2014 Fiscal Year Annual Research Report
高圧力磁気測定の技術開発がもたらす磁性・超伝導材料研究のブレイクスルー
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26289091
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
美藤 正樹 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60315108)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 文子 独立行政法人理化学研究所, 創発物性科学研究センター, 上級研究員 (50398898)
竹下 直 独立行政法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (60292760)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高圧力下磁気測定 / ダイヤモンドアンビルセル / 固体酸素 / 永久磁石 / 銅酸化物超伝導体 / 高保磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、100GPaを視野に入れた高圧力下での磁化・磁化率測定の基盤技術を構築し、“水銀系銅酸化物超伝導体”“NdFeB永久磁石”“固体酸素”に対して先駆的な物理現象を発掘することを目指す研究である。以下、平成26年度の具体的な研究成果を列挙する。
・水銀系銅酸化物超伝導体(Hg1223, Hg1212)の高圧力下磁化率測定においては、試料空間体積・圧力媒体の諸条件を変えて測定を繰り返したものの、キュービックアンビルセルを用いた電気抵抗測定で観測された超伝導転移温度を上回る結果を得ることはできていない。しかし、Ln-1111系の鉄系超伝導体においては、キュービックアンビルセルを用いた電気抵抗測定の結果を矛盾しない結果を得ており、そこでは体積分率の圧力変化に関する新しい物理的知見を得た。 ・Ti合金製ダイヤモンドアンビルセルの開発による高圧力下磁化曲線測定については、等方性NdFeB磁石に対して400Kまでの温度域・±7Tまでの直流磁場域で10GPaまでの高精度な測定に成功した。これまで得られてこなかった保磁場・飽和磁化の温度・圧力変化に関する知見を得られたことは、元素戦略的観点に立った研究という意味からも価値のある成果である。その成果の一部は有機ラジカル磁性体の実験に活用された。 ・固体酸素の磁気測定については、使用するガスケット材の再吟味と酸素封入過程の最適条件探索によって、1年前の段階では3GPaであった最高測定圧力が10GPaまで向上したことは大きな成果である。また、β-液体転移、δ-β転移、ε-β転移(非磁性-磁性転移)も研究対象にすることができるようになったことは本研究を勢いづける成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・広範囲の温度域での高圧力下磁化曲線測定においては着実に測定技術を向上できている。今後、大幅に改良できることは限られているが、測定対象を吟味すれば、30GPaまでの測定も夢ではないレベルにある。 ・固体酸素の高圧力下磁気測定の圧力領域の拡大には目覚ましいものがあり、今後は更なる測定精度の向上を図ることで、固体酸素の新規物性を磁気測定から発掘できる状況にある。 ・銅酸化物超伝導体の高圧力下磁気測定の圧力領域は25GPaまで拡大できている。しかし、圧力容器内の静水圧性が問題してか、キュービックアンビルセルを用いた電気抵抗測定の結果をしのぐ成果は得られていない。測定試料を吟味するところにまで立ち戻って、研究計画を検討する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
・より広範囲の温度域での高圧力下磁化曲線測定においては、ダイヤモンドアンビルの先端径を小さくする一方で、アンビルの高さを高くするなどのダイヤモンドの強度を軽減しない環境を作りながら、圧力領域を着実に上昇させつつ、磁気測定の統計平均処理を駆使することで測定環境の拡充を図る。 ・固体酸素の高圧力下磁気測定については、10GPaまでの圧力領域における相転移現象をくまなく観測することを目指し、そこで得られた成果を本技術開発の成功例として国内外にアピールしたい。そして、10GPa以上での測定に挑戦する礎を構築することを目指す。 ・銅酸化物超伝導体の高圧力下磁気測定においては、常圧で最適キャリアドープでないものにまで測定対象を拡大し、超伝導転移温度の世界記録更新を目指していく。 ・SQUID-VCMの磁気測定システム(石塚式)を立ち上げ、100GPaに迫る圧力領域での高圧力下磁気測定の実績を作り、100K以下の温度域ではあるが究極の高圧力下磁気測定システムを完成させることに着手する。
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Causes of Carryover |
研究代表者1名と研究分担者2名のそれぞれが約9万円ずつの次年度使用額を計上するに至った。これについては、打ち合わせのための国内旅費ならびに論文掲載のための英文校閲・論文掲載費を年度末まで確保していたことによるものであるが、年度末に開催された物理学会の機会を利用して打ち合わせを行ったことや、論文準備が計画的に進まなかったことから、次年度使用額を計上することに到った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用経費は、「国内旅費」ならびに「論文掲載費等」として使用する予定である。
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Research Products
(7 results)