2015 Fiscal Year Annual Research Report
教育政策における首長関与の強化とその影響に関する理論的・実証的研究
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26285180
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Research Institution | Hokkai-Gakuen University |
Principal Investigator |
荻原 克男 北海学園大学, 経済学部, 教授 (70242469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 祐介 東京大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (00423434)
橋野 晶寛 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (60611184)
川上 泰彦 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (70436450)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育委員会 / 教育政策 / 首長 / 地方教育行政法 / 教育ムラ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究成果としては,大別して以下の2つの柱にまとめられる。 第1は,2015年4月から施行された改正地方教育行政法のもとでの自治体教育行政の展開について検討を行ったことである。昨年度は地方教育行政法の法制上の改変が主な検討対象であったが,今年度は法施行後の現実的な変化の有無や,変化の度合いについて研究を行った。その結果,改正法律上は首長の権限が拡大したことは明らかであるにもかかわらず,現実にはそれに照応するほど大きな変化は観察されなかった。むしろ依然として,首長と教育長との良好な連携関係が重視され,現実的にも概ねそのように運営されている自治体が大半を占めていた。ただし,首長(政治)と教育委員会との距離が以前よりも接近している傾向も伺え,この点では教育(行政)の政治に対する独立性が弱まっている可能性も示唆された。さらに,教育の「独立性」を評価する上で,法制度レベルだけでなく,公務員としての教職員集団の存在も重要な要因であることが示唆された。 第2は,首長自身の選好に基づく直接的な関与とは異なる形で,教育政策への政治的影響力が強まっていることである。これまで首長による教育政策への関与としては,教科書採択,教員評価制度あるいは学力テスト結果の公表などをめぐる首長と教育委員会の対立に注目が集まってきた。しかし他方,児童・生徒数の減少,自治体財政の逼迫などを背景とした,学校統廃合や教職員配置の見直しが多くの自治体で問題となっている。これらは,首長の政治選好が直接教育政策を左右するという次元とは異なる,より広い意味での政治的影響力による教育政策変化であり,しかも一部の「教育首長」だけでなく,全国各地の自治体に共通する課題として現れつつあることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第1に,2014年に大幅改訂された地方教育行政法の下で,教育委員会制度がどのように変化した(しなかったのか)について,戦後の教育委員会制度の歴史過程のなかに位置づけて検討を進めたこと。 第2に,改正地方教育行政法が2015年に施行されて以後の自治体教育行政の変化を追跡することによって,一定の知見を得ることができたこと(同法の制定当初に指摘されていた予想や懸念が,少なくとも現時点では現実化しているとは言えないこと等)。 以上から,研究はおおむね順調に進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第1に,今年度に引きつづき,改訂地方教育行政法下における自治体教育行政の変化について観察・検討を進める。今年度の研究は法施行後の約1年間足らずの期間の観察にとどまっている。現時点で把握された特徴が今後とも持続するのか,それとも新たな変化をもたらすのか,今後とも継続的研究が必要である。 第2に,首長(政治)による教育への関与という問題を,教育(および教育行政)の独立性という視点からも研究することである。さらに,教育(および教育行政)の独立性を規定する要因として,公式の行政制度のみでなく,教職員集団の存在とその属性といった他の諸要因をも踏まえて再検討を行う。
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Causes of Carryover |
・コンピュータなどの物品費や,図書費の使用が想定よりも少なかったこと。 ・研究分担者間での打合せや検討会を定期的にもつ予定であったが,各人の都合が合わないことが多く,想定したとおりの研究成果交流を実施することができなかったこと(共通する学会への出席機会を使って打合せを済ますことがほとんどになってしまった)。4人全員が都合のつく日程を探そうとした結果であるが,より現実的な対策を考慮する必要があるだろう。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・今年度は内外の研究文献を体系的に整備するため,図書費の使用を増やす予定。 ・分担者間の研究打合せ会の持ち方を見直し,一部のメンバー間だけでも可能な限り交流の機会を設定できるようにする。各人ともに自分の職場での(中間)管理業務が増加しており,この状況は今後も継続する(より強まる)ことが予想される。こうした状況では,全員が揃う日程を調整しようとすることはあまり現実的とはいえない。そこで,4人全員が揃わなくても2人ないし3人であっても,交流の機会を持つように努める。なお,隣接する他分野の研究者を招いての小さな研究会やヒアリングも随時設定することとする。
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Research Products
(8 results)