2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
26291002
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
稲田 利文 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40242812)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 品質管理 / 翻訳伸長阻害 / シャペロン / mRNA分解 / リボソーム / ユビキチン化 / プロテアソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
正確な遺伝子発現は生命現象の根幹であり、その破綻や異常は様々な疾患の原因となる。本研究課題では、最も初期のタンパク質品質管理機構である異常mRNA由来の遺伝子産物の分解機構を解析した。平成26年度にはナンセンス変異を持った異常mRNA由来の短鎖型タンパク質分解機構の解析により、以下の結果が得られた。 ①Upf複合体による短鎖型異常タンパク質の分解促進におけるユビキチン化の役割:Upf複合体による短鎖型タンパク質の分解促進には、ユビキチン化が必須であることが強く示唆された。 ②Upf複合体による短鎖型異常タンパク質の認識機構の解明:出芽酵母におけるUnfoldタンパク質のモデルタンパク質であるヒトVHLタンパク質を用い、Upf複合体が短鎖型異常タンパク質のUnfoldな状態を維持し、プロテアソームによる分解を促進する可能性を検証した。VHL遺伝子の下流に異常な長い3’UTR(非翻訳領域)を挿入した場合、VHLタンパク質のプロテアソームによる分解がUpf1によって促進された。さらにElonginB/C複合体を同時に発現させ正しい折りたたみが起こった場合にUpf1による分解促進が抑制された。 ③短鎖型異常タンパク質の分解促進を担う因子の同定:短鎖型異常タンパク質と共精製される因子を同定し、分解促進における機能を検証した。異常に長い3’UTRに依存して、Upf1 とHsp70が短鎖型異常タンパク質と特異的に共精製された。さらに、短鎖型異常タンパク質と共精製される因子としてが質量分析により同定された。Hsp70と複合体を形成し、ADP/ATPの交換反応と共役して基質のフォールディング反応を促進することが示されているSse1が短Upf1による短鎖型異常タンパク質の分解促進に必要であった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ノンストップmRNA由来の異常タンパク質分解機構の解明:リボソームとLtn1複合体のクライオ電顕による構造解析の結果が複数の研究室から報告され、基質認識機構の詳細が明らかとなっため、研究計画の変更することとなった。しかしながら、(2)ナンセンス変異を持った異常mRNA由来の短鎖型タンパク質分解機構の解析、については上記の3つの点を解明できた。特に、Upf1による短鎖型異常タンパク質の分解促進に、Hsp70のコシャペロンであるSse1が必須であることが明らかになり、分子機構の理解が進んだ。従って、本研究課題は、全体として概ね順調に進展していると自己評価する。
|
Strategy for Future Research Activity |
最も初期のタンパク質品質管理機構である異常mRNA由来の遺伝子産物の分解機構の解明を目指し、以下の2項目について研究を実施する。 (1)ノンストップmRNA由来の異常タンパク質分解機構の解明: ①ユビキチンライゲースLtn1による分解機構の解明:E3ユビキチンライゲースLtn1は、60Sサブユニットに特異的に結合して異常タンパク質をユビキチン化する。リボソームとLtn1複合体のクライオ電顕による構造解析の結果が複数の研究室から報告され、基質認識機構の詳細が明らかとなった。研究代表者は、異常タンパク質分解機構に関与するE3ユビキチンライゲースとして Hel2を同定したため、ノンストップmRNA由来の異常タンパク質分解におけるHel2の機能を解析する。 ②異常翻訳を認識し解消する分子機構の解析:研究代表者は、新規翻訳複合体Dom34:Hbs1複合体がノンストップmRNAの3’末端で停滞したリボソームのAサイトに結合し、サブユニットの解離を担う因子であることを証明した。Dom34:Hbs1は、リボソームを解離させることでノンストップmRNAの迅速な分解へ導くと同時に、終止コドンに依存しないペプチド鎖の解離反応にも必須であるが、ペプチド鎖解離活性自体は保持しない。ノンストップmRNA由来の異常タンパク質分解機構の理解に必須な、終止コドン非依存のペプチド鎖解離因子の同定をめざす。 (2)ナンセンス変異を持った異常mRNA由来の短鎖型タンパク質分解機構の解析 研究代表者は、Upf1による短鎖型異常タンパク質の分解促進には、Hsp70と複合体を形成し、ADP/ATPの交換反応と共役して基質のフォールディング反応を促進するSse1が必須であることを見出した。Sse1の各種変異体を用いて、Upf1によってシャペロン群の活性が制御され、短鎖型異常タンパク質がUnfold状態に維持されるモデルを検証する。
|
Research Products
(9 results)