2015 Fiscal Year Annual Research Report
血管内皮多様性・活性化原理解明による抗がん/抗血管疾患アプローチ
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26290035
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
南 敬 熊本大学, 生命資源研究支援センター, 教授 (00345141)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血管内皮細胞 / ダウン症 / 転写制御 / がん微小環境 / EndMT / ダウン症因子 / トランスジェニックマウス / NFAT |
Outline of Annual Research Achievements |
ダウン症関連因子 (DSCR)-1 の内皮特異的コンディショナルトランスジェニック (Tg) マウスの表現型解析:熊本大学において新たにクリーンアップを行い、再度 Tg ラインを独立して3ライン、C57BL6 と Balb/c のバックグラウンドに濃縮したもの合計6系統を樹立した。いずれにおいても Tg カセット (VE-cad-tTA と TRE-DSCR-1-IRES-lacZ) を両アレルにホモに有するものは産まれてこなく胎生致死となること、いずれの系統においても DSCR-1 の発現が高いほどマウスの成長遅延が生じ、胎仔が小さくなること、血管の分岐異常を呈し、部分的な出血も認められることを明らかにした。この分岐異常が DSCR-1 の恒常的な発現により NFAT 活性が常に抑制されていることが主たる要因となっていることを、分岐シグナル Notch との関連性から示すことが出来ており、その分子機構を in vitro 培養系でも明らかにした。そのことから、 NFAT のフィードバック阻害作用を示す DSCR-1 はフィードバックとして適切な場所に適度に制御されているときは優れた抗炎症・抗がん作用を示すが、構成的に常時内皮で発現維持させると、内皮の増殖・分岐異常を呈し、ダウン症の一部の病態を再現することが明らかとなった。 臓器血管特異的な発現制御機構解明:肺血管内皮に加え、腎臓・肝臓・精巣での内皮単離と培養を行う系を確立した。これにより、病態モデルマウスでの臓器から血管内皮を採取し、発現プロファイルを作製することが可能になった。 腫瘍環境下での血管表現型解析:がん微小環境下、腫瘍血管内皮が形質転換をおこす EndMT の事象に転写因子 ERG/FLI1 が関与していること、成熟血管内皮にERG/FLI1 をノックダウンするだけで EndMT を引き起こすことを示した。さらに、ERG, FLI1 の抗体を用いた内皮培養細胞での ChIP-seq データを取得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子改変マウスの熊本大学への異動のため、全てクリーンアップを行い、再稼働することができた。研究機関異動のため半年研究活動が停滞したが、モデルマウスの表現型を解析し、次年度の総括に向け準備する体制を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ダウン症関連因子 (DSCR)-1 の内皮特異的コンディショナルトランスジェニック (Tg) マウスの表現型解析:病的な表現型を定量的にも解析し、さらにヘテロTg 内皮細胞が分裂して DSCR-1 発現カセットを持たないものが優位に増殖して血管病態が改善していく細胞競合の実態について明らかにしていく。 臓器血管特異的な発現制御機構解明:臓器血管内皮の発現プロファイルをまとめる。特に肺と肝臓血管内皮細胞において VEGF シグナルの閾値が異なることが転移の臓器指向性に関与しているかどうか精査する。 腫瘍環境下での血管表現型解析:ERG および FLI1 の血管内皮特異的な安定発現マウスを樹立し、がん微小環境下においても内皮細胞でERG/FLI1 が減少せず、EndMT を防護することががんの転移にどの程度阻害効果があるか in vivo で解析し、ERG/FLI1 維持に関わる転移阻害薬のシーズ解析に繋げる。
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Causes of Carryover |
研究室の異動と3月に海外及び国内での講演が続いたため、次年度に基金分を一部保留し、落ち着いて実験出来るようになってから、試薬購入を始めることにした
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発生医学研究所にて次世代シーケンサーを用いて、EndMT 時におけるヒストン変化をグローバルに解析する、その一連の消耗品として計上する。
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Remarks |
東大先端研から熊本大学に異動
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