2014 Fiscal Year Annual Research Report
人口転換の現代的解析に基づく新たな人口潮流とライフコース変動に関する総合的研究
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26285128
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
金子 隆一 国立社会保障・人口問題研究所, 副所長 (30415814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斎藤 修 一橋大学, 経済研究所, 名誉教授 (40051867)
高橋 重郷 明治大学, 政治経済学部, 教授 (00415829)
原 俊彦 札幌市立大学, デザイン学部, 教授 (00208654)
稲葉 寿 東京大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (80282531)
石井 太 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 部長 (50415816)
佐々井 司 国立社会保障・人口問題研究所, 企画部, 第4室長 (30415830)
岩澤 美帆 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 第1室長 (50415832)
是川 夕 国立社会保障・人口問題研究所, 人口動向研究部, 研究員 (40603626)
鎌田 健司 国立社会保障・人口問題研究所, 人口構造研究部, 研究員 (70574200)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 人口転換 / 出生 / 死亡 / 移動 / 人口統計 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、わが国で先行し世界的・歴史的な潮流となりつつある人口高齢化と人口成長の終焉をもたらした第一と第二の人口転換(近代化に伴う多産多死から少産少死への変化とその後の長寿化、少子化、および経済の国際化にともなう人口移動流の変化)について、その進展のメカニズムならびに経済社会変動との関係を解明し、それらの知見により今後のわが国の人口動向、ライフコース変容、経済社会変化に関する中長期的展望を得ることである。そのために近年急速に蓄積と利用が拡大している国際的人口統計データベースHuman Mortality Database(HMD), Human Fertility Database(HFD) 等を駆使し、シミュレーション分析や空間分析手法(GIS等)により人口転換に伴う近代化の歴史的展開を把握するとともに、ポスト近代の社会に特有な諸現象(個人主義化、ジェンダー役割の変化、各種格差の顕在化と階層化、生き方の多様化・多元化など)との関連を明らかにすることを試みた。その結果、現在先進諸国で広く見られる人口成長終焉ないし人口減少および人口高齢化は人口転換に続く必然的な過程と捉えられ、新たな経験法則の理論化が可能であり、また必要であることがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトの先行事業(科研プロジェクト「第一、第二の人口転換の解明に基づいた人口・ライフコースの動向と将来に関する研究」)から引き継いだ研究として、まず現在まで続く人口転換過程の捉え方に関する現在の学説を整理した。大きくは3つ有り、人口転換は終了し現行の人口変動は一時的とみるもの、第二の新たな転換が開始されたとみるもの、現在の変動は転換後のレジームであるとみるものである。どの立場を取るかによって今後の展望が異なる点が重要である。次にワールドモデルによる解析ではわが国の少子化は女性高学歴化による晩婚化の影響が大きいことが示された。また先行研究から続く第2の人口転換期(ポスト人口転換期)における日本の死亡パターン変化の特異性に関する研究では、女性超高齢期の死亡率改善が従来の死亡モデルでは十分に表現できないことが明らかになっており、今回その特異パターンが欧州などの長寿国にも見られるのかについて検証を行った。結果、仏等で一部似たパターンが見られるもの、基本的に日本は独自のパターンを持つことがわかった。これは今後の寿命改善を見通す上で重要な意味を持っており、死亡最頻値年齢の分析や死因統計等によりその原因を分析中である。また、出生については、人口転換過程を通して出生順位別出生構造の国際比較が重要性であることがわかってきたが、わが国では1930年代以前に生まれた女性コーホートについてこの統計が得られない。これはその後の年次別年齢別出生率を左センサリングされたコーホート別出生率と見ることで推計することに取り組んでおり、転換過程の出生率変化がより正確に把握されることが期待できる。また理想子ども数・予定子ども数などでみた子どもの需要のコーホート分析ではそれらが人口転換過程を通して減少しており、とりわけ少子化を主導した60年代生まれで需要の低下がみられた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の研究成果を踏まえ、本年度はそれらを展開させることによって人口転換過程についての理解を深める。人口転換過程を記述、再現するための複数のタイプのシミュレーションモデルの開発を進め、これまでに得られた転換過程に関する知見の検証を行う。マクロモデルとしては、まず出生低下の拡散伝播を検証するために感染症モデルを応用したモデルを作成し数理的な分析を行う。またワールドモデルを用いて女性のライフリスク・コストに着目した家族戦略の人口転換における役割を検証する。さらに人口動態モデルによって、出生・死亡変動のタイミングやペースの違いなどによる人口転換過程とその帰結の違いを明らかにし、各国の経験に照らして人口転換過程の類型化を試みる。さらにエージェント型マイクロシミュレーションにより人口転換過程における複雑な要素間の因果関係の把握に努める。また、社会経済変動との関連をより深くさぐることを目指し、たとえば長寿化の社会経済に対する詳細な帰結などについて従来論じられていない事項を中心に検討する。また、ジェンダー役割の変化の出生力への影響を、子どもへの期待という新たな視点から検証する。すなわち進学期待の男女児差などがどのように規定されているのかを実地調査の出生歴データを用いて明らかにする。さらに人口転換理論に国際人口移動の視点を組み入れることを目指す。これまでの転換理論では国際人口移動が正規の要素として論じられることは主流ではなかったが、国際移民の流入とこれにともなう出生力変動や社会問題の発生といった社会変動は、人口転換プロセスの進展による必然的な帰結と見ることができる(ゼリンスキーなど)。ここでは国連のデータベース等、近年整備が進みつつある国際移動データにより、わが国を中心とした人口移動転換理論の実証を試みる。これら各研究は人口転換過程の理解と展望を得るため、体系化を念頭に進められる。
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Causes of Carryover |
平成26年度に実施を予定していた推計データ整備に関する作業を27年度に行うことにしたため、それを可能とするように一部の研究費を平成27年度に持ち越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に、推計データの整備、加工や集計の謝金、研究成果のための研究資料の購入等に当てる計画である。
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Research Products
(25 results)