2018 Fiscal Year Annual Research Report
日本型授業研究の独自性とその再文脈化に関する開発研究
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26285182
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Research Institution | Tokai Gakuen University |
Principal Investigator |
的場 正美 東海学園大学, 教育学部, 教授 (40142286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金津 琢哉 東海学園大学, 教育学部, 教授 (20633522)
小林 宏己 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (30302904)
久野 弘幸 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 准教授 (30325302)
倉本 哲男 愛知教育大学, 教育実践研究科, 教授 (30404114)
安達 仁美 信州大学, 学術研究院教育学系, 准教授 (30506712)
サルカルアラニ モハメドレザ 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (30535696)
副島 孝 愛知文教大学, 人文学部, 教授 (30593107)
坂本 篤史 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (30632137)
田上 哲 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (50236717)
大野 栄三 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (60271615)
深澤 広明 広島大学, 教育学研究科, 教授 (70165249)
柴田 好章 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (70293272)
杉本 憲子 茨城大学, 教育学研究科, 准教授 (70344827)
吉田 成章 広島大学, 教育学研究科, 准教授 (70514313)
田村 知子 大阪教育大学, 連合教職実践研究科, 教授 (90435107)
原 宏史 東海学園大学, 教育学部, 教授 (90524489)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 教育学 / 授業研究 / 授業分析 / 再文脈化 / 表象 / 思考体制 / ツール / 理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の研究目的は、次の課題の解明である。1.重点研究:これまでの成果を集約し、授業研究の背後にある理論に焦点を当てて、日本型授業研究の独自性の多様性と共通性を明らかにする。2.到達目標:これまでの研究成果を総合的に検討し、授業研究の理論、方法、ツール、実践レベルにおける独自性を解明する。3.到達目標:独自性の評価を諸外国の授業研究者の評価によっておこなう。 成果1:分析事例は、1)分析対象となる学校の研究史の整理(教育史的アプローチ)、2)学校の研究体制などの視点から分析(教育実践的アプローチ)、3)教育哲学的なアプローチから実践の背後にある授業観、人間観などの意味を解明するアプローチが必要になる。そして、4)整理された資料を価値中立的に他のさまざまな教育活動との関連の中で検討(教育社会学的・量的アプローチ/解釈学的アプローチ)することで、分析事例の特徴が明確になる。成果2:授業研究を、①授業改善の授業研究、②教師の資質向上の授業研究、③教育学的知を形成する授業研究の3類型に区分し、授業研究の段階を1)計画、 2) 実施、3)観察、 4) 協議、5) 反省、6) 改善、7)報告の7段階に分け、各類型の段階毎の特徴を明らかにした。成果3:重点研究の成果:授業計画案、授業記録と教師の反省(インタビュ調査)を資料として、授業計画に関する教師の思考体制ないし表象を明らかにした結果、「正と反」、「拮抗の状況」、など教師の使用する概念の背後に、上田薫の概念である「視野」、「正対」があることが分かった。成果4:到達目標である全体的解明では、教育効果を測定する諸外国のツールに対して、日本の授業研究のカルテ、座席表などのツールは子ども理解に特徴がある。 しかし、諸外国の研究者からの評価による理論や文化的スクリップトは十分に解明できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
授業研究の理論、方法、ツール、実践レベルにおける日本型授業研究の独自性を解明することが、最終目的である。ツールのレベルにおいては、諸外国の授業研究と比較して、日本の授業研究では、例えば、子ども理解のツールとしてある特定の学校においては、「座席表」、「カルテ」と呼ばれるツールを用いて、子どもの個別の関心、視点、経験、蓄積された知識、などが把握されている。また、実践レベルにおいては、それらのツールを生かして、「座席授業案」を用いた授業計画が授業研究に位置づけられているなど、他の諸外国と比較して、日本の独自性が見られる。 一方、授業研究の理論においては、諸外国の理論がアクション・リサーチやエンゲストロームのバリエーション・セオリーなどを理論的基礎にしていることは,解明できた。しかし、初志の会に見られ授業研究は、上田薫の動的相対主義の方法と理論に実践の基礎があることを指摘できるが、その理論的基礎と想定される哲学(西田哲学)との類似性と相違性が解明できていない。 さらに、現在、ドイツでBildungをキー概念とした人間形成が授業研究に組み込まれているが、その基礎理論となる批判哲学と日本の1つの独自性を示す授業研究の理論(西田哲学)の類似性や相違性の考察ができなかった。 日本型授業研究の独自性を解明する段階と可視化のレベルの全体構造を作成できたが、理論的レベルの解明が十分になされなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今度の研究推進方策として、以下の方策をとる。 1.研究期間を1年延長する。すでに延期が認められている。 2.延期の期間に、上田理論に見られる西田哲学の影響を解明する。 3.上田理論による実践事例を分析し、上田理論がどのように授業研究のどのレベルに反映しているかを解明する。 4.以上の解明を通して、1)授業研究の段階を区分(可視化レベルでの区分)して、その区分レベルにおいて、日本型授業研究の独自性を全体的に解明したい。
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Causes of Carryover |
第1の理由は、民間教育団体の研究者などが2018年度に逝去され、聞き取り調査ができなかったことである。第2は、日本型授業研究の独自性を理論レベルにおいて十分に解明できなかったことである。第3は、国際学会発表の準備を進めてきたが、完成までいたることがなく未発表であったことである。 一年間の期間延長をして、十分な時間を掛けて、インタビュー調査と理論レベルにおける外国の研究者へのインタビュー、そして、国際学会での発表をしたい。未使用の残額は、インタビュー調査と学会発表に使用する計画である。残額が少ないので、国際学会に関しては本研究からは参加費を支出し、旅費等は大学の研究費などで支出する予定である。現在、3件の発表を計画している。
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Research Products
(12 results)