2016 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム科学による南西諸島全域のサンゴ個体群の全容解明
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26290065
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新里 宙也 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (70524726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
酒井 一彦 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (50153838)
中島 祐一 沖縄科学技術大学院大学, 海洋生態物理学ユニット, 研究員 (50581708)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サンゴ / 集団遺伝 / 南西諸島 / ゲノム / SNP |
Outline of Annual Research Achievements |
地球規模での環境変動によりサンゴ礁が壊滅的な打撃を受けており、早急な対策と保護が求められる。本研究はサンゴの全ゲノム情報を駆使し、豊かな生物多様性を誇る南西諸島のサンゴ個体群の全容を明らかにすることを目的とする。本研究は、全ゲノムが解読されており、膨大な量のDNA上の一塩基多型、SNP(Single Nucleotide Polymorphism)情報が利用可能で、ゲノムレベルでの詳細な集団解析が可能なコユビミドリイシ(Acropora digitifera)を主な対象種としている。 当該年度は南西諸島に広く見られるミドリイシ属サンゴ、ウスエダミドリイシ(Acropora tenuis)を対象に、南西諸島全域の集団遺伝学的解析を行った。我々が開発したミドリイシ属サンゴに広く使用可能なマイクロサテライトマーカーを用いて、南西諸島全域から15地点、298のサンゴ群体を調査した。その結果、自然界では主に有性生殖によってこのサンゴは繁殖していることが明らかになった。そして地理的な境界は存在しないにもかかわらず、南西諸島には少なくとも二つの遺伝的由来の異なる集団が存在することが分かった。その境界は曖昧で、グラデーションのような構造を取っており、従来考えられているよりも複雑な集団構造を取っている可能性が明らかになった。さらに沖縄県で行われているサンゴ養殖の、養殖場での大規模一斉産卵についても報告することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲノムが解読されているコユビミドリイシに加え、他のミドリイシ属サンゴ種についても集団構造解析を行い、南西諸島全域のサンゴの集団構造についてより知見が深まった。この結果は学術論文として公開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
南西諸島には300種以上の造礁サンゴが生息している。南西諸島のサンゴ礁の全容をより理解するために、様々なサンゴ種の集団構造や遺伝的多様性などの解析を進め、南西諸島のサンゴの個体群の全容を把握したいと考えている。
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Causes of Carryover |
当該年度に研究代表者の所属機関変更があり、研究活動が一時中断せざるを得なかった。そして2016年度に沖縄周辺でサンゴの大規模白化現象が起こったので、それがサンゴ集団に与えた影響についても調査したいと考えたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年の白化現象の被害が特に顕著だった石西礁湖や沖縄本島で、白化現象後のサンゴのサンプルを採取する。2016年以前のサンプルは当該研究課題で確保しているので、白化前後の比較が可能になり、サンゴ礁生態系の変遷や保護という観点からも重要なサンプルになると考えられる。
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Research Products
(5 results)