2014 Fiscal Year Annual Research Report
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26290045
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
青木 正博 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 部長 (60362464)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐久間 圭一朗 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 主任研究員 (90402891)
藤下 晃章 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 研究員 (50511870)
梶野 リエ 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 研究員 (20633184)
小島 康 愛知県がんセンター(研究所), 分子病態学部, 主任研究員 (30464217)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 大腸がん / 転移 / 動物実験 / トランスポゾン / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.レンチウイルスshRNAライブラリーを用いた転移抑制因子の同定 先行研究で確立したshRNAライブラリーを用いた生体内スクリーニング系により、新たに36個の大腸がん転移抑制遺伝子候補を同定した。先行研究で複数個体の転移巣から検出されたHnrpll(heterogeneous nuclear ribonucleoprotein L-like)について検証を行った。低転移性マウス大腸がん細胞株CMT93のHnrpllをshRNAでノックダウンすると、マトリゲル浸潤能と生体内での肺転移能が亢進したことから、Hnrpllは大腸がんの転移抑制遺伝子である可能性が強く示唆された。HNRPLLはpre-mRNAスプライシングを制御するRNA結合タンパクである。CMT93細胞でHnrpllをノックダウンすると、転移を促進することで知られるCd44 variant exon 6 (Cd44v6)の発現増加を認め、Cd44v6に対する中和抗体でマトリゲル浸潤能が抑制された。 2.トランスポゾンを用いた転移制御因子の同定 6-8週齢のVB及びLBマウスにタモキシフェン0.1mgを1回腹腔内投与したところ、VBマウスは投与後2ヶ月前後で衰弱し始め、十二指腸から空腸を埋め尽くす程の腫瘍が形成された。一方、LBマウスでは、投与後5ヶ月で100個程のポリープが回腸を中心に確認できた。以上の結果から、VBマウスでは、より少ないポリープ数を発症し長期間生存可能なタモキシフェン投与量を検討する必要がある。LBマウスでは半年近く生存できるため、LBAPマウスを優先的に繁殖させ、タモキシフェンを投与したところ、4ヶ月前後で衰弱し始めたが、ポリープの数や大きさは、対照となるLBと差が認められなかった。組織学的解析を行ったところ、LBAPマウスの一部のポリープで、腫瘍上皮細胞の浸潤像や血管内侵入像が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「1.レンチウイルスshRNAライブラリーを用いた転移抑制因子の同定」については、shRNAライブラリーを用いた生体内スクリーニング系により、平成26年度に新たに36個の大腸がん転移抑制遺伝子候補が同定された。また、同定された大腸がん転移抑制遺伝子候補1つであるHnrpllが、実際にマウス大腸がん細胞株CMT93の浸潤・転移能を抑制することが示され、さらにCd44がHnrpllによりスプライシング制御を受ける標的mRNAの1つであり、Hnrpllが持つ浸潤・転移抑制能の少なくとも一部にCd44 variant 6が関与する可能性が示唆された。これらの状況から、本項目については当初の計画以上に進展していると評価できると考える。 一方、「2. トランスポゾンを用いた転移制御因子の同定」については、特にVB (villin-creERT2;Ctnb+/loxEx3) マウスにおいてタモキシフェン投与量を至適化する必要があることが判明したこと、マウスの交配が複雑で想定以上に時間を要していることから、当初の計画よりやや遅れている。しかしながら、LB (Lgr5-creERT2;Ctnb+loxEx3) マウスにPiggyBacトランスポゾンを導入したVBAPマウスでは、対照マウスでは見られない腫瘍上皮細胞の浸潤像、血管内侵入像が認められたことから、トランスポゾンにより悪性化進展が引き起こされた可能性が強く示唆され、実験系は計画通りに働くものと考えられる。 以上より、全体として本研究は現在のところおおむね順調に進展していると自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
「1.レンチウイルスshRNAライブラリーを用いた転移抑制因子の同定」については、研究実績の概要で述べた通り、低転移性マウス大腸がん細胞株CMT93のHnrpllをshRNAでノックダウンすると、マトリゲル浸潤能と生体内での肺転移能が亢進したことから、Hnrpllは大腸がんの転移抑制遺伝子である可能性が強く示唆された。今後は、ヒト大腸がんの転移におけるHNRPLLの役割について、転移能・浸潤能と発現レベルとの相関、転移能への寄与などを解析する。さらに、Hnrpllの発現制御機構についてもmRNAレベル、タンパクレベルの両方で検討する。また、Hnrpllはスプライシングを制御することが報告されているが、Cd44 のスプライシング・バリアントの1つで転移への関与が示唆される、Cd44 variant 6の発現レベルを負に制御する可能性が示された。今後は、HnrpllとCd44 variant 6との関連について詳細に検討するとともに、Hnrpllによるスプライシング制御を受ける他のmRNA候補についても同定を試みる。 「2. トランスポゾンを用いた転移制御因子の同定」については、今後、VBAPマウスの数を増やして浸潤・血管内侵入、さらにリンパ節転移・遠隔転移の有無を調べるとともに、そのような腫瘍からCISs (common integration sites、共通挿入部位)の同定を試みる。LBAPマウスについては上記の通りタモキシフェン投与量の至適化を行う。また、計画に従ってさらにSmad4のfloxed変異を導入したLBSAPマウスを作出し、タモキシフェン投与後に転移を生じれば、転移巣よりCISsを同定する。
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Causes of Carryover |
年度末に交配用野生型マウスを購入する資金として確保していたが、交配予定であった遺伝子改変マウスを交配に使用できなくなったため、次年度に改めて購入することにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は6,293円と少額であるため、使用計画に変更はない。
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Research Products
(6 results)