2014 Fiscal Year Annual Research Report
可視広視野多チャンネル偏光撮像装置の開発とSGMAPの推進
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26287031
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川端 弘治 広島大学, 宇宙科学センター, 准教授 (60372702)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 光赤外線天文学 / 宇宙物理 / 宇宙科学 / マイクロ・ナノデバイス / 偏光 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、前年度に設計が進められたメイン光学トレインの仕様に見合った広帯域半波長板、偏光ビームスプリッタ、及びダイクロイックプリズムの設計を行った。 半波長板については、実績の高いPancharatnum型無色半波長板1ケを全3バンド(g'r'i')共通で用いる方針で検討した結果、直径160mm(有効径150mm)のもので、入射角補償板を貼り合わせることにより、波長380-900nmに亘り位相差が180±3°で、許容入射角±7°、透過率80%以上を達成できることが判った。さらに、通常のPancharatnum型半波長板で用いられる水晶とフッカマグネシウムの組み合わせでは全厚が45mm程度必要であるのに対して、水晶とサファイアの組み合わせではこれらの仕様を満たした上で全厚が半分程度で済む可能性が高く、コスト的にも有利であることが判った。 偏光ビームスプリッタについては、誘電体多層膜を用いたものと、微細ワイヤーグリッドを用いたものとで実現性を検討した。誘電体多層膜については様々な膜設計シミュレーションを行い、入射角範囲内で偏光能率が5-10程度のものは達成できる見込みがあるものの、目標とした50を超えるものは実現が相当困難であることが判った。もう一つの候補であるワイヤーグリッドを用いたものについては、性質上、許容入射角が広いことから有力な候補ではあるものの、キューブ型プリズムタイプの試作は予算の都合上断念し、次年度に持ち越すことにした。 ダイクロイックプリズムについても光学シミュレーションを実施して設計を進めた。本広視野装置においては視野位置によってバンドの有効波長域が最大20nm程度シフトするが、これを許容するか、それとも観測帯域の設定を変えて乗り切るかは、SGMAP計画によるサイエンスとも照らして、次年度にさらに検討することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、広帯域半波長板の光学設計を進めること、偏光ビームスプリッタについいてワイヤーグリッドを用いたものと誘電体多層膜を用いたものとで検討を進め、ワイヤーグリッドを用いたものについては試作品を作成すること、ダイクロイックプリズムについては膜設計を進めることを平成26年度の研究実施計画とした。また、データリダクション・パイプラインの整備に取り掛かることも挙げている。 このうち、広帯域半波長板の光学設計については、研究実績の概要の項でも述べたように大きな進展があり、Pancharatnum型の無色半波長板で有効径150mmのものが実現可能であること、さらにフッ化マグネシウムの代わりにサファイヤを用いることで全体の厚みが半減し、コスト的にも有利であることが判った。このような大型の無色半波長板は、将来の大望遠鏡に取り付けられる偏光装置の実現性を高めるもので、大きな進展と考えている。 偏光ビームスプリッタやダイクロイックプリズムについても、多層膜シミュレーションを行い、期待される性能の評価が進んだ。偏光ビームスプリッタについては、偏光能率5-10は達成できるものの、それ以上は難しいことが判った。ワイヤーグリッドタイプの偏光プリズムは、製作可能性について国内メーカーを当たってみたが候補が見つからなかったため、平板型のビームスプリッタで実績のある海外のメーカーにコンタクトし、試作について検討した。ただしコスト的に見合わなかったため、基金の一部を次年度に持ち越して、平成27年度に試作を行うことにした。データリダクション・パイプラインについては、その一部といて、超新星の偏光測定データをリダクションするプログラムの開発を進めた。 以上の状況から、おおむね順調に推移していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度以降は、偏光ビームスプリッタとダイクロイックプリズムの膜設計を詰めるとともに、ワイヤーグリッドタイプの偏光ビームスプリッタの試作を行い、光学特性を評価すること、及び偏光データリダクションパイプラインの開発を目標とする。 偏光ビームスプリッタは、複屈折性結晶材を用いたタイプに加え、誘電体多層膜を用いたタイプでもこのような大きな有効径を持つ垂直ビームスプリッタの実現はほぼ不可能であることが判ったことから、近年のナノテクノロジーの進展で実用化が進んでいる微細ワイヤーグリッドを用いたものが第一候補となっている。このワイヤーグリッドを、キューブ型プリズムの界面に実装して、入射光のうちある方向の直線偏光成分を透過し、それと垂直な方向の直線偏光成分を90°反射するような構成となる。このようなプリズムの試作を行って、その偏光分離特性や透過・反射光の効率と波面精度を評価して、SGMAPの広視野偏光観測に対する仕様に見合った特性が得られるかどうかを確認する。 ダイクロイックプリズムについては、入射角が±10°ずれることによる分離波長シフトの効果が少なくなるような膜設計及び光学素子(バンドフィルター)との組み合わせを検討しながら設計を進める。 また、これらの光学素子の開発と並行して、既存の可視赤外線同時カメラHONIRと広島大学1.5mかなた望遠鏡を用いて、SGMAPを模した試験的サーベイ観測を行う。現在開発途中となっているデータリダクションパイプラインの開発を進め、効率の高い観測研究を進める環境を整える。
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Causes of Carryover |
