、市から地域の実情にあわせられるよう示唆をもらいながら設計した。 2月下旬から3月上旬にかけて実査を行い、結果、当初予測を大きく上回る73%(730世帯)からの回答を得ることができた。回答については、若者世代が多い集合住宅においても6割を超えており、昨今の調査票をもちいたランダムサンプリングによる調査として特段に高い回収率を実現できた。これらは、府、市、地元自治会と意見交換しながら、地域の人々が回答しやすい設計を実現できた成果と考えている。 この調査データについては、3月中にデジタルデータ化されており、28年度から当初予定の通り、統計解析などに掛れるようになっている。 この調査とは別に、集合住宅に住む子育て期の女性から詳細な聞き取りを行っている。この中には、今後の課題解決モデル策定のための重要な基礎となる新規情報が多々含まれている。これらについても、すべて個人情報に最大に配慮した形でテキストデータ化されており、28年度から内容分析支援ソフトを利用して分析できるようになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
対象とする団地からどのように情報を引き出せるかが、本研究の最大の課題であり、昨今の調査環境から、調査票を用いた調査で5割の回収率を目標として設定し、また、詳細な聞き取り調査では、個人の生活状況、生活意識に踏み込んだ回答までは得られないものとの想定で当初予定のとおり研究を開始した。 しかしながら、地域住民との意見交換、行政との連携から当初予想以上の成果が得られ、昨今の調査としては特段の回収率の高さ(73%)を得、かつ、回答の質も極めて高いものが得られた。さらには、詳細な聞き取り調査では、母親世代が抱える悩み、地域への要望などがかなり詳細に得られており、この点でも期待以上の成果があったといえる。 また、調査票調査についてはデジタルデータ化が完了しており、また、詳細な聞き取り調査についてもデジタル化が年度内に完了している。また、後者のデータを解析するための補助ツールの開発も予想以上に進展し、形態素解析、構文解析ソフトを援用し、さらに同義語辞書を組み込んだ解析支援ソフトを開発することができた。 これらは、研究者間の連携、外部との連携が予想以上に効率的に進んだ結果であり、当初の計画を超えて、28年度に向けた準備が完成しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究の推進、当初予想より進んでいることから、この進展をさらに加速させるような形で内外の連携を進めていく。 内部の連携としては、特に方法的な展開として、社会学分野で稀有な事例となる自己組織化マップの利用、文単位の類似性を識別するソフトの利用などで研究会を頻繁に開催し、当初の想定以上に方法的高度化、先進方法の開発を進めていきたい。 また、平成27年度に得られたデータは、地域の構造をよく把握できるような代表性をもったものと想定できるため、これらについて、先進的な手法を即時に適用していく。 また、府と市が持っているスマートエイジングシティ構想とは、相互刺激的な展開を目指し、本研究が社会的な意義の高いものとして、学会内、学術専門研究者集団内に閉じこもることなく、社会に研究成果を還元できるよう積極的工夫と意識をもって研究を推進する。 社会科学が、国全体にかかわるような少子高齢化、世代間格差と世代間分断の問題に対して、解決策を提示できることを広くアピールできるような研究推進体制を構築し、代表者、分担者ともに、そのような意識をもった研究を行う。
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Causes of Carryover |
27年度の主事業である質問紙調査について、大阪府、河内長野市と実施方法について詳細な打ち合わせを行った結果、実査の開始が2月となり、また、データとしての納品が3月末となった。当初は、回収実績と回収結果に合わせて追加調査等を検討していたが、回収実績が良好であり追加調査を今年度中に行う必要がなくなったこと、また、データの納品が3月末となり、データのないように合わせたデプスインタビューの実施を次年度に実施せざるを得なくなったため、次年度使用額が生じている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度の5月中に、府、市と共同での研究会を行い、27年度に納品された調査データの統計分析結果について検討する。この検討結果を踏まえて、27年度に行ったURの子育て中の主婦層調査に加えて、9月までに、戸建て住宅の高齢者層の詳細な聞き取り調査を実施するが、その調査補助謝金および、テキストデータ化の費用に利用する。 さらには、テキストデータ化されたものについて、構文解析、形態素解析をおこなう内容分析ソフトウェアによって内容分析を進めるが、その内容分析ソフトウェアを10月までに開発し、その開発費として用いる。
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