2015 Fiscal Year Annual Research Report
大規模数値計算サーベイによる天体衝突破壊モデルの構築
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26287101
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
田中 秀和 北海道大学, 低温科学研究所, 准教授 (00282814)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 浩二 千葉工業大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (10396856)
小林 浩 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (40422761)
玄田 英典 東京工業大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (90456260)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 惑星形成 / 天体衝突破壊 / エネルギー散逸機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、高解像度な天体衝突の数値計算を大量に実行しパラメータ空間をサーベイすることで、統一的かつ精度の高い天体衝突破壊モデルを構築することである.27年度は以下の2つの結果を得た。 (1) 初年度の結果より、大規模破壊における破壊結果は平面衝突でのクレーター破壊からの外挿とずれていること、そのずれは曲率の効果で説明できることが示された。この結果は衝突天体2体の正面衝突の計算によるものであったので、本年度はまずは斜め衝突について調べた。その結果上記のずれは角度に強く依存することが分かった。正面衝突では破壊しやすいようにずれるのに対し薄い角度で衝突した場合には逆に破壊が妨げられる方向にずれるのである。この斜め衝突におけるずれは衝突天体の一部を削り取るように破壊するためであり、やはり曲率の効果で説明できる。このような衝突角度依存性をも含た大規模破壊におけるずれの効果について論文にまとめている段階である。 (2) 初年度の結果より、衝突時におけるエネルギー散逸機構が衝突破壊結果に強く影響を与えることも分かってきた。本年度はエネルギー散逸機構について調べ方針を立てた。エネルギー散逸機構としては脆性破壊の効果と天体内部空隙の効果が重要である。これらのエネルギー散逸効果はメッシュ流体計算法において発達している。オープンソースコードのiSALEを用いて天体衝突の予備的計算を行った。iSALEコードは上記のエネルギー散逸過程を記述できるようになっているため、コードの微修正だけでエネルギー散逸効果を入れた計算を行うことができる。まずは、エネルギー散逸過程を入れない場合でメッシュ法であるiSALEコードの結果とSPH計算の結果を比較した。その結果、両者が同様な結果を得るためのメッシュ間隔の条件を明かにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
天体衝突破壊におけるキープロセスである脆性破壊や天体内部空隙によるエネルギー散逸をSPH数値計算コードに導入する準備が進んでいる。このエネルギー散逸が考慮されているメッシュ法であるiSALEコードによる計算も比較のため開始した。以上より、統一的モデル構築のための本格的計算に向けおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
天体衝突破壊において重要であるエネルギー散逸機構のSPH計算への導入方針は決まった。最終年度は、SPH数値計算コードへの実装を行った後、本格的なサーベイ計算を実行する。比較のためメッシュ法であるiSaleコードでもサーベイ計算を実行する。 DEM法ではエネルギー散逸はDEM粒子間の摩擦力として入っている。摩擦係数はパラメータであり、摩擦係数の大きさにより衝突結果がどのように変わるかを調べる。このように 2種類のエネルギー散逸様式を考え比較することで、散逸様式による差も議論する。これらの結果を比較検討した上で、衝突破壊のモデルを構築する。最終的には、破片総質量、破片サイズ分布、速度分布の3つの量について数値計算結果に基づいた経験式を、エネルギー散逸の強さや空隙率に対する依存性を含めた形で作成する。 得られたモデルをもとに、惑星形成、クレータ形成、デブリ円盤に対し応用し、各研究に対する影響・波及効果をまとめる。これらの結果を論文にまとめる作業も並行して行う。
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Causes of Carryover |
H27年度に研究員雇用をせず研究を推進し、H28年度に雇用することとした。 そのため、27年度に交付された基金の一部を28年度へ繰り越すこととした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に衝突数値計算の本格的なパラメータサーベイを行い、天体衝突モデル の構築を行う。そのために、学術研究員を雇用し人員を補強する。
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Research Products
(26 results)