ワイヤグリッドタイプの偏光ビームスプリッタの2分の1サイズの試作を行う予定であったが、まず国内の複数の偏光素子メーカーとコンタクトして製作可能性について協議したが、難しいことが判った。そこで、平板型のワイヤグリッドタイプ・ビームスプリッタで実績のある海外のメーカーにコンタクトし、試作について検討した。ただしコストが見合わなかったため、基金の一部を次年度に持ち越して、次年度に予定していた、より大きいサイズのものの予算と合算して、試作を行うことにした。以上が次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に持ち越した100万円余りを合算し、300万円を予算としてワイヤーグリッドタイプの偏光ビームスプリッタ(垂直分散型プリズム)を試作して、偏光能率や透過・反射効率、透過光・反射光の波面収差などの基本的な光学特性を評価する。サイズについては、メーカーと協議して最終版の2分の1以上(60mm立方以上)で最適なサイズを決定する予定。
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[Journal Article] The Broad-lined Type Ic SN 2012ap and the Nature of Relativistic Supernovae Lacking a Gamma-Ray Burst Detection2015
Author(s)
Milisavljevic, D., Margutti, R., Parrent, J. T., Soderberg, A. M., Fesen, R. A., Mazzali, P., Maeda, K., Sanders, N. E., Cenko, S. B., Silverman, J. M., Filippenko, A. V., Kamble, A., Chakraborti, S., Drout, M. R., Kirshner, R. P., Pickering, T. E., Kawabata, K., ほか(計23名中17番目)
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Journal Title
Astrophysical Journal
Volume: 799
Pages: 51 (14 pages)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Optical and Near-infrared Polarimetry of Highly Reddened Type Ia Supernova 2014J: Peculiar Properties of Dust in M822014
Author(s)
Kawabata, K. S., T.Akitaya, H., Yamanaka, M., Itoh, R., Maeda, K., Moritani, Y., Ui, T., Kawabata, M., Mori, K., Nogami, D., Nomoto, K., Suzuki, N., Takaki, K., Tanaka, M., Ueno, I., Chiyonobu, S., Harao, T., Matsui, R., Miyamoto, H., Nagae, O., Nakashima, A., ほか(計49名中1番目)
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Journal Title
Astrophysical Journal Letters
Volume: 795
Pages: L4 (5 pages)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Variable optical polarization during high state in gamma-ray loud, narrow-line Seyfert 1 galaxy 1H 0323+3422014
Author(s)
Itoh, R., Tanaka, Y. T., Akitaya, H., Uemura, M., Fukazawa, Y., Inoue, Y., Doi, A., Arai, A., Hanayama, H., Hashimoto, O., Hayashi, M., Izumiura, H., Kanda, Y., Kawabata, K. S., Kawaguchi, K., Kawai, N., Kinugasa, K., Kuroda, D., Miyaji, T., Moritani, Y., ほか(計38名中14番目)
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 66
Pages: 108 (8 pages)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Kiso Supernova Survey (KISS): Survey strategy2014
Author(s)
Morokuma, Tomoki, Tominaga, Nozomu, Tanaka, Masaomi, Mori, Kensho, Matsumoto, Emiko, Kikuchi, Yuki, Shibata, Takumi, Sako, Shigeyuki, Aoki, Tsutomu, Doi, Mamoru, Kobayashi, Naoto, Maehara, Hiroyuki, Matsunaga, Noriyuki, Mito, Hiroyuki, Miyata, Takashi, Nakada, Yoshikazu, ほか(計59名中32番目)
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Journal Title
Publications of the Astronomical Society of Japan
Volume: 66
Pages: 114 (16 pages)
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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