2015 Fiscal Year Annual Research Report
多世界パラダイムに基づくわり算概念の構成過程に関する理論的・実際的研究
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26285205
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Research Institution | International Pacific University |
Principal Investigator |
中原 忠男 環太平洋大学, 教育学部, 教授 (90034818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡崎 正和 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (40303193)
山口 武志 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (60239895)
影山 和也 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60432283)
前田 一誠 環太平洋大学, 教育学部, 准教授 (90757634)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 算数教育 / わり算 / 調査問題 / 暗黙のモデル / 構成主義 / 社会文化主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度においては、主に「調査問題を用いた子どものわり算概念の実態の解明」を目的として、次のことに取り組んだ。 1.開発した調査問題による予備調査の実施・分析と調査問題の最終版の作成:予備調査は5年生、6年生、中学1年生について各1クラスで5月に行った。分析の結果、大きな問題点はなかったが、表現や数値、問題の順序等に改善した方が良い点が見いだされた。それらを精緻に検討して調査問題の最終版として、Aセット、Bセットを完成させた。 2.最終版の調査問題による本調査の実施:本調査は、岡山、広島、鹿児島の各県において、小学5年生、6年生、中学1年生、合わせて約1300人を対象として7月に実施した。 3.調査結果の分析・考察:調査結果は大きく、「全体的様相」「等分除とその拡張」「包含除とその拡張」「倍に関わるわり算」に分けて、分析・検討を行った。まず、全体な様相として、わり算概念は「整数→小数→分数」の順序で構成されていくことが確認された。これは今日の指導の順序でもあり、当然の結果でもある。また、「大きい数÷小さい数」「先に出てくる数÷後にでてくる数」「商は被除数よりも小さい」などの暗黙のモデルの構成も指摘された。「等分除とその拡張」については、「大÷小」で立式する子どもが中学1年生でもおよそ40%存在することや「÷分数」は6年生と中学1年生の正答率にあまり差がないとなどが明らかとなった。整数の包含除については大きな問題点は見いだされなかったけれども、倍に関わる多くの問題において正答率が50%~60%であることが指摘された。また、正答率が低い問題は中学1年生においても改善されていないことも示された。 今回の調査結果は、わり算の指導に大きな問題点があることを改めて浮き彫りにするとともに、各個人が構成した誤りを含む暗黙のモデルが中学生になってもなお修正されていないことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究はほぼ平成27年度の計画通りに進んでいる。強いて言えば、「倍に関わる問題」に関して予想以上に大きな問題点があることが明らかになり、これの実態の更なる分析、その対応策の検討に今後力を入れることが重要と考えている。 倍に関わる子どものわり算概念に大きな問題があるのは、主として現行の指導要領において、倍に関わるわり算の指導が体系的に示されていないことによると考えられる。そのために、その指導は教科書や教師によってかなりまちまちになっている。また、体系性のある有効な指導方法も確立されいない。倍に関わるわり算は基準量が何かを見つけ出すことが一つのポイントであると考えられるので、それを着眼点として、次年度にさらに考察を深めて行くこととしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はほぼ予定通りに進んでいるので、本研究の最終年度である平成28年度においては、先に提出した交付申請書に記載している研究実施計画書に基づいて、研究を着実に推進することが重要と考えている。 すなわち、①平成27年度の調査において大きな問題点があることが明らかとなった「倍に関わるわり算」についてさらに精緻な分析・検討を進めること、②わり算の構成過程のポイントとなる指導内容についての授業実践に取り組むこと、③研究を総合的に考察して、子どもによるわり算の構成過程を解明すること、④それらに基いて、わり算の指導原理を導き出すこと、に取り組む。 なお、最終年度は授業実践を主要な研究方法としているけれども、それを補完するためにわり算の構成過程の微妙な点にに関しては、子どもへのインタビューも実施したいと考えている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は主に下記の2つである。 一つは、27年度予算として調査問題の岡山での印刷を考え、印刷費を計上していたが、これについて、カラー印刷を抑えたり、広島や鹿児島での印刷を検討した結果、広島で予定より安く印刷できることが分かり、8万円程度の節約ができた。 もう一つは、予定していた関東地区での学会や研究会に公務等の都合で2回ほど出席を見送ったことで旅費についても約12万円の残が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については、大きく次の2つに使用する。まず、平成28年度は、本研究の最終年度であるので研究者による研究協議の場を当初よりも多く開催する。それは研究者の全員による会やグループごとの会である。研究代表者である中原はそうした会にできるだけ出席することを予定している。そのための旅費に使用する。 また、研究成果は基本的には学会で発表し、論文としてまとめていくことを考えている。しかし、調査結果や授業記録などはそのすべてを学会等で発表することは難しい。他方でそれらは、貴重な資料になるものもあるので、そうしたものを整理して報告書を作成することを考えている。そうした経費にも使用する。
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Research Products
(4 results)