2014 Fiscal Year Annual Research Report
アンプリコンシークエンス解析を用いた樹木集団進化に関する集団遺伝学的研究
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26291082
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
舘田 英典 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70216985)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津村 義彦 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (20353774)
手島 康介 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20447593)
楠見 淳子 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (20510522)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 集団遺伝学 / 集団構造 / 自然淘汰 / 樹木集団 / アンプリコンシークエンシング |
Outline of Annual Research Achievements |
変種もしくは近縁種間での形態や生育地の分化が知られている三樹種、イスノキ・スギ・ヌマスギで、多個体を用いたアンプリコンシークエンシング(PCR法により特定の遺伝子を増幅し次世代シークエンサーを使って配列を決定する)により精度の高い塩基配列データを得る。得られたデータの集団遺伝学的解析から、(1)それぞれの種での過去の集団構造(分岐順序・時間、集団サイズ、移住率等)を推定し、(2)変種・近縁種間分化に関与した遺伝子を探索し、更に(3)過去に起こった自然淘汰に関する推定(淘汰のターゲット、淘汰強度、起こった時間)を行う。非モデル生物でよく使われているランダムな配列を濃縮し解析するRAD法等による解析では困難なモデル選択やパラメーター推定を行うことにより、これらの森林植物の進化の歴史と機構を明らかにする。併せてアンプリコンシークエンシングによる進化解析法を確立する。 今年度は、既存のEST配列データを利用して、イスノキ80、ヌマスギで80、スギ150程度の遺伝子について500塩基程度の長さの断片を増幅できるプライマーを設計し、各樹種一個体での参照配列を決定した。スギではこれらのプライマーを使って、100個体から得たゲノムDNAで遺伝子を増幅した。この際各個体から得たDNAには識別のためのインデックス配列を付加した。ヌマスギでは得られている48遺伝子座、96個体での配列アラインメントデータを使い、固定指数に基づく簡易法によって適応淘汰候補遺伝子を複数同定した。またヌマスギの過去の集団構造を複合尤度を使う手法により推定し、変種間の分岐年代が400万年程度であると推定した。更に理論的研究として、集団よりサンプルした遺伝子配列から、過去の集団構造についてモデル選択を行う方法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヌマスギについては48遺伝子座・100個体でのデータを得て、過去の集団構造の推定し、変種間分化に関与した適応遺伝子の候補を数個見つけることが出来た。アンプリコンシークエンシングによる森林集団の進化過程の推定が、現在の計画で可能であることが示されたと考える。しかし遺伝子を増幅するプライマーの設計と、各種一個体でのサンガー法による参照配列決定に時間がかかり、まだ3樹種での次世代シークエンサーによる多数の遺伝子座での配列決定には至っていない。現在ヌマスギで更に40遺伝子程度、イスノキで80遺伝子程度での使用できるプライマー及び参照配列が決定されている。スギについては既に150遺伝子座の増幅は終わり、次世代シークエンサーを使った解析の手前まで終わっている。また過去に起こった自然淘汰に関する推定を行うために、スギでこれまでに見つかっている淘汰候補遺伝子Ferredoxinおよび地域分化に関わると考えられるKCS遺伝子の周辺100kb程度についてBACクローン配列情報を使って48個体で断片を増幅し、配列決定を行った。現在配列データの解析を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
スギについては次世代シークエンサーでの塩基配列決定を27年度始めに行う予定である。このデータから既に開発した次世代シークエンスデータの解析パイプラインを使って配列アラインメントを得て、集団遺伝学に基づく統計的手法による過去の集団構造(分岐順序・時間、集団サイズ、移住率等)の推定及び適応遺伝子の探索を行う予定である。サンプルした個体の配列決定が少し遅れているが、ヌマスギとイスノキについても150程度の遺伝子座を増幅するためのプライマー設計及び1個体での参照配列決定を行い、今年度の前半中に増幅して次世代シークエンサーによる塩基配列決定を行う予定である。また前年度得られた淘汰候補遺伝子であるFerredoxinおよびKCS遺伝子の周辺配列の多型情報から、27年度中に近似ベイズ法等により過去に起こった自然淘汰に関する推定(淘汰のターゲット、淘汰強度、起こった時間)を行う予定である。 少し遅れているが残りの2年間で、当初の目的である、アンプリコンシークエンシングを使って得た精度の高い配列データから、集団構造や自然淘汰に関するモデル選択やパラメーター推定を行って、これらの森林植物の進化の歴史と機構を明らかにすることができる、と考えている。併せてアンプリコンシークエンシングによる進化解析法を確立することも出来ると考えている。
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Causes of Carryover |
計画申請時に購入予定であったフリューダイムIFC コントローラAX及びフリューダイムFC1 サーマルサイクラーが、交付金減額のために購入できなくなり、首都大学東京が所有する同機種を使うことになり、購入費用が不要になった。また次世代シークエンサーによる解析が遅れており解析用試薬をまだ購入しておらず、そのために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
減額があったためと、プライマー設計に予想以上に多くのプライマーの合成が必要になったので、プライマー合成、フリューダイム解析用試薬、次世代シークエンス用試薬の費用も不足している。そこで不要となった機器購入費をこれらの消耗品購入費として使用する。また計画の進行を進めるために、27もしくは28年度に研究補助員雇用を計画している。
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Research Products
(5 results)